日本のベンチャーも参加 NASAの商業月面輸送サービスCLPS

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日本のベンチャーも参加 NASAの商業月面輸送サービスCLPS

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11月末、日本の民間宇宙開発ベンチャーispaceが米チャールズ・スターク・ドレイパー研究所らとともにNASAへ提案した、10年間で予算総額26億ドルの月面への輸送サービス(CLPS)がNASAに採択された。これまで国主導だった月探査が、国際協力をベースとした民間主導のミッションに切り替わることで、大きく加速する可能性が出てきた。

ispaceは月着陸船の設計やミッション運用などを担当

CLPS(クリプス、Commercial Lunar Payload Services)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が行う月への商業輸送サービス。2017年2月に発表され、官民連携の考え方に基づいて、荷物を月へ輸送するサービスを民間企業などからNASAが公募した。

応募は今年10月上旬に締め切られ、興味を示した約30社のうち9チームが選定。IDIQ(数量未確定契約)という定められた期間に未確定量のサービスを提供する契約で、打ち上げ予定や荷物の内容は未定。来年1月から契約が開始され、早ければ2021年12月末までに輸送が行われる可能性がある。

NASA本部での発表会。選定チームには、日本のispaceやAstrobotic、Moon Express(ともに米)など、先の「Google Lunar XPRIZE」にも参加した企業の姿も。

また、契約主体はアメリカの企業でなければならず、宇宙機の製造もアメリカで行い、構成部分の半分がアメリカ製であることなどが条件として挙げられており、日本企業のispaceは、米チャールズ・スターク・ドレイパー研究所の合同チームに参画することになる。

契約主体のドレイパー研究所は、アポロ計画で月着陸船の誘導・航法・制御システム(GN&C)を担当した非営利研究開発組織。CLPSでは、ペイロードの運用や月着陸船GN&C、システム開発、全体管理を行う。

ispaceが担当するのは、月着陸船の設計、ミッション運用、高頻度のペイロード輸送サービス。共にチームを組むジェネラル・アトミックス社は月着陸船の製造・組み立てやアメリカでの試験を担当。130基 を超える衛星の打ち上げ支援実績があるスペースフライト・インダストリーズ社は、ロケット打ち上げサービスやペイロードインテグレーションを提供する。

全体の予算は26億ドル。NASAから都度ミッションが与えられ、選ばれた企業が提案を行う形式が想定されている。

スペースXもNASAの支援で成長してきた

世界の宇宙開発を先導するNASAが、今回、民間の力を用いて月輸送サービスを行うことは、これまで国主導だった月探査が、国際協力をベースとした民間主導のミッションに切り替わる重要な分岐点を意味している。

大きく舵を切ったNASAの目的は、地球と月面の間を行き来する小型月着陸船によるペイロード輸送サービスを民間から獲得すること。民間の開発力を利用することで、コスト削減とともにリスク軽減も実現できる。

アメリカが構想する月近傍の有人拠点「月軌道プラットフォームゲートウェイ」プロジェクトでは、月面探査の先に、火星探査や居住可能性の調査も見ており、今回のCLPSは、その第一歩と言えそうだ。

現在、ロケット開発や商業衛星市場で大きなシェアをとるスペースXは、2002年の設立後間もなく、打ち上げ実績のない段階でNASAと商業軌道輸送サービスの契約を締結しており、その後のNASAや米海軍との契約のなかで55億ドル以上の金額を得ている。

月面資源開発に取り組むispaceは、今回のCLPSに参加することはビジョン達成の大きな一歩であり、技術的な信頼を得ることは今後のビジネスチャンスにつながると見ているという。また、CLPSを通して技術開発を加速させると同時にNASAの知見も得ることができるため、ispaceが独自に進める月面探査プロジェクト「HAKUTO-R」にも大きな影響を与えそうだ。

ちなみに、「これまでに月面商業輸送サービスを実現した組織やプロジェクトはまだ存在しない」(ispace広報)というが、素人が話を聞くと何だかトラックで荷物を届ける宅配便のようなイメージ。そんな時代が来るのもそう遠くないのかもしれない。