小泉今日子や沢尻エリカ、鈴木京香ら豪華女優陣が共演するドラマが完成した。女たちが追い求める「おいしい食事」や「いとしいセックス」、それにまつわる本音が見どころで、公開前から女性ファンの支持も強い。ベテラン脚本家の筒井ともみが企画・プロデュース、原作、脚本を手がけた意欲作。撮影エピソードとともに映画の見どころを紹介する。
»『食べる女』
劇場公開:9月21日(金)/配給:東映
出演:小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香/ユースケ・サンタマリア、池内博之、勝地涼、小池徹平
原作:筒井ともみ「食べる女 決定版」(新潮文庫刊)
監督:生野慈朗
劇場公開:9月21日(金)/配給:東映
出演:小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香/ユースケ・サンタマリア、池内博之、勝地涼、小池徹平
原作:筒井ともみ「食べる女 決定版」(新潮文庫刊)
監督:生野慈朗
文筆家で古書店も営む“トン子”こと敦子(小泉今日子)は、おいしいものを作るのも食べるのも大好き。トン子が暮らす古い日本家屋には、幼なじみの美冬(鈴木京香)や担当編集者の“ドド”(沢尻エリカ)、その飲み仲間の多実子(前田敦子)が集まっては、飲み食いしながら恋愛やセックスについて本音で語る“宴”が開かれる。
空気感も料理もおいしい女子会シーン
見どころはなんといっても、トン子の自宅や、美冬が営む小料理屋での女子会シーン。恋愛や結婚にまつわる誰かの悩みに、誰かが意見を言ったり、聞き流したりする。
話す内容以上に女同士ならではのざっくばらんな話し方や場の雰囲気がリアルで、女性なら「そうそう、この感じ楽しいよね」と共感するポイントが多そう。男性が見ると、「女たちは自分たちのいないところではこんなことをこんなふうに話すのか……」とやや衝撃を受けつつも勉強(?)になるかもしれない。
登場する料理は50品以上。原作の筒井が定番レシピを独自にアレンジした品々が多く、どれも本当に食べられるように作られている。
調理にあたったのは、ドラマやCMで活躍するクッキングスタイリスト・深沢えり子らのチーム。スタジオのすぐ外に設置した調理室から「アジのサワークリームあえ」や「手羽先の岩塩焼き」など出来たての料理が運ばれ、映画を彩っている。
沢尻エリカ、前田敦子の食べっぷりが最強
“宴”のシーンでは、食べる姿がセクシーに映ることが重視され、「もっとぱくぱく食べて」「手で食べられるものは手で」といった指示が女優陣に飛んだ。これによく応えたのが、自身も食べることが大好きだという沢尻エリカと前田敦子。
沢尻は、撮影日には朝から食事を抜いて挑んでいたそうで、手羽先などは骨の周りまでキレイにたいらげていた。前田は誰より取り皿に食べ物を山盛りにして、「菜の花のこぶ締め」などは手づかみで食す。食欲のせいか、楽しいムードがそうさせるのか、女優陣はカットがかかってカメラが止まっても食べ続けていたとか。
また、食べるシーンは小道具にもこだわりがつまっている。食器や酒器、箸置きはあえて統一することなくバラバラ。それぞれが気に入ったものを使う女子会らしい気取りのなさを表現するとともに、各キャラクターの描写にも一役買っている。
美冬の小料理屋「道草」で出すビールグラスは、スタッフが用意したもののなかから鈴木京香が選んだ。
「ルールよりも食事を楽しくという考えがお店の食器などにも表れている。『道草』は私(美冬)の店だからと選ばせてもらえたのがうれしかった」(鈴木)
画面にも自然とにじむ女優陣の雰囲気の良さ
女たちは恋愛や結婚にまつわる悩みをはじめ、自分のことにフォーカスして生活しており、同志的な存在である女友達とは必要以上にベタベタしない。そこもまた現実にありそうな風景だ。劇中のちょっとしたやりとりに垣間見える友情にはリアリティがあり、ほっこりさせられる。
友情の描写が説得力を持つのは、キャスト間でリスペクトの気持ちを抱き合っていることも一因だろう。沢尻や前田は小泉と共演できることも映画出演の決め手のひとつだったと話す。撮影現場での待ち時間には、小泉を中心に会話が弾んだそう。壇蜜は過酷だった過去の現場の話や猫の話で盛り上がったと明かしている。
ドラマや映画のキャストが舞台裏でもリアルに仲が良いと知ると、何だかうれしくなる気分は誰しも共通のものではないだろうか。トン子が美冬と一緒に料理をしながら、切った漬物を美冬の口に放り込むシーンなど、いかにも気心の知れたムードを楽しんでほしい。
バラエティ豊かな恋模様が観る人の心を軽くする
映画は、恋愛や結婚などに悩みを抱える8人の女それぞれのストーリーを編み込んだつくりになっている。女子会シーン以外は、それぞれがそれぞれの場所で毎日を戦う。
8人は年齢もバラバラなら職業も恋愛観も欠点もバラバラで、紡がれる物語も実に多様だ。彼氏にプロポーズされたのに“ぬるい恋”に納得しきれないテレビ番組制作スタッフ、男に優しすぎて“都合のいい女”になってしまうショップ店員、料理下手が一因となって夫に浮気され出て行かれる主婦など……。
赤の他人が見れば「夢見がちなことを言っている場合か!」とか「そんなクズ夫はこっちから捨ててしまえ!」とか、ほとんどが一刀両断できるような悩みかもしれない。それでも、本人にとっては簡単に答えが出せない葛藤だったりするところがまたリアルだ。ラブシーンもたびたび登場し、ユースケ・サンタマリアと沢尻が演じるベッドシーンなどはかなりユーモアたっぷりの仕上がり。
しかし、決してキレイゴトではない恋愛模様や言動の数々は、だからこそ、恋に二の足を踏んでいる人や日常を窮屈に感じている人の心に火をともしてくれるはずだ。
まさかのTKGにも表れる「いいんだ」というメッセージ
映画の終盤、女たちはそれぞれ一人になって卵かけごはんを食べる。手間も技術も時間もかけて作られた料理がたくさん出てきた後にまさかのTKG。“そんな日があってもいいよね”というメッセージのようにも受け取れる。ちなみに、女優陣に心からおいしく食べてもらうため、卵は1個280円の高級品が使われたという。
小泉今日子は言う。
「筒井さんの書かれるものは、“こういうときはおいしいものを食べればいいんだ”とか“今日はもう、寝ちゃえばいいんだ”というヒントをくれる。この映画を観ても、“いいんだ”を増やしてもらえる気がしています」
劇場でゆったり鑑賞して、こり固まった肩や心をほぐしてみてはどうだろうか。