尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!
Q.健康保険組合が支払いの義務を負っている「支援金」とは何ですか?
A.高齢者(65歳以上)は基本的に収入が少なく、保険料負担(扶養になっていなければ基本的には国民健康保険)は少なくなります。しかし、医療費は若年層よりも掛かるため、勤労者が負担する構図になります。公費(国の負担)で半分を賄い、自らの保険料で約1割(後期高齢者の場合)、その他を健康保険組合が負担する(支援金)という構図です。
これは、人口がピラミッド型を形成していれば若年層が高齢者を支え、後々若年層は次世代に支えてもらうという賦課は成り立つのですが、高齢化社会になりピラミッド型の人口動態が崩れてしまえば、若年層の負担は大きくなります。少子化問題に真剣に取り組むなど、制度設計をもう一度し直さないと国が衰退していきます。
Q.スウェーデンやフランスなど国民負担率が高い国もありますが、日本はなぜ苦しい財政状況にありながジリジリ上げる方法をとっているのでしょうか?
A.スウェーデンなど北欧諸国はもともと、高福祉、高負担で若い頃に税金、保険料の負担率が高く、福祉政策が充実しています。どちらを取るかは国民性の違いもあるので、一概に日本も同じようにすればいいかは、国民的な議論が必要でしょう。
それと、苦しい財政だからジリジリと上げているのですよ(笑)。一気に上げないのか?ということであれば、それは国民の反発が大きいからでしょう。
Q.高齢者の医療を現役世代から集めるのは当然だと思いますが、それが将来的な不安をあおり、経済的に悪影響を及ぼしているということはありませんか?
A.北欧のように収入の半分を税金や保険料で収めるのであれば、現役世代に頼らずとも、自ら収めた公費で積立方式が成り立ちますが、日本のように現役世代が保険料を薄く広く負担する賦課(ふか)方式は人口増が絶対条件です。
繰り返しですが、保険料を上げ続けるというだけでは根本的な解決にはなりません。10年後、20年後の国のあり方を決める議論(教育、少子・高齢化対策など)をしていかないと将来への不安は拭えないでしょう。(佐藤尊徳)
[参考:2014年4月15日経新聞 1面「健康保険料 最高の8.8%」]