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【緊急対談】「友人、戻る」大王製紙元会長・井川意高×政経電論編集長・佐藤尊徳~栃木で過ごした3年2カ月とIR推進法

2017.01.10

社会

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写真/芹澤祐介 文/編集部

ギャンブルの資金にする目的で子会社から巨額借り入れし、特別背任の罪で刑に服していた大王製紙元会長の井川意高氏が戻ってきた。友人として、服役中の井川氏を支えてきた尊徳編集長と、3年2カ月にわたる刑期を振り返るとともに、奇しくも同タイミングで法案成立したIR推進法について語る対談。

井川意高 いかわ もとたか

1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒。1987年、大王製紙に入社。三島工場次長、常務取締役、専務取締役、副社長を歴任し、2007年より大王製紙取締役社長に。同会長時代に、カジノでのギャンブルに使用する目的で子会社から総額106億8000万円もの資金を借り入れ、2011年11月、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。2013年6月、懲役4年の実刑判決が確定。

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株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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46回の訪問と636通の手紙

尊徳 栃木には服役した当初から毎月行っていたし、みんなが言うほど懐かしいとかまったくないんだよね。ただ、ほっとしてはいる。「ああ、出てきてよかった」って。

井川 全部で45回来てくれて、迎えを入れたら46回。

尊徳 意高さんに「会いたい」っていう人も連れていったりしましたね。手紙のやりとりも何回やったっけかな……。僕からは636通か。

井川 僕からは87通ですね。

井川・尊徳

尊徳 こっちは発信制限ないからね。最初は検閲にも引っかかったようだけど、だんだん慣れてくるとコツもつかんできて、意高さんが何を言いたいのかわかるようになってきてた。共通の知り合いも多いし、僕じゃないとできないという自負はあった。

井川 今はもう大丈夫ですけど、せっかくそこまで身につけたものを無に戻すのはもったいないじゃない。ぜひこれからも活用してくださいよ(笑)。

尊徳 何言ってんですか。一通の手紙(受刑者が出せるのは一回につき7枚まで)に対する返事を書くのに丸一日かかるんですよ(笑)。手紙に知らない人の話が出てくると「聞いてねえし」とか思った。最初の半年間は勝手がわからずこっちも結構ストレスでしたけど、そのうち慣れちゃいましたよ。

仮釈放になって相談したいことがその場で出来たり、プレッシャーから解放されたのは大きいです。

井川 1回のやり取りに2週間くらいかかるし、尊徳さんも大変だろうから「しばらく書かないでおこう」と思っても、翌週、用事をびっしりと書いて出すこともしばしば。私は自分でそれを”不幸の手紙”って呼んでた(笑)。

井川意高

自分で”不幸の手紙”って呼んでた(笑)(井川)

写真/芹澤裕介

尊徳 手紙が来ないと、「(意高さんがこちらに用事を伝えなくて済んでいるんで)よかった」って思うけど、それでも3週間も空くと不安になってた。もうこうなるとルーティンですね。

井川 中には「ちょっと思ってた流れと違うな」ってものがあって、でも手紙のやりとりしかできないから、それを修正するのに1カ月くらいかかるのはストレスだった。ビジネスマンやってた人間にはかなりこたえるんですよね、早く、うまく伝えられないことが。逆に刑務所の中のことでストレスはありませんでしたね。

尊徳 面会に行くとメシの文句をよく言ってたよね。後ろに刑務官いるのにいいのかなって。

井川 刑務官は、運営する側とは別だからね(喜連川社会復帰促進センターは民間受託)。「その通りだ」くらい思ってたかもしれない。

刑務官の中では日本一有名な非受刑者

尊徳 収監されるときもうるうるはきたんだけど、最後の面会に行ったときに、刑務官の人が僕のことをわかってて、「長い間いろいろご苦労さんね」って言われて、うるっときちゃって。

井川 だって刑務官の間で有名でしたからね。面会行くときも「今日も尊徳さんか」とか言われて。工場の担当も職員もその上もみんな、「佐藤さん」「尊徳さん」で通ってた。刑務官の中で、日本一有名な非受刑者だって言われてましたよ。

尊徳 周りの人には何で意高さんのためにそこまでできるのってよく聞かれたけど、まず好きでやってるっていうのはある。それと、やってると周囲に褒められるっていうのが結構気持ち良かった(笑)。でも実際困るじゃん、僕がいないと。

佐藤尊徳

貴重な経験ではあったよね。もう行こうとは思わないけど(尊徳)

写真/芹澤裕介

井川 いや、もう、話にならなかったと思いますよ。尊徳さんがいたおかげで私はストレスなく過ごせてた。尊徳さんがいなかったらこの3年で私のすべてが崩壊してました。

日本は保釈もほぼないし、普通は刑務所から出たら、身の回りのものが全部無くなってるんですって。もともと住んでたところも、着る服も。ケータイもないし、人の付き合いも当然切れてると思う。

尊徳 そうなると怖いね、出るのが。僕も意高さんの手伝いをして初めていろんなことを知るんですよね。再犯性の高いものは別だけど、社会に受け入れられる体制はできてないなって思った。

