設立から20年の節目を迎えるサイバーエージェント。インターネット広告やスマホゲームで急成長し、時価総額はいまや5000億円を超える。現在は同社が自ら運営するインターネットテレビ「AbemaTV」事業にリソースを集中。2017年の投資額は209億円にもなるが、既存事業の営業利益の4割にも達する先行投資が株主に受け入れられているのはなぜだろうか? AbemaTVの成長戦略とは――。尊徳編集長が藤田晋社長の見ている“この先”を解き明かす。
20年かけて築いた株主との蜜月関係
尊徳 サイバーエージェントの設立20周年、おめでとうございます。
藤田 ありがとうございます。でも、僕は10周年や20周年をあまり意識しないタイプですね。10周年のときは、そうはいっても社内が盛り上がっていたので、僕もそんな空気を感じていましたが、今は何しろ、AmebaTVに先行投資をしている最中ですから、節目の感じはありません。
尊徳 例えば製造業なら、投資をしたら工場を建てて量産が始まって、作った製品が売れたり売れなかったりして、はた目にも事業の経過やその成否が見えやすいですが、それに比べるとサイバーが手がけるようなインターネット産業は見えづらいところがありますよね。
そんななかで先行投資をして、当然ながら損益はへこむ。これが株主に受け入れられているのは、どんな理由でしょうか?
藤田 トラックレコード(過去の実績、履歴)でしょうね。上場して18年、先行投資をして大きく伸ばすことをくり返してきましたし、投資して結果を出した後には毎回、本を書いてきました。
本の中でもずっと言い続けてきたのが、“小さく利益を出しても仕方がないから、大きく利益を出すために、まず規模を大きくするんだ”ということ。
上場して4年で黒字化したときは『渋谷ではたらく社長の告白』(アメーバブックス/2005年)という本を出しましたし、「Ameba」が一段落したときも『起業家』(幻冬舎/2013年)という本にまとめました。目の前の株価は容赦がないですが、本に著すと、さかのぼって「ああ、こういうことだったのか」と納得してもらえることもありますね。
僕としては決して「よくもボロクソに言ってくれたな」などと恨みがましい気持ちで書くわけではないんですが……。書いたらスッキリするから、正直そんな気持ちも少しあるかもしれません(笑)。
同じことを別の経営者がやっても、それは通用しないんじゃないですか。
尊徳 説明会などで、方針に異を唱える株主もかつては多かったんでしょうか?
藤田 だんだん、いなくなるんですよね。
尊徳 わかる気がします。ソフトバンクの株主総会を例に取れば、孫(正義)さんが、もともとの本業ではなかった半導体に何兆円も投じるだとか、かなり奇抜な新規施策を打ち出しても、いまや喝采が起きる。圧倒的な支持を受ける環境を築き上げたから、そうなる。
藤田くんと株主の関係もそれに近いんだろうなと想像します。20年間、先行投資をしては大きく利益を上げるという成功事例を積み重ねてきたから、信頼関係が構築できたんでしょうね。
藤田 それに尽きると思います。同じことを別の経営者がやっても、それは(株主に支持されるという意味では)通用しないんじゃないですか。
僕は、株主に同じことを言い続けるのが大切だと思っていて、株主総会でも「必ず中長期で考えて投資をしてほしい」と話します。短期で投資を回収したい人は、投資で利益を4割も圧迫したら怒り出すでしょう。
でも、長い目で見ると、次の事業に投資しないで安穏と既存事業の利益を出すだけでは、会社の未来にとっても株主にとってもマイナスなんです。だから、トータルで見てくれと。そういうことはある日、急に言ってもダメで、ずっと言い続けることが大事です。
AbemaTVは10年で“ナンバーワンのメディア”に
尊徳 藤田くんが持つ中長期のビジョンはどういったものですか?
藤田 簡単に言えば、大きく投資して大きく利益を上げることです。今、通期の営業利益が、既存事業では約500億円ですが、そこからAbemaTVへの投資分の約200億円を引いて、2017年度実績が約300億円になっています。
田舎勇者
既存事業が好調なうちに次の事業をつくる。大事ですね。
しかし、200億円の投資はスゴイ。。。
2018.2.14 09:42