投資はじめて物語

それは「投資」か「投機」か~「投資」の社会貢献度

2016.1.12

経済

0コメント

「貯金を株式投資して運用している」と言ったら親に「やめた方がいい」と猛反対された。思わぬ不意打ちに思わず声を荒げてしまったが、後で落ち着いて考えるとそんなものかなとも思う。やらない人はわからないのだ。投資に疎い日本人は特にマイナスにとらえる傾向にあるようだが、その性質を知れば、投資の社会貢献度の高さを理解してくれるはずだ。

似て非なる「投資」と「投機」

投資をしない人がよく言うのは、「借金ができたら嫌」とか「預貯金の方が安全」というもの。例によってそういう人は、投資や預貯金がどんなものなのかよくわかっていない。まず、預貯金は目減りする可能性がある。超低金利で、物価も上昇傾向にある今はよりその可能性が高い。そして、資産運用には「投資」と「投機」があり、行為が似ていて混同しがちだが、性質に大きな違いがある。

「投資」は、資本を投じると書く。例えば株式投資。出資された企業は利益を生み出すために事業を行い、利益は配当という形で出資者に還元され、企業が成長することによって株価も上昇する。その本質は、株主として企業を支援する経済行為だ。

一方、機会に資産を投じると書く「投機」は、投資商品の短期的な売買によって利益を得ることを目的とした行為で、資産を投じた企業の業績がどうなろうが関係ない。利益を得る人がいたら、どこかで損をしている人がいるゼロサムゲームだ。

昨今増えている株式のデイトレードやスイングトレード(数日間で売買)、安くなるか高くなるかだけを予想するFX(外国為替取引)、実需とは関係のない先物取引は典型的な投機といえるだろう。また、さらなる利益を得ようと空売りやレバレッジを使うと利益も大きい反面、リスクも大きくなる。

お金に関するリスクとリターン

おそらく、投資しない人の投資に対するイメージは「投機」の方が近いのではないだろうか。どちらも株式売買を含むため、混同するのも無理はない。しかし、”付加価値”を生むかどうかという点で大きく異なる。

「投資」が生み出す付加価値は、出資によって企業の成長を促し、世に新たな価値を創出することにほかならない。株主が企業に目を光らすことで、健全な企業活動を促すことにもなる。利益だけを目的とした「投機」とは決定的に違う、明確な社会的メリットだ。

市場を動かす「投機」の役割

こうしてみると、「投資」は良いもので、「投機」は良くないものだと考えがちだが、「投機」には株式市場に”流動性”を作り出すという大きな役割がある。

株式は需要と供給で価格が決まるため、価格変動するためにはある程度のボリュームがなくてはならない。「投資」が良いものだからと中長期的に保有する株主ばかりになると、売買が成立しない状況が増えてくる。すると市場はどんどん停滞し、魅力のないものに。当然、参加者も減っていくだろう。動きのない市場は盛り上がらないのだ。そこに、利ザヤ目的のデイトレーダーなどが入ってくると、市場は新しい血液を流し込まれたように値動きし、市場は活況を取り戻すわけだ。

また、資金が少額だと、中長期的に投資してもインカムゲイン(配当など)は少ないが、「投機」によるキャピタルゲインなら短期で利益を得ることも可能。資金も目的も異なるさまざまな投資家が市場に集まるためには、「投機」は必要な投資方法だといえる。

経済を動かす「投資」の力

すでに投資を始めている人はもちろん、投資のイメージが良くなかったために、やるのをためらっていた人にこそ、「投資」と「投機」の違いを知ってもらいたい。自分の行いが「投資」なのか、「投機」なのかを理解していれば、リスクコントロールもできるし、決して怖いものではない。むしろ、経済を動かすという意味では、とても社会貢献度の高い行いだといえる。

日本の個人金融資産約1700兆円のうち、株式が占めるのはたったの10%程度。ネットで簡単に取引できるようになり、NISA(少額投資非課税制度)などの制度も整ってきたことで個人投資家は増えているとはいえ、30%を超えるアメリカなどと比べると、まだまだ株式市場への参加率は低い。これが1%増えただけでも17兆円のお金が市場に出回る。それだけ企業も、経済も活性化するということだ。

同じお金でも、投資に回ったお金は経済を動かし利益を生むが、超低金利のこの時代に貯金しているだけでは、何も動かさないし、もちろん資産も増えない。また、自分一人の稼ぎで資産を増やそうと思ったらとても大変だし、限界も見えてくるが、稼いだお金がさらに働いてくれるなら、また違ったステージが見えてくるはずだ。

冒頭に登場した親にこの話をしたところ、「じゃあちゃんと投資について教えてくれ」と、投資を始めることになった。まずは、この連載を最初から読んでもらおうかな。