人間関係のゴールは信頼関係を築くこと

2018.12.21

社会

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2000年の湘南美容外科クリニック開院以来、順調に患者の信頼を獲得し、SBCメディカルグループを拡大してきた相川佳之代表。しかし、その成功の裏には数々の失敗があり、そこから学んだある“答え”があった。シリーズ2回目となる本稿では、相川代表が「仕事をするうえで最も大事なものの一つ」という、コミュニケーションにスポットをあてる。患者と医療従事者の信頼関係を築き、職場の雰囲気をよくする“相川流コミュニケーション”とは――?

SBCメディカルグループ 代表

相川佳之 あいかわ よしゆき

1970年生まれ、神奈川県出身。1997年、日本大学医学部卒業後、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。大手美容外科を経て、2000年に独立、湘南美容外科クリニックを開院。料金体系の表示、治療直後の腫れ具合の写真を公開するなどの美容業界タブーを打ち破り、わずか18年で全国に75拠点80院を構えるまでに成長。さらに、審美歯科や頭髪治療、不妊治療、眼科、血管外科、整形外科、がん免疫療法など多分野に進出。2019年中には100拠点を予定。

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職場にコミュニケーションは不要と思っていた

藤沢院の経営が軌道に乗ったあと、2001年に横浜院、続けて2003年に新宿院を開院。2005年には渋谷院、大阪梅田院、名古屋院と新規開院を重ね、破竹の勢いで拡大してきたSBCメディカルグループ。そんな中で相川代表は、クリニックの経営効率化を理由に、ある勘違いをしてしまったことがあるという。

「職場にコミュニケーションは要らない、むしろ無駄だ。当時はそう思っていました。それで、お酒を断ち、スタッフとの飲み二ケーションもやめて、交流をほとんどしなくなってしまったのです」

ひたすら数字とにらめっこし、これからの組織運営やクリニック経営を考えることが、経営者としてすべきことだと思っていた。ところが、相川代表がひとり孤独に数字と対峙している間に、優秀な医師や看護師がどんどん辞めていった。それと同時に、患者数が減り、クレームだけが増えていったという。

「なぜ、だれも自分に付いてきてくれないんだろう……?」 そう自問自答したとき、相川代表は“コミュニケーションの重要性”を思い知った。

うまくいくチームには“うまくいく雰囲気”がある

その後、相川代表はコミュニケーションについて専門書を読んだり、講習会に参加したり、仕事がうまくいっている経営者に話を聞くなど、様々な方法でコミュニケーションの方法やスキルを学んだ。

「コミュニケーションは、無駄どころか信頼関係の原点であり根幹です。コミュニケーションなくして、良い人間関係はありません。当時はそのことに気付いていませんでした」

コミュニケーションの重要性を身に染みて感じた相川代表。そんな彼がSBCの新人研修で必ず最初にやるのは「アイスブレイク」だ。アイスブレイクとは、初対面の者同士が出会う場面で、緊張した硬い雰囲気を解きほぐすための手法のこと。これは、毎日の朝礼などにも応用できるという。

SBCメディカルグループ新人研修でのアイスブレイクの様子。隣の席同士でペアを組みハイタッチ。30秒後には打ち解け、全員が笑顔になる。

相川代表いわく、「SBCでも、毎朝アイスブレイクをやっているチームは業績が良い」とのこと。そして、うまくいくチームには“うまくいく雰囲気”というのがあり、それがお客様にも伝わるそう。

つまり、“雰囲気は目に見えないが確実に存在”していて、人間関係に良くも悪くも影響するということだ。

コミュニケーションの第一歩は自分自身のコンディション作りから

では、どのようにして職場のコミュニケーションを良くしていくか。まず、前提として“他人の気分は変えられない”と心得ておくことが大事だと、相川代表は言う。

「相手の機嫌を直そうとしても無理。たいてい余計に怒らせるか、自分だけ疲れるかして、徒労に終わります。コミュニケーションの基本は、相手を変えようとするのではなく、“自分を変えていく”こと。そのほうがずっと簡単です。自分が変われば、周囲も少しずつ変わっていきます」

