三井ホームの空と暮らす2階リビングの家「Lucas(ルーカス)」

写真/十河英三郎、三井ホーム

社会

三井ホームの空と暮らす2階リビングの家「Lucas(ルーカス)」

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時代の変遷とともに社会の在り方が変わっていくように、マイホームの在り方も価値観や生活の変化に合わせて変わっていくもの。ただ変わらずに追求され続けているのは快適さだ。「令和」という新時代における「快適な住まい」とはどのようなものだろうか。住宅大手、三井ホームで人々の生活意識や暮らし方を調査・研究し、商品開発に取り組む建築士にうかがった。

三井ホーム株式会社 商品開発部商品開発グループ長

山下将司 やました まさし

理工学部建築学科を卒業し、2000年に三井ホーム入社。大阪支店にて10年間住宅営業を務める。3年間のモデルハウス店長を経験し、2010年より商品開発部現職。2016年は米カリフォルニア州の当社グループ会社・MHAコンストラクション社に兼務出向し、2×4工法の原点である北米住宅で生活した経験を生かし、商品開発業務に日々取り組んでいる。一級建築士。

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世代で異なる家事に対する価値観

夫は外で働き、妻は家庭を守るべき、というのは遥か昔の観念。現代では共働き世帯の数は片働き(専業主婦)世帯を圧倒し、男女平等、女性の社会進出は常識として認識されている。そうした価値観の変化に合わせて、「住まいの在り方」も変化してきていると語るのは三井ホームの一級建築士・山下将司さんだ。

「当社シンクタンクである『住まいと暮らしの研究所』が行った市場調査によると、第1次取得者層(初めて住宅を購入する世帯)であるミレニアル世代は過去の世代と比較して、さまざまな点において住まいに対する価値観が違うことが判りました」(山下さん・以下同)

ミレニアル世代

アメリカでは1981~1996年に生まれ、2000年前後に成人あるいは社会人になった世代。日本では平成初期(1989~1995年)に生まれた世代を指すこともあるが、定義はまだはっきりとしていない。主な特徴としては幼少期から通信やデジタル機器の恩恵を受けたデジタル・ネイティブであり、価値観や消費行動も前世代と大きく異なる点が多い。 »もっと詳しく

「彼らが今の住まいに対して、最も不満に感じているのは『洗濯』でした。干すのが面倒で、畳むのも面倒。50代と比較し、室内干しスペースや衣類乾燥機が欲しいという要望が約2倍でした」

ほかにも食事においては積極的な「作り置き料理や冷凍食品の利用」、夫婦で帰宅時間や就寝時間が異なる“時差生活”のため夜寝ているときにドアの開け閉めの音が気になる「クロークの場所への不満」、家族が浴室を利用する際に「洗面所が同時に使えず不便」、といった声が挙げられたという。いずれもそれまでの世代にはあまりなかったものだ。

「これまでも家事や収納は住宅設計の中で必ずテーマに挙がってきていました。昔は専業主婦世帯の割合が高く、そのイメージで家事の動線を想定していましたが、今や共働き世帯の割合が65%を超え、ミレニアル世代を中心とする世代にとって家事は夫婦で公平に分担するものということが普通になっています。そうなると、キッチンのすぐそばに洗濯機があったりクロークがあったりといった、これまでの一人で家事を完結させるための動線ではないものが求められるようになります」

三井ホーム株式会社 商品開発部商品開発グループ・一級建築士 山下将司さん

ミレニアル世代は間取りや最新設備にも新しい価値観を持つ

間取りについてはミレニアル世代では新しい価値観が芽生えつつあるという。

「約半数のミレニアル世代が、子ども部屋と主寝室を一部屋にし、将来的に間仕切りたいと考えています。特に戸建て検討者に限ると6割以上がそう考えています。上の世代と比較して、個室に対するニーズが高くありません」

初めから部屋数を確保するのではなく、広い空間で子育てをして、個室が必要になったらリフォームや可動式の家具などでフレキシブルに対応したいと考えている人が増えているのだ。

ほかに、ZEHについても、50代はまだ半分以上がソーラーパネルなどの搭載に躊躇しているが、ミレニアル世代は6割が設置に積極的であり、家事と同様に価値観の差異が出る結果となった。

ZEH(ゼッチ)

