低金利基調のなかで利回り高いCLOに投資集中
日本銀行が10月24日に発表した「金融システムレポート」の一節が金融界の注目を集めている。第2のサブプライムショック(サブプライム住宅ローン危機)の地雷原となりかねないと警戒されている金融商品であるCLO(ローン担保証券)について、「邦銀のCLO投資残高は、一部先を中心に近年増加しており、足元では邦銀の海外クレジット投資全体の約20%に及ぶ上、グローバルなCLO市場残高に対する割合も約15%と相応の水準に達している」と警告を発したためだ。
つまり、3メガバンクと農林中央金庫、ゆうちょ銀行を中心にした日本の金融機関のCLO投資残高が過大ではないかと懸念しているのだ。この点について金融庁も注視しており、当該金融機に対して、CLO投資のリスク管理に関する検査も実施したほどだ。
CLOは、投資適格未満の信用力の低い企業に対する貸出、いわゆるレバレッジド・ローンを中心に束ねて証券化した金融商品で、2009年のリーマン・ショックで問題となったCDO(債務担保証券)の一種だ。信用力の低い企業向け貸出を束ねているため利回りが高く日本の大手銀行も購入している。
全国銀行協会の髙島誠会長(三井住友銀行頭取)も9月19日の記者会見で、「昨今の低金利環境が長引くなかにおいて、比較的利回りの高い外債、あるいはCLOなどの海外クレジット投資が増加基調にあることは事実であろう」と指摘した。
米国のレバレッジ・ローンの残高はこの10年でおよそ2倍に増加し、CLOの年間発行額も2018年に過去最高を更新したが、最近では、レバレッジド・ローンの貸付先企業で、自己資本に対する借入金の割合を示す「レバレッジ比率」が上昇するなど、質の劣化が懸念され始めている。CLOの元になっている貸出の焦げ付きリスクが高まっているわけで、不良債権化することになれば、CLOもデフォルトする可能性が高い。
気をつけていれば大丈夫、なのか?
とはいえ、日本の金融機関もCLO投資には十分に気をつけているようだ。「CLOの投資では、最も信用力の高いAAA(トリプルA)の格付けの商品に絞って購入しているほか、投資に当たっては商品スキームについて入念なデューデリジェンス(資産査定)を行い、裏づけとなっているローンについてもモニタリングを継続して実施している」(メガバンク幹部)という。
また、いわゆる「リスク・リテンション規制」も各国で導入されている。同ルールは銀行が証券化商品を保有する場合は、証券化商品を組成したオリジネーターが自ら原資産の5%以上を保持しなければ、原則としてリスク・ウェイトが3倍に引き上げられる規制で、粗悪なCLO乱発の抑止力になっている。
それでも市場が混乱した場合、まず最初にデフォルトしかねない危うい商品であることには変わりはない。CLOが第2のサブプライムショックの地雷原にならなければよいのだが……。リーマン・ショックの教訓は生かせるのか、邦銀の学習効果が問われている。
すずき(政経電論編集)
ひとつ気になるのは、CLO(ローン担保証券)は経済的にどんな利益を生んでいるのか、ということ。
2019.10.31 15:13