「1票の格差」を解消しなければ「選挙無効」もありえる

2015.3.26

政治

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 選挙で投じられる1票の価値が、選挙区内の有権者数によって差が出る「1票の格差」問題。最大2.13倍だった2014年12年の衆議院議員選挙が憲法違反だとし、2つの弁護士グループが選挙の無効を求めて全国14の高裁、高裁支部に起こした17件の訴訟問題は、各地での判断が割れています。

 3月25日、福岡高裁は一連の訴訟のなかで初めて「違憲」とする判決を出しました。25日現在までに出ている11件の判決のうち、福岡高裁の「違憲」以外は「違憲状態」が7件、東京高裁を始めとする「合憲」は3件。2012年衆院選時の訴訟では、高裁段階で2件あった「選挙無効」は、これまでのところ出ていません。

 判決の変化には、選挙区定数の「0増5減」など、2013年6月の法改正の評価が関係しています。福岡高裁では法改正時に行われた「1人別枠方式」の規定削除が実質的に行われておらず残っていると判断し、「構造的問題が解決されていない」と批判。一方、「合憲」判決を下した東京高裁では、「国会の是正の実現に向けた取り組み」と評価しています。

 一連の訴訟の高裁判決は4月末までに出揃い、原告グループは「選挙無効」以外の判決を上告する構え。最高裁は上告が出揃った段階で、15人の裁判官からなる大法廷で審理を開始、年内にも統一判断を示すとみられています。

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Q2013年7月の参院選時は最大格差4.77倍で、14年11月に最高裁にて「違憲状態」の判決が下っていますが、なぜ今回、福岡高裁は「違憲」判決を下したのでしょうか? また、参院選と衆院選でここまで格差の倍率に差があるのはなぜですか?

A違憲判決を下した理由は、正直わからない(笑)。衆院と参院でなぜこんなに倍率の差があるのかは選挙制度の違いだね。

 1票の格差は、判断が「合憲」「違憲」「違憲状態」の3種類に分かれていて、とても難しい問題。格差を1倍にしなければ本当の意味で平等とはいえないけど、現実的には無理。だから、2013年の公職選挙法の改正では、各選挙区の人口は、人口の最も少ない選挙区の2倍未満になっていなければいけない、としている。以前から国会は、裁判所から2倍以内に収める努力を求められていて、それを永続的にしているかどうかが判断の分かれ目なんだ。

 議員の数を減らしたり、選挙区を変えたりするのは国会議員にとっては死活問題。だから、「定数削減をする」ということには賛成するポーズをとっても、「どこの選挙区をどうやって削減するのか」など具体的な問題になると途端に反対してなかなか決まらない。そういう国会の状態を、決めるのが遅すぎるとして、福岡高裁は「違憲」にしたんだ。

 「1票の格差」は、人口の少ない地域の方が人口一人あたりの議員数が多くなるという状況から生まれる。衆院と参院の倍率の違いは、衆院の方が選挙区が小さく分けられ(小選挙区)、参院は選挙区が大きく分かれてるから。なるべく格差がないように小さく分けている衆院の方が格差は少ないんだ。


Q「一票の格差」をなくそうとする姿勢が判決を左右していますが、年内には下るという統一判断で、「違憲」「違憲状態」との判決であった場合、政府はどう動くでしょうか?

A今までも「違憲」や「違憲状態」はあったけど、そろそろ本腰入れて取り組まないと、「選挙無効」の判決を出されてしまうかも。

 今までは混乱も避ける意味で、執行猶予をつけて「選挙無効」の判決は最高裁で出されなかった。そこにあぐらをかいてきた国会は、改革を先送りにしてきた。次あたり国会がきちんとした姿勢を示さないと、しびれを切らして国民も怒るかもしれないね
(佐藤尊徳)

[参考:「『一票の格差』判断割れる 『0増5減』が焦点」(日経新聞朝刊2面 2015年3月26日)]

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