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アマゾンですら一筋縄ではいかない 寡占で成り立つ日本の宅配業界

2017.08.14

経済

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トラック物流をベースとする日本の宅配は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社によって支えられてきた。宅配便取扱個数の9割を占めるこの業界の寡占は、なるべくしてなっている。そこに参入を決めた大手ECサイトのアマゾンは、業界にどんな影響を与えるだろうか。業界の構図に再編の可能性はあるのか。

総貨物9割を占めるトラック物流の構図

日本の総貨物量は約50億トン(2015年国土交通省「貨物地域流動統計」 )。鉄道が約3000万トン、海運が約5億トン、自動車が約43億トン。9割が自動車だ。

トラック物流は大きく分けて2種類あり、ひとつは10トン級の大型トラックで運ぶ「長距離路線輸送」。都内の貨物受け入れ拠点として、ヤマト運輸(以下、ヤマト)は「羽田クロノゲート」を持ち、佐川急便(以下、佐川)は環状八号線沿いに「大井中継センター」という大きな拠点を持っている。

そこに着いた荷物は、佐川だと2トン車、ヤマトだと2トン~750キロ車に積み替えられて各届け先に配達されていく。これがいわゆる”ラスト1マイル”と呼ばれる「宅配」だ。

世間のイメージでは、長距離路線輸送は大手が手がけているイメージがあるが、実は大企業は宅配に集まっている。

日本の宅配便の取り扱い個数は約37億個(2015年国土交通省「宅配便取扱個数」 )。ヤマト約17億、佐川約12億個、日本郵便(以下、JP)5億個の3社で9割以上を占める。つまり、寡占状態。

JPの拠点は郵便局の数 とイコールなので、全国24000カ所。ヤマトは6500カ所。佐川は400カ所 。拠点の少ない佐川でさえ所有する車両数は約2万5000台だから、JPやヤマトはもっと多いだろう。要するに初期投資と固定費が膨大にかかる。そのために参入障壁は高く、企業規模も大きくなるというわけだ。

中小業者の中には、赤帽やエコ配などローカルに強い業者が宅配をやっていることもあるが、それらはヤマトや佐川の委託を受けて荷物を運んだり、逆に全国への配送はヤマトや佐川に委託することが多い。

一方、長距離路線輸送にも、もちろん日本通運や西濃運輸、福山通運といった大きな企業もいるが、どちらかというと、「10トン車数台でやっています」というような個人事業者や中小企業が多い。いわゆる”トラック野郎”の世界。宅配とは逆に、小規模でもできるのが長距離だ。

ヤマトも佐川もJPも、長距離はそれらに依頼する。なぜそういう構図になるかというと、宅配と長距離の収益モデルの違いが関係している。

大手宅配で長距離トラックを”取り合い”

宅配エリアは事業者によって異なっていて、BtoBがルーツの佐川は2トン車をメインにより広域をカバー。一方、CtoCがルーツのヤマトは750キロ車がほとんどで、狭い範囲に配送する。当たり前だが一度に詰める量が違うため、佐川はエリア内を一日1回、ヤマトは2回回ることになる。

荷物は毎日配送が必要なので、宅配事業者のドライバーは自分のエリアの中を、最低1~2回は回らなければならない。それは積載率が10%だろうが90%だろうが同じ。しかし、年末、お中元の時期、春の引っ越しの時期を除いて、積載量がそんなに上がらないのが実情だという。

一方、長距離はできるだけ積載率を上げて運ぶ。仮に10トン車を積載率15%程度で東京‐大阪間を走ったら、ガソリン代だけで赤字になってしまう。そのため、リスクを抱えられない宅配大手は自社で長距離トラックを持たずに外部に委託する。

結果として起こるのが長距離トラックの”取り合い”だ。繁忙期である年末の10トン車の予約は早々と9月にするという。需要予測は宅配事業者の死活問題。読み間違えて、もし大量にキャンセルしようものなら二度と運んでもらえなくなってしまう。

そういった状況を踏まえ、業界には「水屋」といわれる”車の手配屋”がいる。愛知の物流企業トランコムは、宅配大手が直接、各長距離事業者と交渉する代わりに仲介に入り、ネットワークにいる事業者とつなぐ役割を担っている。

大手宅配は長距離トラック業者と直取引を結んではいるものの、閑散期と繁忙期のバランスを取って押さえるため、急な荷物が発生し直取引分で足りなくなる場合もある。その際はトランコムのような「水屋」を通してトラックを追加手配するのだ。

アマゾン参入で構図は変わる?

これらはすべて、利益に直結する積載率を安定的に運用するための手段。事業者間の連携が要になっていることは先述の通りだが、今年からここにAmazon(アマゾン)という門外漢が参入することになった。

アマゾンは当日配送のために、「デリバリープロバイダ 」と呼ばれる特定のエリア限定の配送業者と提携。首都圏は、「桃太郎便」を手がける丸和運輸機関が個人運送事業者を組織化、配送網を固める。ほか、TMG(大阪など)、SBS即配サポート(首都圏)、札幌通運(北海道、関東、東北など)、若葉ネットワーク(神奈川)、ファイズ(関西、東京、神奈川など)など。

佐川と同じSGホールディングスのグループ会社であるSGシステム元社長の安延氏は、宅配業界へのアマゾン参入について懸念を口にする。

「佐川の本当の敵はヤマトではないと思っています。領域が微妙に違うので。一番怖いのは、自分で物流網を作ろうとしているアマゾン。例えば、アマゾンが地方の赤帽を買収したらかなり厳しいことになる。彼らならやりかねません」

しかし、最強のバーゲニングパワーを持つように思えるアマゾンでさえ、この宅配業界の寡占を相手にしたら一筋縄ではいかないかもしれない。

国内の消費総額の8%がスマホを使ったネットショッピング(総務省 、2016年度調査)だそうだ。そのほとんどは、宅配業者を使って消費者の手元に届くことになる。

アメリカでは20%弱がスマホからの消費だから、日本はまだ半分にも満たない。これからはもっと増えるだろうし、ますます宅配業界は重要になる。消費者側も今までのようなきめの細かいサービスと価格は望めないかもしれないな。

これは、結構喫緊な課題で、国民全体で考えていかないと大変なことになるかも。

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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