たしかに、他人を笑顔にするのは難しいが、自分が笑顔になるのは簡単だ。面白いことや楽しいことがなくても、笑顔は作れる。朝出勤したとき、自分から笑顔で挨拶してみると、相手も自然に笑顔で返してくれるはずだ。そうやって常日頃から笑顔でいれば、周囲も笑顔で接することが当たり前になっていく。

ポイントは、自身のコンディションを一定に保つことだ。「だれでも気分に波がある人とは付き合いづらいもの。自分が一定のコンディションでいることで、相手に安心感を与え、人間関係を築きやすくなります」と、相川代表。

「他人と過去は変えられない。しかし、自分と未来は変えられる。それを学んでから、私も人に振り回されにくくなりました。自分で自分をコントロールできると、気分の浮き沈みもなくなって、とてもラクです」

気持ちの良い一日を過ごすためのテクニック

とはいえ、コンディションを一定に保つのは難しいこと。そこで、相川代表が実践しているのは“規則正しい生活”と“アハメーション”だ。

「不規則な生活をしていると、モチベーションを一定に保ちづらいことが研究から分かっています。そもそも、毎朝早起きする人でモチベーションの低い人って、あまり見たことがないですよね?」

不規則な夜型の生活リズムと、うつ病などのメンタル不調との相関関係は、厚生労働省も認めているところだ。とするならば、規則正しい生活をすることが、モチベーションを安定させる近道といえる。ちなみに、先述の“笑顔でいること”も望ましい生活習慣の一つだ。

「笑顔でいると、幸せホルモンのセロトニンが脳内で分泌されます。また、美容医療の面からも、リラックスした表情などで口角が上がり、いわゆる幸せ顔になります。逆に、人の悪口や不平不満ばかり言っている人は、口元が歪み、眉間にシワが刻まれて、疲れ顔になります」

また、アハメーションは、自分を肯定し自信を付けてモチベーションを上げるテクニック。「今日はモチベーションが上がらないから、仕事をしたくない」などということは、基本的には通用しない。そこで、拳を作り、「絶対やる!」と強く声に出して自分を鼓舞する。すると、不思議とモチベーションが上がり、やる気が湧いてくる。

「私も講演会や株主総会など“ここ一番”の前には、舞台袖でアハメーションをして気合いを注入しています」

毎朝の出勤前にアハメーションを習慣化すると、気持ちよく一日がスタートできそうだ。

“目に見えないもの”こそが数字を作る

話を最初に戻すが、「なぜコミュニケーションが大事か」と言うと、「相手との信頼関係を結ぶため」だ。心理学の用語でこれを「ラポール(信頼のかけ橋)」という。

ラポールのスタートは、自己紹介だ。自己紹介にこだわる理由について、相川代表はこう話す。

「SBCでは毎月、覆面調査員を全83クリニックに派遣しています。200点満点で、現在ようやく175点になりました。そこで分かったことは、“第一印象が大事”ということです。初めの印象が悪いと、あとから挽回するのは大変なこと。反対に、第一印象がいいと、何か問題が起きても聞く耳を持ってもらえます。この差は非常に大きなものです」

目の前の医師が手術が上手かどうかは、患者には分からない。しかし、自己紹介は誰でも分かる。患者が「この先生なら手術を任せてもいい」と思うか否かの判断は、初対面の挨拶によるところが大きい。

そのため、相川代表は患者を迎えるとき、身なりや言葉遣いはもちろんのこと、“相手と目を合わせて話す”ことを大切にしている。

「目を見て話すことで、私の気持ちが相手に伝わり、私も相手の気持ちをキャッチできます」

「目は口ほどにモノを言う」という、ことわざがある。「この先生は親身になってくれているか」、「人間的に信じられる人か」を、患者は医師の目を見てジャッジしているのだ。

「18年間クリニック経営をしてきて分かったことは、“目に見えないものが目に見えるもの(数字)を作る”ということ。リピート率や売上などすべての数字は、自身やチームの雰囲気が作っています。もし業績が上がらないなど迷ったときは、自分の普段のコミュニケーションのあり方など“目に見えないもの”を見るようにすると、何かヒントが見えてくると思います」