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世界を読むチカラ~佐藤優が海外情勢を解説

支持率低くてもトランプ米大統領はそう簡単には失脚しない

2017.08.17

政治

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ドナルド・トランプ米大統領の支持率が低下している。米CNNによると、米キニピアック大学の最新世論調査で、トランプ氏の支持率は33%に低下し、不支持率は61%の過去最高の数値になったという。メディアとの対立をはじめ、大統領選へのロシアの干渉疑惑、FBI長官の突然の解任など、トランプ氏は大統領就任当初から疑惑の目を向けられてきた。だが、佐藤優氏はトランプ氏の外交における交渉術を評価。その理由とは?

米露首脳会談で見せた好相性

トランプ大統領は、米国内でマスメディアから総攻撃にさらされている。政府内でもFBI(連邦捜査局)や司法省の高級官僚が造反を起こしていることも間違いない。トランプ氏は側近を次々と入れ替えている。こういう報道だけを読んでいると、トランプ大統領の辞任が近いような印象を受ける。

しかし、こういう印象は正しくない。なぜならトランプ氏が優れた交渉能力を持っているからだ。そのことが7月7日夜、ドイツ・ハンブルクで行われたトランプ氏とロシアのプーチン大統領の初会談を行ったことからもうかがえる。

会談時間は当初予定の30分を大幅に超えて2時間15分に及んだ。シリアやウクライナを巡る協力を進めることで合意。トランプ氏は、ロシアによる昨年の米大統領選への介入問題を問いただした。初顔合わせは、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の機会を利用して実現した。(7月8日 朝日新聞デジタル)

首脳会談には、大きく分けて2つの種類がある。第1は、相互訪問による会談だ。公式訪問、実務訪問という名称にかかわりなく、実質的な交渉はこの機会を利用して行われる。

第2は、国際会議などマルチの場を用いて行われる首脳会談だ。この場合、「やあやあご機嫌いかが」というような、顔つなぎが主な目的で、実質的な交渉が行われないことが多い。予定時間も30分から1時間であることがほとんどだ。

今回の米露首脳会談の場合も当初の予定が30分だったので、米露の事務当局は実質的な交渉が行われることを想定していなかった。会談が予定の時間を大幅に超過して2時間15分になったのは、トランプ大統領とプーチン大統領の相性が良いからだ。

プーチン大統領
写真/ロシア大統領府

プーチン露大統領のトランプ大統領評

この点に関して興味深い情報がある。9日、ロシアのエカテリンブルグで行われた会談で、プーチン大統領は森喜朗元首相に対して、トランプ大統領の人物評をした。

7日に初会談したトランプ米大統領について「大変面白い、大きな可能性を持っている大統領だ」と高く評価した。森氏が会談後に明らかにした。/プーチン氏は、エカテリンブルクで日本をパートナー国とする産業総合博覧会「イノプロム」が開かれるのを機に、親交が深い森氏を招待。約1時間40分にわたり夕食を共にした。/プーチン氏はトランプ氏について8日の記者会見では「テレビで見るのと実際はまったく異なる。具体的で、会談相手と適切に向き合い、質問を素早く分析して回答する」と述べていた。(7月10日 朝日新聞デジタル)

「大変面白い、大きな可能性を持っている大統領だ」、「テレビで見るのと実際はまったく異なる。具体的で、会談相手と適切に向き合い、質問を素早く分析して回答する」という評価は、社交辞令ではなく、プーチン大統領の率直な評価として額面通りに受け止めるべきであろう。

首脳会談では、シリア問題に関して前進があった。

会談後のティラーソン米国務長官の説明によると、トランプ氏は会談の冒頭、昨年の大統領選に関し、プーチン氏の指示でサイバー攻撃などを行って介入したとされる問題について米国民の懸念を伝えた。プーチン氏は「証拠を示して欲しい」などと反論し、関与を否定した。/一方で両首脳は、サイバー攻撃により犯罪やテロ、社会インフラへの被害や選挙への介入などを防ぐため、両国で作業部会を設けることで合意した。/トランプ氏自らこの問題を取り上げることで、国内の「ロシア疑惑」への批判をかわすとともに、作業部会を作ることで関心を疑惑から今後の対応へと変えたい狙いがあるとみられる。(7月8日 朝日新聞デジタル)

トランプ氏が、プーチン氏に対して、昨年の大統領選でのロシアによるサイバー攻撃疑惑について詰問したのは、あくまでも米国内向けのポーズだ。それだからプーチン氏が「証拠を示して欲しい」と述べたのに対して、「ほら、これが動かざる証拠だ」と資料を渡すようなことはせずに、お互いの主張を言いっ放しにすることで、問題の軟着陸を図っている。

トランプ流交渉術の極意は”大胆な妥協”

この会談で、キスリャク駐米ロシア大使問題に進展が見られた。

ラブロフ氏(露外相)は、両首脳が共に相手国に対して新大使を任命するための手続きを急ぐことを申し合わせたことを明らかにした。(7月8日 朝日新聞デジタル)

現在のキスリャク駐米ロシア大使は、トランプ氏に近いセッションズ司法長官やフリン前大統領補佐官が政権発足前に接触していたことが問題視されており、ロシアゲートの渦中の人物なので、双方が新大使を選ぶということで、問題の軟着陸を図っている。

トランプ氏は大胆な妥協ができる外交手腕が極めて高いことが明らかになった。この能力をトランプ氏は内政でも用いるであろうから、そう簡単には失脚しないと筆者は見ている。

作家

佐藤 優さとう まさる

作家・元外務省主任分析官。1960年生まれ。同志社大学神学部、同大学院修了後、85年外務省入省。モスクワの日本大使館、外務本省国際情報局に勤務したが2002年に逮捕。09年6月有罪が確定し、失職。その後、作家として活躍する。

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