親子でサンゴ礁について考える 三菱商事のMC FOREST SCHOOL 2018「サンゴの不思議」

2018.9.25

社会

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親子でサンゴ礁について考える 三菱商事のMC FOREST SCHOOL 2018「サンゴの不思議」

写真/小池彩子

「サンゴ」と「サンゴ礁」の違いを知っている人はどれくらいいるだろうか。サンゴは石でも植物でもなく、動物だ。そのサンゴが集まって形作られた海の地形のことをサンゴ礁という。そして近年は地球温暖化などが原因でサンゴの「白化現象」が世界中で起き、深刻な環境問題となっている。

 

三菱商事は8月9日、東京・丸の内にあるMC FORESTにて、夏休み中の小学生を対象とするワークショップ「MC FOREST SCHOOL 2018 サンゴの不思議」を開催した。同社が2005年から取り組んでいる「サンゴ礁保全プロジェクト」活動の一環で、2013年から毎年開催されている夏休み限定の特別授業だ。サンゴ・サンゴ礁研究の第一線で活動する研究者の授業に、親子揃って熱心に耳を傾けた。

»MC FOREST とは

三菱商事の社会貢献活動を発信する“ステーション”。環境や社会問題解決にかかわるNGOやNPOなどのセミナー・イベントも開催する。館内にはカクレクマノミなどが泳ぐサンゴ水槽や、手で触りながら地球を体感できるデジタル地球儀、木のボールを入れると豊かな森が作られる様子が表現される大きな木製カラクリなど、楽しんで学ぶことができるユニークな展示物がある。

サンゴのスペシャリストから学べる夏休みの特別授業

「皆さんはサンゴを見たことはありますか? サンゴって何だろう? 植物なのかな? それとも動物? そんな不思議いっぱいのサンゴについて今日はいろいろなことを学んでいってください」

日本におけるサンゴ研究の第一人者でもある静岡大学の鈴木款特任教授のあいさつで始まった「MC FOREST SCHOOL 2018 サンゴの不思議」。

最初に、国士舘大学非常勤講師の中井達郎氏が「サンゴ礁の世界分布」という世界地図を前に、サンゴがいるのは暖かい海であること、サンゴ礁はサンゴだけではなくウニやヒトデ、魚などの“生き物天国”であること、サンゴのおかげで他の生き物が共存できていることなどを説明。基本的な情報を頭に入れた後、A班B班の二手に分かれて本格的な授業を開始した。

A班が学ぶのは、「サンゴの生態」。静岡大学のカサレト・ベアトリス・エステラ教授と鈴木利幸特任助教が担当だ。

「サンゴの体の中には褐虫藻(かっちゅうそう)という植物がいます。サンゴは動物なので食べることをしないといけませんね。どうしているかというと褐虫藻から栄養をもらっているんです。

サンゴは褐虫藻にすみかと栄養を与えて、褐虫藻はサンゴに光合成で作った有機物を与えています。異なる生き物がお互いに助け合いながら同じ場所で暮らしていることを『共生』といいます」(カサレト教授)

「サンゴの色は、共生している褐虫藻の色。サンゴ自体も色素を持っていて、その色素は光るんです」とカサレト教授。

近年問題になっているサンゴの「白化現象」は、海水温の上昇などが原因で褐虫藻がサンゴの体内で縮小したり、透明になって色素を失い、サンゴが形成した“骨格”が透けて見た目が白っぽくなってしまうことをいう。褐虫藻から有機物(エサ)を得られないサンゴは弱っていき、長い間エサが得られないと最終的には死んでしまう。

どれだけの子どもたちがその事実を知っているかは定かではないが、将来、別の場所でその情報に触れたとき、ここでサンゴの生態を学んだことは大きな意味を持つだろう。

水槽に布をかけて一時的に夜の状態にして、ブラックライト(紫外線ランプ)をサンゴに当てると、サンゴ自体が持つ蛍光色素(蛍光タンパク質)が光る。

「褐虫藻が光合成をしてサンゴに栄養を与えているのは昼の間。光合成ができない夜は、サンゴは小さいプランクトンやバクテリアを食べています。これからサンゴの食事の様子を見てみましょう」

続いて、顕微鏡でサンゴがプランクトンを食べる様子を観察する。子どもたちは興味津々な様子で顕微鏡をのぞきこみ、学習ノートにメモをしていく。

サンゴにプランクトンを与えて食事シーンを観察。

学校の授業ではなかなか見られない内容に、子どもたちだけではなく後ろに座っている親も身を乗り出していた。

サンゴにはサンゴ礁を形成する造礁サンゴや軟らかい群体を作るソフトコーラルなど、さまざまな種類があることを説明する静岡大学の鈴木利幸特任助教。

沖縄の海の砂はなぜ白い?星砂の正体は?

一方、中井達郎先生が担当するB班は、いろいろな場所の「海の砂」を観察する授業。用意されたのは5本のボトル、トレー、虫眼鏡、ピンセット。ボトルに入っているのは見た目がそれぞれ違う砂だ。

「色が違う」「一粒一粒の形が違う」「砂の粒の大きさが違う」などいくつかの“観察結果”が出たところで、それぞれ房総半島、新島、パナマ、タヒチ、沖縄という5カ所の海で採った砂だということが明かされる。

ボトルを見比べて、違いを探る子どもたち。

房総半島と新島の砂は黒っぽくて粒が細かい。キラキラして見えるのは石粒やガラスなどで、大昔に火山から吹き出したもの。一方、パナマ、タヒチ、沖縄の砂はサンゴの海の砂なので白い。小さな貝やウニのトゲや殻などが波によって壊され細かくなったもの。つまり、サンゴの海の砂はほとんどが生き物の亡骸なのだ。

ちなみに、沖縄で小瓶に入って売られている「星砂」は有孔虫(ゆうこうちゅう)という生き物の亡骸。見た目はキレイだが、そういわれると何だか切ない気持ちにもなる。子どもたちはそれぞれの砂ができた時間に思いを馳せながら、“海の砂”を瓶に入れてラベルを貼り、記念に持ち帰っていった。

サンゴ礁について考えることに意味がある

2つの授業を終え、皆が再び揃ったところで、まとめとして鈴木款特任教授がクイズを出題。サンゴはどんなところにいる? サンゴは生き物? サンゴ礁にはサンゴ以外にどんな生き物がいる? 星砂の正体は?……。この日学んだばかりのことを元気よく手を挙げて答える子どもたちの顔は生き生きとして見えた。

「この『サンゴのふしぎ』は毎年やっていますが、年々環境に興味がある子が増えてきましたね。2回、3回と参加するリピーターの子もいますので、意識が高まっているなと実感しています。家に帰って家族に話したり、友達に話したりしてくれることを期待したいです」(鈴木利幸特任助教)

大人でも知っているようで知らないことばかりだったサンゴの生態。子どもたちは、サンゴ礁の海を守ることが、自分たちの未来を守ることでもあることを学んだはずだ。