こういうメディアをやっているからってわけじゃないけど、貴重な経験ではあったよね。もう行こうとは思わないけど。

井川 私は3年間で636通も手紙出してもらいましたからね。無期でも僕は面倒みるからね、尊徳さん。

尊徳 無期になったら世間と遮断するよ(笑)。こんなこと言い合う仲って何だろうね。もともとは前職で知り合って、同年代ってことで価値観がなんとなく近くて、一緒にいて楽しかっただけ。

井川 周りが年上ばかりでしたからね。尊徳さんのお師匠の佐藤正忠さんとうちのおやじが同世代で仲良かったっていうのもあるんだけど、確かに価値観が近かったっていうのはある。80%は一緒で、20%は違いがあって。尊徳さんの方がずっとまっとうで、私はどこか世の中をなめてるというか(笑)。

尊徳 意高さんは(モノの考え方に)遊びがあるんだよね。逆に僕は突き詰めて考えるから、車のハンドルでいったら重ステみたいな感じ。

井川 そこが真逆だから合うんだよね。全部一緒だったら気持ち悪いし、たぶん合わない。

井川意高・佐藤尊徳

入る前から堀江君のマネージャーにいろいろ聞いてた(尊徳)

写真/芹澤祐介

駆けつけるスタンバイはできている

尊徳 この3年間で変わったことってある? 僕は会社を起こした以外は割と淡々としてるんだけど。

井川 私は変わりましたよ。ありえないくらいの感謝の念が積もってます。会社起こして、この「政経電論」っていうメディアも立ち上げて、そんな一番大変な時期に、私の毎月の”不幸の手紙”を受け取ってくれて、全部やってくれてね。私だったらやらないね(笑)。

でも一方で、尊徳さんならやってくれるだろうと思ってた。そういう性格だってことも知ってるけど、ほかの友人とはやっぱり違う。ありきたりな言葉は使いたくないけど、尊徳さんがいてくれてよかった。持つべきものは友だわって。

尊徳 みんな自然な流れで僕がやるんだろうって思ってたみたい。「意高さんのことは尊徳しかいないでしょ」って。頼まれなくてもやるつもりだったし、それでやる前から、堀江(貴文)君のマネージャーにいろいろ聞いてた(笑)。

井川 すごい感謝の念が積み上がってはいるんだけど、この友情で始まってる関係性は崩したくないんだよね。すぐ恩返しします!っていう感じではないけど、尊徳さんが手伝ってほしいって言ったらすぐ駆けつけるスタンバイはできてます。

井川意高

カジノくらいで日本人は大騒ぎしすぎ(井川)

写真/芹澤裕介

日本一有名なギャンブラーはIR推進法をどう思う?

尊徳 このタイミングだし、せっかくだから聞くけど、IR推進法案が可決されて、日本にカジノができることについてはどう思ってますか。

井川 好きにすればっていうのが私の基本的なスタンス。500万人いるといわれているギャンブル依存症の人を心配する人がいるけど、その人の人生はあなたには関係ないんだから、もっと自分自身の人生に向き合いなよって。他人は他人。そういう日本人のおせっかいさが私は嫌なんですよね。

山登りだって、海遊びだって、災害に遭ったら社会に迷惑をかけることがあるかもしれない。車を運転していたら交通事故を起こすかもしれない。だからって禁止しますか? カジノくらいで日本人は大騒ぎしすぎなんです。

尊徳 賭博禁止法もあるし、ギャンブル依存症を懸念して「この法案はダメ」と批判するのは詭弁だよな。

井川 世界中にカジノを認めている国はあるけど、どこの田舎のロードサイドにもパチンコ屋が並んでて、法律的にはギャンブルだって認めてないけど、これだけ野放図にIDチェックもなく行くことができる博打場がある国は世界中で日本だけですよ。

そっちを責めずにIR推進法案を反対するのは、真剣に考えてないし、本当にバカだなって思います。

尊徳 この議論をするなら、法の抜け穴でやってるパチンコとかを整理しないとダメ。僕はカジノ自体はどちらかというと賛成だけど、詭弁で通してしまう、というのが反対。正々堂々と、富くじも賭博も認めればいい。それは禁止したまんま、IR推進法の周辺法を整備して、カジノを認めるというのは、ほんと姑息だと思う。

井川 建前では日本にギャンブルは無いはずなのに、じゃあなんでギャンブル依存症が500万人いるのって、その時点で矛盾してるわけですよ。ホントそう、おっしゃる通り。

でも、元ギャンブラーとして、日本で最も有名なギャンブラーとして言わせてもらうと、宝くじは55%も抜くし、競馬も25%も抜くし、その時点でギャンブルじゃない。本当のギャンブラーはやりません。だって最初から期待値が45や75なんですから。ちなみにカジノの期待値は95を超えます。

尊徳 イメージの悪いギャンブルを反対する感じがいいんだろうな。日本人のメンタリティーってそう。本当はそう思っていなくても、そういうふうにしてれば、安心。ギャンブル依存症のことはホント些末な議論してるなって思うよ。

井川 正直、日本でカジノの経営が黒字になるかどうかは怪しいですが、むしろやった方がいいと思います。だって、今の公営ギャンブルがあまりにひどいから。ギャンブル依存症の人たちにとっても、今までみたいな搾取から、世界標準のリーズナブルなレベルの、かなりまともな場を提供してあげることができるようになりますよ。

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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