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。省エネ、創エネ、断熱の3要件を一定基準満たし、年間のエネルギー収支が正味おおむねゼロになる住まいのこと。

家事や間取りについては世代による価値観の違いが浮き彫りになる一方で、別の点では共通する部分も見られたという。

「自宅におけるアウトドアライフについては世代にかかわらず、8割が庭は必要ない、狭くてもいいという回答でした。むしろ、リビングにつながる『広い庭』よりも『広いバルコニー』を求める声が約2倍あり、現代はクリーンなアウトドア空間が求められています」

ミレニアル世代の不満や要望に寄り添って生まれた新しい住宅

これらの結果を受けて、山下さんら開発チームがプランニングして生まれた住宅が「Lucas(ルーカス)」だ。特に空間構成と家事に対する不満の改善に着目したという。

三井ホーム Lucus外観
横浜市にあるtvkハウジングプラザ横浜内にあるモデルハウス。玄関回りのウッディな外観と広いスカイラナイが目を惹く。

外観は大きな片流れ屋根が特徴的なデザイン。屋根は中に断熱材をサンドイッチ状に挟み込み高い断熱性能が自慢の、三井ホームオリジナルの「ダブルシールドパネル(DSP)」 を採用しており、夏は暑い日差しをカットし、冬は暖かい空気を逃がさない。大容量のソーラーパネルも搭載でき、ZEHにも対応しているのが大きな特徴のひとつだ。

家族が集まりやすい、快適さを追求した2階リビング

「Lucas」の一番の魅力は、2階にリビングを設け、リビングと一体感のある広いバルコニーを併設することで開放感のある空間にしたこと。

「一般的にリビングは、断熱性や、ゲストを招き入れることを考慮して1階に配置されることが多いのですが、DSPや健康空調(スマートブリーズ)など当社オリジナル技術により、開放感のある高い天井に加え、広いバルコニーとの一体感も感じられる快適で魅力的なリビングということで、あえて2階に配置しました。ゲストを招くときは、玄関のすぐ横に階段をレイアウトしているので、直接リビングに案内することができます」

三井ホーム Lucus2Fリビング
手前が階段。階段を上った先に現れる広々として明るい空間に思わず声が上がる。

三井ホーム Lucus間取り

家の中で最もくつろげる場所であるリビングは、あえて階段からの動線を遠くしている。

「田の字型のゾーニングで、オンとオフを緩やかにつなげることをイメージ。階段から近い場所にはアクティブゾーンとしてテレワークができるワーキングスペースとダイニングキッチン、階段から最も遠いゾーンにオフの空間としてリビングを配置しています」

リビング横の階段の先には屋根裏収納もあり。また、階段の下には隠れ家のような小さな収納スペースがあり、小さな子どもが喜びそう。

また、キッチンはテーブルの一部がカウンターに埋め込まれているのが特徴的だ。

「配膳動線をコンパクトにした設計で、“ファストカウンター”と名づけました。平日の忙しいなかでの食事をイメージして、作った料理を振り返ってパッと出せて、そのまま座って食事もできるようにしています。

ほかにもキッチン奥のパントリーには冷蔵庫だけでなく冷凍庫やウォーターサーバーの専用スペース、食品庫を設け、ネットショッピングの活用が進んでいることも考えて段ボール置き場も想定しています」

ファストカウンターを備えたダイニングキッチン。

そして、ワーキングスペースとリビングに隣接するバルコニー「スカイラナイ」は「Lucas」において、最も重要な要素のひとつだ。

「『スカイラナイ』によって、2階空間全体が内外のつながりを感じさせるとともに開放的になります。また、1階に庭を設置するよりも2階の方が外からの視線を適度に遮りやすく、リラックスしやすいのも利点です」

三井ホーム Lucusスカイラナイ
「スカイラナイ」。「ラナイ」はハワイ語で「半戸外空間」の意。屋根部分は四角く抜いてあるので、晴れた日は見上げると青空が、夜は星空が切り取られた感覚が楽しめ、心地良い。床はデッキ材になっていて雨が降ったときも乾きやすくなっている。

