宇宙スタートアップ企業ispaceがSpaceXと打ち上げ契約 史上初の民間月面探査が再始動

2018.9.26

技術・科学

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宇宙スタートアップ企業ispaceがSpaceXと打ち上げ契約 史上初の民間月面探査が再始動

©ispace

月面資源開発に取り組む株式会社ispace は、米SpaceX社との複数回の打ち上げ契約を締結。ランダー(月面着陸船)を搭載したロケットを、2020年、2021年にアメリカ・フロリダのケネディ宇宙センターまたはケープカナベラル空軍基地より打ち上げ、月周回と月着陸を目指す。

本プロジェクトでチームHAKUTOが再起動

宇宙資源としての月面開発を目指すispaceは、今年3月に終了した月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加していたチームHAKUTOを運営する民間企業。ミッション達成の見込みがないことを理由に打ち切られたレース終了後も、民間による月面探査を目標に開発を続けている。

月面探査を行う民間企業として複数のミッションの打ち上げを締結するのは世界初。SpaceX社が提供する再使用型ロケット「Falcon9」にランダー(月着陸船)を搭載して打ち上げる。SpaceXは打ち上げ成功例も多く、信頼性が高い。また、ispaceが今後、継続的なミッションを実施するにあたり、安定的なロケット供給が可能な打ち上げ頻度の多さも評価したという。

プロジェクト名は「HAKUTO-R」 と命名。「Reboot(再起動)」を意味する「R」は、本プロジェクトが、無念に終わったLunar XPRIZEに参加したHAKUTOの意志を受け継いでいることを示している。ispaceのファウンダー・代表取締役の袴田武史氏は、この3年間のプロジェクトについて以下のように語った。

「夢みたいなことを現実のものとしてとらえて、一歩一歩進めきました。われわれが今後やっていくミッション・ビジョンは非常に長期的なもの。いくつかのマイルストーンはあるが、“成功”というものはないと思います。大きな資金調達もひとつのステップを刻んだにすぎません。その第一歩として、『HAKUTO-R』を必ず実行します。皆さん、一緒に月に行きましょう」

同社が掲げる月面開発プロジェクト「MOON VALLEY 構想」では、開発のフェーズによってミッション(Mission、M)が分けられており、今回のロケット打ち上げは、ランダー(月着陸船)の月面周回(M1 2019~ 2020年)、ローバー(月面探査ロボット)での月面着陸・走行(M2 2020~2021年)の実施を目指す。

人類初の月面の縦穴探査に参加したい人、集合!

月面探査は、月面のLacus Mortis(北緯45度 東経25.6度)と呼ばれる地点に着陸し、そこにある縦穴を4輪のローバーと2輪のローバーによって探査する人類初の縦穴探査。

HAKUTO-R: ispace Lunar Exploration Program

ispaceは、2020年と2021年の2回のデモンストレーション・ミッションを経て、年複数回の本格的な商業ミッションを連続して実行する計画だ。

「HAKUTO-R」のプロジェクトには、ランダー・ローバーの命名権やローバーの操作権が与えられるスポンサーシップと、4K・8Kのカメラによる高解像度の映像の取得、企業の商品の輸送、月面環境での実験検証が得られるペイロードデリバリーがある。ほか、一般の人たちも、近日立ち上げられるサポーターズクラブで参加することが可能だ。

»「HAKUTO-R」公式HP(ispace内)

SpaceX社の共同設立者でCEOの米実業家イーロン・マスク氏が先日発表した、スタートトゥデイ社長・前澤友作氏との月周回旅行は2023年の予定。ispaceによる本プロジェクトはそれに先駆けて行われる。

なお、M3以降は、地球~月間の輸送サービスやデータ取得、M10以降は本格的な月面開発に向けた産業プラットフォームの構築を計画している。

左からエンジニアのジェイミー・デニスストン、ファウンダー・代表取締役の袴田武史、ディレクター・COOの中村貴裕