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佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ

「自分の運命を他人に握らせてもいいか」国防を考える若き論客・吉木誉絵が示す憲法9条改正の必要

2017.06.15

政治

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写真/芹澤裕介 取材/唐仁原俊博

日本人のルーツとして『古事記』を研究し、メディアではさまざまな論客と持論をぶつけ合い、海上自衛隊の客員研究員として国防を考える若き論客、吉木誉絵さんと、尊徳編集長が熱く語り合う対談【後編】。

日本の国防を考える際に避けては通れない憲法9条論議。日本人が憲法改正にアレルギーを示す大きな要因は、敗戦国であり、島国であるという地政学的な理由が生んだある”意識”があるからだという。

『古事記』研究家・吉木誉絵が考える日本人のルーツと主体性

憲法改正に対する日本と海外の意識の違い

尊徳 国防の話をするときに、憲法9条の話は避けて通れません。僕は改憲論者なんですが、吉木さんは憲法についてはどう考えますか。

吉木 私も憲法は改正すべき時を迎えていると思います。70年も改正されていない、その弊害を考えなければならないと。

尊徳 9条の条文を引用すると、1項が「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。そして2項が「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」となっている。

僕は、1項は保持したまま、2項を変えて、自衛隊を「軍」として容認すべきだと考えています。なぜなら、そっちのほうが現実に即した形になるから。

憲法というルールを作ったら、それを守らなきゃいけないのは当然なんだけど、時代にそぐわなければ変えるべきものだと思いますね。

日本は改憲しにくい制度になっているという人もいるけど、制度でいえば、アメリカのほうがもっと改憲のハードルが高い。それでも合衆国憲法は改憲されている。

吉木誉絵

吉木 おっしゃるように日本で改憲が実現しないのは、制度の問題ではなく、意識の問題です。反戦平和主義が根幹にあるということと、日本が島国だという地政学的な理由もあるでしょう。

ドイツは日本と同じ敗戦国ですが、ドイツでは何度も改憲が実施されていて、日本とは全然違う道を歩んでいる。もし日本が、陸続きで、他国と国境を接するような国だったら、違う歴史になっていたはずです。

尊徳 そうなんだよね。周りが海に囲まれているというのは大きい。

吉木 海は天然の要塞です。いくら現代の航行・航空技術が発展しているといっても、海があって、距離が離れているというのは、攻める側からすると大きな障害になります。

他国から攻められるという危機感を現実的に感じることが難しいこともあり、憲法改正の必要性を感じてこなかったのでしょうね。

絶対に守らなければならないからこそ

尊徳 憲法に限らず、民法だって、長いこと同じままになっているせいで、社会の変化に対応できていない部分がある。時代に合った形に変えていくという意識を持っておかないと、改憲について話すことすらタブー視されてしまう。

吉木 憲法には改正すべき個所はいっぱいありますが、やはり9条に関しては可及的速やかに変えるべきだと思いますね。集団的自衛権の議論がややこしくなったのも、どうにかして9条との整合性をもたせようとした結果です。

今の世論の雰囲気だと、憲法9条は改正できない。だから現実の脅威に対処するために、法の目をくぐるような論理の立て方ではあるけれども、政府として集団的自衛権の一部を行使することは合憲だと主張する――。

それに対して、憲法学者が「違憲だ!」と言うのは、当然と言えば当然です。

尊徳 今の日本は、憲法を変えない代わりに、憲法をどう解釈するのか、そのさじ加減によっていろんなことが変わりうる状態。それって、非常に危なっかしいんだよね。

内閣が提出する法律案が合憲か違憲かを審査するのが内閣法制局。だから内閣法制局の長官は”法の番人”なんて呼ばれることもある。でも、そのときどきの内閣が、自分たちに都合のいい長官を任命し、憲法解釈をコロコロ変えるようなことになれば、これは大変なことになる。

吉木 そう。そこが問題です。

尊徳 憲法は絶対に守られるべき。なぜなら憲法は法律の最たるものであり、権力者を縛るためにあるものですから。そして、だからこそ僕は憲法を変えなきゃいけないと考えます。憲法解釈を変えて現実に対処するのではなく、憲法自体を変えなきゃ、と。

吉木誉絵

憲法9条のおかげで戦争が無い?

尊徳 憲法を守れと主張する人たちの中に、「9条のおかげで70年間戦争がなかったんだ」と主張する人もいます。だけど僕は、9条が無くたって戦争にはなっていないと思います。

吉木 9条が抑止力になっているというのは違うと思いますし、そもそも、本当に戦争が無いのかということに、私は疑問です。戦争の性質が変わったことに気づいてないだけではないか、と。

20世紀前半までの戦争は国家と国家が死力を尽くして、国家総動員で戦う全面戦争が主流でした。けれども、核兵器の誕生によって、戦争のあり方が変わった。核兵器は使ったら最後、人類滅亡すら引き起こす”使ってはいけない兵器”です。ですから現在、核の使用を含めた全面戦争を考えている戦略研究家はいないでしょう。

しかし、全面衝突がないから平和というのはおかしな話です。例えば竹島は韓国による実効支配が続いています。尖閣諸島周辺の海にも毎日のように中国の公船や漁船が押し寄せている。

そしてもう一つ、北朝鮮の工作員による日本人拉致事件がいまだ解決できていない。この2つの問題だけ見ても、私は「日本は平和だ」とは言えないと考えています。

尊徳 竹島を韓国が実効支配(1952年)したのは、自衛隊ができる(1954年)前の話ですね。

吉木 もし、当時から自衛隊があれば、こんなことにはならなかったでしょう。私たちの日々の生活は9条によって守られているのではなくて、自衛隊によって守られているんです。

吉木誉絵・尊徳

自分の運命を他人に握らせてもいいか

尊徳 国家最大の義務は、国民の財産と平和を守ること。現実に領土を侵犯され、拉致もあって、その義務をどうやって行使するんですかという話ですよね。現実にある脅威を認識して、それに対処する力を持たなければいけない。

吉木 私が客員研究員として海上自衛隊幹部学校にお世話になりたいと思ったのは、現実の脅威を認識し、安全保障の理論をしっかりと学びたいと思ってのことでした。自分の目で見て感じたこと、知ったことを基軸に問題提起をしたいと思いました。

尊徳 それは素晴らしいことです。ただ一方で、僕は武力ですべて解決すべきとは思いません。防衛費を上げれば上げるほど、みんなが軍備拡張一辺倒になって、望んでないほうへ進んでしまう危険もありますからね。

衝突を避けるためには各国と対話しながら、バランスを保っていく必要があるけど、それはとても難しいことですよね。僕自身、その解はまだ持っていない。

吉木 そうですね。国防や安全保障は非常にデリケートな問題です。しかし、日米同盟があり、アメリカに守られている現状を認識していない人が多い現状はどうにかしなければいけない。

自分の運命を他人に握らせてもいいか、と質問すれば、ほとんどの人は嫌だと感じるはず。自分の国の運命は自分の国で責任を持つべきだという意識が広がれば、それだけで状況は変わるはずです。

尊徳 まったくそのとおりですね。吉木さんのような若い方が行動されているのを見ると、僕もまだまだ頑張らなきゃいけないと感じます。非常に面白い話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

株式会社損得舎代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。
Twitter:@SonsonSugar
ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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