東証1部、2部上場企業に対する日経新聞の調査によると、独立性の高い社外取締役(株主と会社の中立に立てる人)を、7割の企業が導入することがわかりました。5割強だった2014年と比べ、大幅に増えています。
社外取締役の設置は、政府が成長戦略の一貫として進めていて、金融庁と東京証券取引所が、上場企業における企業統治の指針を示したコーポレートガバナンス・コードの適用が2015年6月に控えています。3月期決算の企業でも、社外取締役の導入はさらに増えると予想されています。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q企業の透明性を保つ役職としては、社外監査役というのも聞いたことがあります。社外取締役と社外監査役はどのように違うのですか?
A取締役は会社の経営そのもの。監査役はその取締役や、会計を監査するもの。社外が社内の違いだけで、やることは一緒だよ。
会社の経営の行方を決めて、動かしていくのが取締役。取締役会でいろんな話し合いや報告をするんだ。多くの会社では、社長が議長役になり、権限も大きい。その取締役がきちんと機能しているか、監視をするのが監査役。
社内取締役は執行も同時に行うので、社内の事情や事業に関してよくわかっている利点があるけど、ガバナンス(企業統治)上、相互監視が甘くなって、不祥事などが表に出ないなどの問題が指摘されている。だから、社外の取締役を入れるように制度上も変えたんだ。
監査役は最近、社内からの選任よりも、社外から選任されることが多い。常勤監査役と非常勤の社外監査役に分かれるけど、社外から人を呼んで、常勤監査役(任期4年)にすることが多いようだ。いずれも、株主総会で選任される。
Q上場企業では社外取締役を導入しようとする流れが進んでいるようですが、日本はアメリカやヨーロッパと比較して社外取締役の導入率が著しく低いようです。なぜでしょうか?
A基本的な考え方が違うからというのと、人材の数かな。
あのトヨタ自動車でも、2年前までは社外取締役がいなかった。入れたらそれがニュースになるくらい。
日本では、事情がわかっている社内の人が取締役と執行を兼任した方がスムーズだという考えだし、社長のお友達が社外取締役になり、結局はなあなあになって、本来のガバナンス機能が働かないのでは、と思われてた。
それから、一番大きいのは”経営のプロ”が日本には少ないということ。欧米では、いろんな会社を渡り歩いて、どんな業種でも経営できる人が多いけど、日本は圧倒的に少なく、社外取締役の適任者がいないんだ。
しかし、不祥事が出てくるたびに、社外取締役の設置の議論が出てきて、ガバナンス的にも社外の監視を入れようという機運が強くなってきた、ということだね。
(佐藤尊徳)
[参考:「社外取締役 7割導入 12月決算企業「複数」も3割弱」(日経新聞朝刊3面 2015年3月27日)]
[わかるニュース]
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