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政治
[平将明の“言いたい放題”]

ビジネスしやすい環境がイノベーションを促す

電子雑誌「政経電論」第19号掲載
2016年11月10日
読了時間: 07分30秒

2050年までに労働人口が3000万人減少するといわれる日本にとって、GDP減少の対策として期待されているのが、女性の労働参加、定年延長などの労働人口対策に加え、技術革新、いわゆるイノベーションによって労働生産性を上げる方法だ。しかし、それは今の日本で現実的な方法なのだろうか?
◆(公社)東京青年会議所の講演より

平 将明プロフィール平 将明(たいら まさあき) 1967年2月21日生まれ。早稲田大学法学部卒。衆議院議員(4期)自由民主党 選挙区:東京4区(大田区)。サラリーマンを経て家業を継ぎ、経営者として働く傍らで公益社団法人「東京青年会議所」理事長を務める。2005年、初当選し政治家に。自民党経済産業部会長、衆議院決算行政監視委員会理事、経済産業大臣政務官、衆議院内閣委員会理事、内閣府副大臣(第3次安倍改造内閣)などを歴任。

アベノミクスに組み込まれたイノベーション

 日本は1990年代前半にバブル崩壊してから経済が低迷し、「失われた20年」といわれてきました。そして需要不足に陥り、デフレがずっと続いてきました。そういったなかで経済成長もしませんから、学生や若い人たちがなかなか挑戦しづらい世の中になっていました。

 そこで出てきたのが"アベノミクス"です。自民党が野党に転落し、民間の知恵を生かして政策を作ろうということになり、民間有識者と議論を重ね政策を作っていきました。そして、マクロ経済の司令塔をつくり、「金融政策」「財政政策」「成長戦略」を統合的に運用して、日本経済を再生するということを政権公約としたのです。

 「第一の矢」といわれる金融政策は、消費者物価が+2%になるまで無制限に金融緩和する"異次元緩和"。「第二の矢」の機動的な財政政策では、政権交代してすぐに10兆円の補正予算を組みました。そして「第三の矢」の成長戦略の中味は、「自由貿易の推進」や「規制改革」などです。

 成長戦略の中で主役ともいえる「規制改革」は、農業や労働分野、ビザの緩和など、いろいろなものがあります。新たな需要を生み出しますし、イノベーションとの相性もとても良い。私が内閣府副大臣だったときは、地域を限定して規制緩和する国家戦略特区という政策オプションを地方創生の政策パッケージに組み込みました。

ビジネスができる環境作りが大事

 国家戦略特区の類型の中に「近未来技術実証特区」というのがあります。これは、自動走行、ドローン、AI(人工知能)、IoT、ロボット、遠隔医療、遠隔教育といったワクワクするような近未来技術の実装を集中的にやるために私が新しく作ったものです。

 この近未来技術実証特区のスキームは非常に優れていると思います。イノベーションが起き、その新技術を社会実装しようとすると大抵は既存の規制にぶつかるため、実装する前に規制改革をする必要が出てきます。そこで、大学や企業、地域からいろいろなアイデアを募集し、それを有識者と政務三役からなる近未来技術実証特区検討会議で精査し、必要と認めればわれわれチーム(検討会議)が規制省庁と交渉して、規制改革を進めるという仕組みを作りました。

 イノベーションが起きやすい環境というのは、イノベーションの結果生まれた技術を社会実装するときに、スムーズに社会にビルトインすることのできる環境ではないかと私は思います。先回りをして規制改革できれば、"イノベーションがビジネスと直結する"というイメージがわき、自然に人材もお金も集まってくるのではないでしょうか。

政治家がイノベーションに積極的にかかわる

 日本にもイノベーションの芽はたくさんあります。例えば、iPS細胞の分野などは日本が圧倒的に強い。

 メガカリオンという京都のベンチャー企業は、iPS細胞の技術で人工的に血液を作ることができます。ただ、原材料に血液を使わなければならない。でもそこには法律の規制があって、血液は原則、輸血に使うか、研究対象にしか使えません。

 そこで国家戦略特区の仕組みを使って、血液を原材料として使えるように規制改革しました。そもそも大阪を含む関西圏は国家戦略特区の医療特区でもあります。結果として何が起きてくるかというと、そのテクノロジーで献血に頼らない輸血の体制が構築可能になり、近い将来、安全な輸血用血液を世界に供給できるようになるでしょう。

 イノベーションにとって何がボトルネックかといったら、とにかく既存の「規制」、時代遅れの「規制」なんです。しかし、もし一民間企業であるメガカリオンが厚生労働省に相談しに行っても、役所の側も「こういう法律があるからダメです。」と言わざるを得ないし、それで終わりです。

 だからこそ、われわれ政治家(政務三役)が先頭に立って、企業や大学など民間セクターに代わって規制省庁と議論し、規制を改革するという仕組みをビルトインするのはとても効果的といえます。

産官学ではイノベーションは起きない

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