元通産相で一橋大学客員教授の安延申さんをゲストに招いた対談。昔は公務員最強だった日本も、最近は起業家が生まれやすい土壌ができつつあるようです。
企業に尽くしても終身雇用が保証されるわけでもないし
鈴木 例えばAlphabetとか、アメリカの大企業って若いベンチャーを買いまくるじゃないですか。日本からそうしたものが出てこないのは、M&Aする若い企業がいないから?
安延 いや、それは変わって来ていると思います。僕の学生時代は、基本的に終身雇用が保証されていたんです。多分、今も日本の大企業のほとんどはそうですね。
当時、僕の親世代は、やっぱり恩給(=年金)が付くから公務員が一番良いと言っていたわけですよ。だからといって、公務員になったわけではないんですけど。
ところがそうした神話は徐々に崩れている。それを本当に実感しているのは、今30歳ぐらいまでの人だと思うんです。要するに、一生懸命、企業に尽くしても終身雇用が保証されるわけでもなく、あるいは会社が無くなる可能性もあるぞと。
僕が大学を卒業するとき、金融業界への就職が大ブームだった。会社訪問解禁日には、東京海上ビルのあるお堀端を人が3周、輪を作って並んだという時代です。大学の僕と同じ経済学部に15人ほどゼミ仲間がいましたが、うち11人が銀行に就職ですからね。今でいうメガバンク。
尊徳 当時の、都市銀行ね。
安延 ところが、入行当時のままで残っているヤツって11人中一人しかいない。これが何と、常陽銀行なワケですよ。
尊徳 あ~地銀だね。茨城の水戸に本店のある。
安延 メガバンクにいたヤツらは、合併したりされたりで入行した当時とは勤務先の行名が変わっているわけです。残念ながら合併される側に回って淘汰され、消息不明になったヤツもいる。
それとは別に、東大の著名な先生に聞いた話。東大の大学や大学院で、いま非常に注目される分野を研究している優秀な学生。いわゆる研究誌に論文を書いたりしている学生は、すでに卒業前のタイミングで世界企業からオファーが来るんですって。
長期雇用が保証されるわけではないけれど、たとえば初任給2000万円で5年間契約。ミッションが果たせなければ、それで終わりですが、日本の超一流大企業に就職したところで初任給はせいぜい400~500万円程度ですからね。
尊徳 最近はやっと、メルカリがどうとか、いろいろやりだしたよね。
安延 日本の一流企業でさえ、ずっと続く保証はないわけです。それが、例えば世界で活躍しているAlphabetとかAmazonから誘われました。同時にNTTや三菱東京UFJ銀行からも初任給500万円で声が掛かったとしたら、腕に自信がある学生ほど、2000万円の方に行くよ。
これから先は、そういう起業家が出てくるような素地が実はでき始めているんだと思うんです。だから、今までの十年とこれからの十年は、ひょっとすると違うかもしれません。
尊徳 そのへんはね。メルカリだけじゃなくていろいろ幅を出して、年収2000万円まではいかないけれど、1000万プレイヤーを最初から作り出そうという流れがある。
安延 でもね、そこで1000万の格付けをされる人は、絶対にずっとメルカリで働こうとは思っていないはずだから。
尊徳 うん、そうだね。
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