佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ

【髙松孝年×佐藤尊徳】「“2018年ピークアウト説”は崩れた」建設業界の未来は海外&外国人就労にあり

2018.07.31

企業

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写真/芹澤裕介

東日本大震災からの復興や、2020年の東京オリンピック開催を背景に、好景気に沸く建設業界。しかし、“建設業界2018年ピークアウト説”に代表されるように、オリンピック終了以降についてはさまざまな意見があり、未来像が見えてこない。

また、日本の人口減に伴う就労者数の減少や建設資材の高騰など頭の痛い課題も積み重なり、職人の技術継承にも支障をきたしている。

2018年4月に、マンションやオフィスビルの建設に強みを持つ中堅ゼネコン、高松建設株式会社(大阪)の社長に就任した髙松孝年氏と、尊徳編集長が建設業界を取り巻く現状と、その打開策を考える。

髙松建設株式会社 代表取締役社長

髙松孝年 たかまつ たかとし

1970年9月生まれ、大阪府豊中市出身。関西学院大商学部卒業後、1994年に積水ハウスへ入社。1998年に家業である髙松建設に入社し、グループ子会社JPホームの東京本店長、副社長、社長を歴任。2013年6月に、グループ中核の髙松建設取締役に就任。副社長を経て2018年4月、社長に就任。髙松コンストラクショングループの髙松孝育前会長の次男でもある。グループ企業には世界最古の企業といわれる社寺建築の金剛組も。

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株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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政権与党に就いた重責。副社長と社長の違い

尊徳 社長に就任して3カ月ですが、副社長と社長はどう違いますか?

髙松 違いますね。社長になると批判してくれる相手もいなくなり、自分の決断がすべてとなります。

尊徳 髙松建設は12年ぶりに創業家の社長が就任ということで、いろんな媒体の取材を受けて、もう話し飽きたでしょうが、新社長としての抱負は?

髙松 昨年、当社は100周年を迎え、私が6代目の社長、3代目が私の父です。5代目の前社長が建設業の好況を追い風に業績を大きく伸ばしたこともあり、成長路線の継続が、会社を引き継いだ私の使命です。

尊徳 業績のいい会社の社長を変えるのは、リスクが伴うもの。「社長を変えたら業績落ちた」なんて事態にならないとも限らない。調子がいいときは、組織を触らないのがビジネスの王道。人事異動も極力しませんよね。

髙松 今回の社長就任には、当社が昨年創立100周年を迎えたことも大きく関係しています。新体制の下、「ネクストセンチュリー101」と銘打って、新しい101歩目を踏み出そうとしていますし、成長路線は維持したい。だから、私の社長初年度の抱負は「派手なことは何もしない」でした。今までのやり方を踏襲しながら、社内の情報収集と分析を徹底しようと考え「検証・改善・改革」のスリーステップを掲げました。

髙松建設・髙松孝年社長

会社の将来を考えると、変えなければいけない点はたくさんあります。

改善の結果見えてくる「改革の必要性」

尊徳 「検証・改善・改革」をスローガンに掲げたわけですが、「改善」と「改革」はどう違うんですか?

髙松 先ほど尊徳さんがおっしゃたように、好調な会社は何もしないでいいんです。改革の必要なんてない。でも、細かいところに目を向けると、効率の悪いオペレーションや無駄な習慣など、会社の将来を考えると変えなければいけない点はたくさんあります。業績がいいと、その改善しなければいけない点に目をつむって、見過ごしてしまいます。

尊徳 確かに、収益が上がって会社が成長している時期は、生産性の向上を考慮しないケースもありますね。生産性が悪くても十分に儲かっていれば、無駄も“余裕”と考えられなくもない。何もしなくて未来永劫に会社が右肩上がりならそれでいいけれども、成長はいつか鈍化する。そのときになって慌てても遅いし、ならば、好調なときから細かいところに目を配って、改善すべきところは改善しないといけないですね。

髙松 改善をどんどん進めて、もうこれ以上無理というところまで追い込んで初めて改革が必要となると考えています。改革の必要があるのかを見定めないと、スピード感のある経営が必要な現代社会では、致命傷になりかねません。そのためにも、改善を早急に進める必要があります。

政経電論・佐藤尊徳編集長

好況な建設業界の前途には、問題がたくさんあるように感じます。

好況の要因はグローバル化とインフラの老朽化

尊徳 2020年の東京オリンピック後は、大きなイベントもなく、少子高齢化が加速して人口が減少する日本では、経済全体のパイがシュリンクし、建設業界も右肩下がりになるとの予測もあります。人材不足や資材の高騰など、現在は好況な建設業界の前途には、問題がたくさんあるように感じます。

髙松 オリンピック誘致が決まった際に、建設業界では“2018年ピークアウト説”がささやかれていました。一時に比べれば、少し風はないできていますが、予想とは違い現在も受注環境は悪くありません。民間のシンクタンクが発表する数字も悪くありませんし、“2018年ピークアウト説”は崩れたと感じています。

尊徳 オリンピック景気が続いている背景は何だと考えていますか?

