銀行ATMは公衆電話になる

2018.11.28

経済

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写真/TK Kurikawa / Shutterstock.com

今年4月に経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」や消費税増税対策にキャッシュレス決済を取り入れるなど、キャッシュレス社会の実現に向けて政府も本腰を入れ始めているが、日本はそもそも現金社会が根強い。いまだに給料日ともなればATMには列ができる。メガバンクはどう考えているのか。

三菱UFJと三井住友が相互開放

「ATMは公衆電話と同じ道をたどることになるでしょう。いずれ近い将来なくなる運命だと思います」

あるメガバンクの幹部は、銀行ATMの近未来をこう予想する。政府がキャッシュレス社会の実現に向けて大きく踏み出すなか、これまで日本の現金社会を支えてきたインフラである銀行ATMも岐路に立っていることは確かだ。

そうしたなか、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が店舗外ATMを相互開放することが銀行界の話題をさらっている。両行は約2350カ所の店舗外ATMについて、これまで他行の顧客がATMで現金を引き出す場合、平日日中で108円の手数料がかかっていたものを来年度から無料化する。あわせて立地が重なるATM500カ所程度を統合する。また、紙幣だけを取り扱う簡易型ATMの開発も協力して行う計画だ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の平野信行社長は11月13日の2019年3月期中間決算発表で、このATMの相互開放にとどまらず、システム・機器や管理・運営業務についても共同化の可能性があることに言及。「(金融機関同士が)共同出資して共同運営会社をつくるような形も、将来的にはあるかもしれない」と語った。また、三井住友フィナンシャルグループ(FG)の國部毅社長も今回のATMの相互開放について、「各行が参加できるオープンな形態を展望している」と述べた。

いずれ3メガバンクの“共通財”に

一方、今回の2メガバンクのATM相互開放に参加していないみずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は決算発表で「ATM自体はこれを強みととらえるのか、弱みと考えるのかいろいろな観点がある。戦略的なオプションは極めて多い。あらゆる可能性に対してオープンに対応していきたい。何を差別化要素として、何を共通化・プラットフォーム化できるのかということは、これから検討していきたい」と語った。

みずほFGは、来年度上期までシステム統合の移行期に当たるため、今回の2メガのATM相互開放には参加していないが、3メガバンクのトップの会見から見る限り、システム統合が終了した時点で、2メガから参加の呼びかけがあるとみられる。3メガバンクのATMは、まず店舗外ATMを皮切りに、いずれ店舗内のATMも含め相互に開放され、“共通財”としてまさに“公衆電話化”するものと予想される。

銀行にとってATMは割に合わない

その一方で、銀行の利用に占めるパソコンや携帯電話の利用は急速に伸びている。この点について、みずほFGの坂井社長は、「有人店舗はこの10年で3割程度利用者が減った反面、PC、スマホについては2.5倍利用者が増えた、有人店舗以上にPC、スマホ等のネット利用が多い」と指摘する。ただし、「それを上回ってATM利用者が圧倒的に多いのが現状で、利用するお客さまの数はこの10年間ほぼ横ばいだ」という。

現金の保管・デリバリーコストがかさむATMは資金効率が悪く、時間外に手数料を得ても割に合わない。すべてPCやスマホに移行してほしいというのが銀行の本音。しかし、いまだ現金志向の強い日本では銀行ATMは不可欠で、「コンビニやゆうちょ銀のATMに代替してもらう提携を進めているが、ATMが顧客との接点として依然として重要であることは事実」(メガバンク幹部)と言っていい。

銀行ATMを経営上どう位置付けるか、現状では悩ましい問題ではあるが、「携帯電話が普及し、緑の公衆電話が消えつつあるように、いずれ銀行ATMもPCやスマホに取って代わられる」(同)ことは間違いないようだ。