諸刃の剣の日本郵政 アフラック2700億円投資

2018.12.21

経済

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写真/佐竹美幸(photolibrary)

日本郵政グループが米保険大手のアフラック・インコーポレーテッド(以下アフラック)に約2700億円を出資すると発表した。アフラックの発行済み株式の7%を取得し、4年間保有すると議決権が増す仕組みであることから、4年後には出資比率が20%に拡大し持ち分法適用会社となる。

他の大手保険会社との関係が悪化

日本郵政とアフラックは2013年に業務提携しているが、資本面でも提携、持ち分法適用会社化することで、“アフラックの収益向上がそのまま日本郵政の収益に直結する事実上のグループ入りする”ことを意味する。

だが、この出資は2万4000局のネットワークを通じていろいろな金融機関の金融商品を販売する“日本一の売り子”としての日本郵政にとっては諸刃の剣になりかねない。特に郵便局の窓口が代理店として商品を売る他の大手保険会社との関係が悪化することは避けられないだろう。

半年前から日本郵政はM&Aに出ることを公言していた。日本郵政の長門正貢(ながと まさつぐ)社長は2020年度までの中期経営計画を発表した5月の記者会見で、中計の3年間で「数千億円の投資を視野に収益の底上げを目指す」と語っていた。

このため「海外の運用会社の買収など、M&Aで時間を買う戦略が念頭にある」(市場関係者)と見られていたが、すでに提携関係にあるアフラックへの出資は、「安全を重視した投資でサプライズに乏しい」(同)と評価されている。

背景には、15年に豪州の物流大手トール・ホールディングスを買収したものの、高値掴みがたたり、減損処理(約4000億円)を余儀なくされ、民営化後初の最終赤字に転落した苦い経験がある。その後も野村不動産の買収に動くも、条件が折り合わず白紙撤回に追い込まれた。

国が筆頭株主の半官半民の日本郵政グループにとって、過大なリスクを取れる余地はない。だが、日本郵政グループのM&A戦略はこれで終わりと見るのは早計だろう。本丸は恒常的な収益低下にあえぐ日本郵便の買収戦略にある。

日本郵政グループのM&A戦略

2016年6月末に日本郵便の新社長に就任した横山邦男(よこやま くにお)氏は、就任インタビューで「国内で足らざる部分はM&A(合併・買収)や提携も今後出てくる」と、国内での企業買収を示唆する発言を行っている。

三井住友銀行出身の横山氏は、同行の元頭取であった西川善文(にしかわ よしふみ)氏が日本郵政社長に転じたのに合わせ、日本郵政に出向した経験を持つ。

「当時、西川社長が三井住友から連れてきた4人組の筆頭で、西川氏の懐刀と呼ばれていた。政治問題化した“かんぽの宿”の売却や日本通運との宅配事業の統合を主導したのも横山氏だが、西川氏の失脚とともの古巣の三井住友銀行に戻った」(日本郵政グループ関係者)という経緯がある。

その後、三井住友銀行では常務まで上り詰めたが、三井住友アセットマネジメント社長に転出したところで、官邸から白羽の矢があたり、日本郵便社長就任となったいわば出戻り組だ。

日本郵便はグループ内で唯一、上場していない中核会社で、収益面ではグループのお荷物といわれている。だが、2万4000局というグループ最大の強みである拠点網を持ち、日本最大の配送ネットと売り子としての潜在力がある。その日本郵便がどこを買収するかによって業界地図は大きく塗り替わる。

ゆうちょ銀行の限度額引き上げはいずれ撤廃まで

日本郵政グループをめぐるもうひとつの動きは、ゆうちょ銀行の限度額引き上げが政治決着したことだ。

統一地方選や参院選を控え、集票マシンとして期待される全国郵便局長会と族議員にとって、ゆうちょ銀の限度額引き上げは、日本郵政グループへの格好のアピール材料となる。

ゆうちょう銀行の預入限度額は2016年4月1日からそれまでの1000万円から1300万円に引き上げられたばかり。にもかかわず郵政民営化委員会は、[1]通常貯金の限度額の対象から外す、[2]限度額全体を引き上げる、[3]通常貯金と定期性貯金でそれぞれ別個の限度額を設ける――の3案を軸に検討を進めてきた。

日本郵政グループの長門社長は「(限度額の問題は)政令マターであり、郵政民営化委員会の案に基づき、われわれの監督機関である金融庁と総務省とで合意して決定される。われわれはその決定に従うだけ」と、あくまで政治の判断に委ねる姿勢を示してきたが、本音では近い将来、限度額は撤廃されると踏んでいる。

これに対して民間金融機関、とりわけマイナス金利で苦境に立つ地銀等は死活問題と強く反対しているが、ある日本郵政幹部は、「ゆうちょ銀はメガバンクのようなもので地銀とは競合しない。限度額が撤廃されても影響はないよ」とうそぶく。地銀関係者が聞いたら激怒しそうな発言だ。

金融庁は12月10日、全国銀行協会をはじめとする金融諸団体と意見交換会を開いた。この中で全国信用金庫協会の佐藤浩二(さとう こうじ)会長は、「ゆうちょ銀行の規模拡大のみを先行させる動きは断じて容認できない」と強調した。

しかし、政府はゆうちょ銀行の預入限度額を現状の2倍にあたる2600万円に引き上げる方針を固めた。普通預金にあたる通常貯金と定期性預金の預入限度枠を分離して、それぞれ1300万円まで、合計で2600万円まで預入可能とする。

民間金融機関の反対の声は完全に無視された格好であり、地銀以下の中小金融機関にとって生存を左右する劇薬となろう。