髙松 オリンピック景気といいますが、5年で10兆円規模です。建設投資全体では年間50兆円の需要があります。オリンピックは大きなイベントで建設業界を潤したかもしれませんが、私はそこまで大きな影響を与えていないと思っています。

尊徳 1964年の東京オリンピックのときのような、新幹線や首都高速を走らせた社会インフラの大整備と比べれば、確かにレベルが違いますね。あのときは日本全体を牽引するだけの大イベントだったけれども、今回のオリンピックは国立競技場を建て替えたぐらい。建設業界に与える影響は薄いかもしれない。

髙松 建設業界でオリンピック後に注目されているイベントは、「リニア建設」と招致している「大阪万博」です。とはいえ、どちらも東京オリンピックと同じく“景気づけの花火”のようなもので、建設業界への影響は限定的だと踏んでいます。

髙松建設の建設現場。「ゼネコンは“地産地消”ともいえる。地域に根差した仕事です」と髙松社長。

尊徳 そうなると、現在の建設業の好況を支えている要因は何ですかね?

髙松 一つには経済のグローバル化が挙げられると思います。日本の経済はもはや内需だけで動いていません。例えば、中国の成長に引っ張られるようにして、福岡・北九州経済圏が近年、大きく伸びています。

尊徳 それは興味深い指摘ですね。北九州はインバウンド需要で大きく成長していると聞きます。地政学的に東京よりも上海やソウルのほうが近いかもしれませんから、この先、人とモノの流れがもっとグローバル化すれば、福岡・北九州は上海経済圏の一部としてさらに伸びる可能性もありますね。

髙松 建設業の好況を支えているもう一つの大きな要因は、社会インフラの老朽化です。高度経済成長期に建てられた建物が軒並み築50年を超え、オフィスビルの建て替え需要がここ数年急激に増えています。

尊徳 アベノミクスの影響なのかはさておき、企業業績がいいことで設備投資に資金が回せるというのもあるかもしれません。

人手不足の解決を目指した、建設現場の「働き方改革」

尊徳 業界の見通しは思っていたよりは明るいようですが、一方で、これは建設業界に限らない話ですが“人手不足”が深刻化しています。建設業界に限っていえば、技術を持った人材の高齢化が著しいと聞きます。

髙松 その通りで、高齢化による人手不足は深刻な問題です。

尊徳 安全性も含めて働き方を変えていかなければ、若い人たちは建設業界で働いてくれないでしょうが、仮に休みを増やしたら工期も伸びるわけで。その間のコストやクライアントとの兼ね合いもあるだろうから、いきなり休みを増やせといわれても現場では難しいでしょうね。

髙松 2017年から社会保険の一層の充実を建設業界の末端まで広げ、国交省や業界団体から就労環境の改善に関するお達しが下りてきています。

尊徳 共産国家みたいと思わないこともないけれども、人手不足を早急に解決するにはある程度強引な手法を必要としているんでしょうね。安倍政権は「一億総活躍」と銘打って労働力の掘り起こしに躍起になっています。

髙松 建設業界でも高齢者や女性の活躍が進んでいます。工事現場の平均年齢はどんどん上がっていますし、女性の現場監督もすごく増えています。

昔は60歳以上の人を現場で作業させなかったのですが、今はそんなことをいっていられない状況。また、現場作業でもサポート業務を中心に女性が採用されています。トイレも男女別に用意するのがスタンダード。工事現場も様変わりしています。

人手不足解決の切り札になるか?外国人就労

尊徳 建設業界は体力仕事が多いから、ほかの業界に増して“若い男性”が必要。それなのに、危険でつらい仕事だとイメージされているため、働き手が集まらない。こうなるとあとは外国人の労働力に頼るしかない。だから政府も新たな規定を作って、外国人労働者が日本に滞在できるような枠組み作りを急いでいますね。

髙松 外国人労働者が人手不足の現実的な解決策だと思っています。コンビニや飲食店では外国人スタッフは当たり前。建設業界でも徐々に増加していくと思います。

実は、外国人労働者が増えることが、建設業の海外進出の足掛かりにもなると、私は考えています。実習生として働いた人はいずれ母国へ帰ります。それは日本語をしゃべることができる人が海外で増えることを意味し、日本の建設手法を体験している彼らと組んで、海外で建設事業を進めることが可能となります。

尊徳 外国人労働者に日本で働いてもらいながら、日本語と技能のスキルアップを図ってもらい、母国に帰ってから日系企業と一緒にビジネスを展開するという話ですよね。日本語ができれば、母国の日系企業でリーダー的な役割を担えます。製造業が海外進出で使ってきた手法もそれでした。

髙松建設・髙松孝年社長

日本の建設業界には海外にはない、効率化を実現できる技術がある。

海外進出にも応用可能!人手不足を解消する技術革新

髙松 人手不足の解決策としてほかに考えられるのは、ロボティクス。ドローンを中心としたロボットによる作業の自動化ですね。

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