ワーキングスペースは屋根まで目いっぱい高さをとった勾配天井が開放的。家族の気配を感じながら勉強や仕事ができる。

「ワーキングスペースの横には家族の収納を一カ所にまとめるファミリーストレージも設け、片づけが楽になるようにしています」

散乱しがちなアイテムはファミリーストレージに集約して、生活空間をすっきりさせる。ロボット掃除機の充電台の設置個所を設けているのが現代的だ。

共働き世帯の住みやすさを集約させたプライベートスペース

1階はプライベートスペースになっており、キッチン以外の機能を集約させた“家事ラク”空間でもある。

「ベッドルームは約20畳あり、ベッドはクイーンサイズとシングルをつなげることができるハリウッドスタイルで親子が川の字で寝ることを想定しています。部屋は子どもの成長に合わせて、リフォームなどで分割できるなどフレキシブルに対応可能な設計にしています」

ベッドルームに隣接しているのがファミリーランドリーとファミリークロークだ。特に浴室とセットのランドリーは従来の洗面所とは一線を画した空間デザインとなっている。

7.3畳ある広いファミリーランドリー。手前でベッドルームとつながっている。

「ファミリーランドリーは衣類乾燥機だけでなく室内物干しスペースや作業台も配置しているので、洗って、干して、畳むといった洗濯の一連の動作を集約し、家事効率が上がるようにしました」

ファミリークロークは主に家族全員の衣類を1カ所にまとめ、効率良く収納・整理できるようにした部屋だ。

5.1畳のファミリークローク。“面”で家族ごとに割り当てることを想定。

「ベッドルームからだけでなく玄関側の廊下から入ることもできる2way動線となっているので、夜遅く帰ってきても、先に寝ている家族を起こさずに着替えてからベッドルームに入ることができるようにしました」

ほかにも、ドレッシングルームとは別にランドリーの横に洗面ボウルを独立設置。身だしなみの場と家事の場を分けることで朝の忙しい時間帯も同時利用がしやすくなっている。

ドレッシングルーム。洗面ボウルが2つ並ぶケースも多いが、「Lucas」は場所を分けることを提案。

「専業主婦の時代は夫が出かけてから洗濯を始めることができましたが、今は忙しい時間帯が一緒で、洗濯も身だしなみも重なってしまう時代です。そこをゾーニングで解決しようと思いました」

三井ホーム Lucus間取り
間取り全体図

ミレニアル世代にふさわしい新しい住み心地

帰宅したら1階で手を洗い、ファミリークロークに荷物を置いて着替え、2階に上がって家族で憩いの時間を過ごす――。

家事と暮らしやすさに快適な動線が引かれた「Lucas」において、欠かせないのが健康空調システム「スマートブリーズ」だ。

「DSPとも相性が良い『スマートブリーズ』は冷房、暖房、換気、空気清浄、脱臭、加湿、除湿の1台7役を担い、快適な温度と湿度を24時間365日保ってくれます。弊社のお客様の約6割が導入し、皆様から高い評価をいただいています」

ほかにもデジタル・ネイティブであるミレニアル世代を意識して、IoTを生かした設計も可能になっている。例えば、スマートスピーカーでカーテンの開け閉めや照明の切り替えを操作できたり、インターフォンと連動してスマートフォンやタブレットの画面から訪問者の顔を確認できたり、さまざまなシチュエーションに合わせて多彩な機能が想定されている。

IoT

「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳される。スマートフォン、タブレット、テレビ、デジカメ、スマートスピーカーなど、さまざまな「モノ(物)」がインターネットにつながり、情報交換や相互に制御する仕組み。 »もっと詳しく

「Lucas」に象徴されるように、ミレニアル世代が求める住まいの在り方は過去の世代と比較して大きく変わりつつある。

モノ消費よりコト消費重視のミレニアル世代が“ピンとくる”住まい

2018.4.20

「今は3人以下の世帯が日本全体の8割になろうという時代です。家事の動線や求められる設備もひと昔前から大きく変わりました。3LDK、4LDKといった部屋数で家を表現する時代も終わりつつあると感じます。今や大きな空間で家族がそれぞれの存在を感じながら、快適に過ごす、そういう住宅が求められているように思います。

これからは、個室を必ずしも最初から設けるものではなくて、フレキシブルな空間を家族の変化に合わせて対応していくような設計が求められるのではないでしょうか。そういった時代背景や新しい価値観に寄り添いながら、弊社の精神でもある“暮らし継がれる家”を実現していきたいと思います」