菅原経産相に続き河井法相も “菅官房長官側近大臣”立て続けに辞任

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菅原経産相に続き河井法相も “菅官房長官側近大臣”立て続けに辞任

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菅原一秀前経済産業相、河井克行法相が「政治とカネ」の疑惑を報じられ、立て続けに辞任に追い込まれた。2人はともに安倍政権の屋台骨である菅義偉官房長官の側近。人事の失敗で菅氏の求心力が低下すれば、政権の基盤に影響を与える可能性がある。

“カニ・メロン”の菅原前経産相、お粗末過ぎるカネの管理

公職選挙法違反の疑いを指摘されていた菅原前経済産業相が、就任からわずか1カ月半で辞任に追い込まれた。疑惑は10月17日に行われた地元有権者の通夜に公設秘書が出席し、2万円の香典を渡したというもの。週刊誌には内ポケットから香典を取り出し、受付に座る関係者に渡す秘書の様子がはっきり写されていた。

「任命責任は私にあり、国民の皆さまに深くおわびを申し上げる」。10月25日、菅原氏の辞表提出後、安倍晋三首相は記者団にこう話した。閣僚の辞任は東日本大震災の復興をめぐる問題発言で五輪担当相を辞任した桜田義孝氏以来。

政治家が地元有権者の通夜や葬式へ香典を持っていってはいけないというのは、政治や選挙にかかわる者にとってはイロハのイ。公職選挙法は現職の議員や候補者が選挙区内の人に“寄付”する行為を禁じており、葬式での香典や結婚披露宴におけるご祝儀などはこの寄付にあたるからである。寄付が禁止なのは有権者の買収につながるからだ。

総務省はホームページで、「選挙の有無に関わらず、政治家が選挙区内の人に寄附を行うことは、名義のいかんを問わず特定の場合を除いて一切禁止されています。有権者が求めてもいけません。冠婚葬祭における贈答なども寄附になるので、注意してください」と説明。但し書きとして「政治家本人が結婚披露宴、葬式等に自ら出席してその場で行う場合は罰則が適用されない場合があります」と付け加えている。

つまり、寄付は禁止だが、常識の範囲内の「会費」を払うことは問題ない。なので政治家本人が結婚披露宴に出席して飲み食いし、会費相当の額をご祝儀として払うのはセーフ。政治家本人が葬儀に出席して香典を渡すのもセーフだが、ご祝儀や香典の額が常識の範囲を超えて高額だったり、秘書などが政治家の名義で渡したりするのはアウト。今回は秘書が2万円の香典を渡したと報じられているが、事実であれば完全に違法行為である。

菅原氏は「後日行われた葬儀に自ら出席して香典を渡し、通夜で秘書が渡した香典は返してもらった」と説明しているが、報道されることがわかって慌てて回収したとみられる。菅原氏は秘書に厳しく接することで有名なので、「秘書が香典を渡していたと知らなかった」という説明も疑わしい。

選挙区の厳しさから染みついた買収体質

そもそも、菅原氏は問題が発覚する直前に、同じ週刊誌で「有権者に高級メロンなどの贈答品を送っていた」と報じられたばかり。大臣としての資質に注目が集まるさなかに、秘書に香典を持って行かせるなどお粗末極まりない。元秘書などによると、菅原事務所では普段から秘書が地元有権者の葬式に香典を持っていったり、供花を出したりするのが常態化していたという。大臣の辞任は当然だが、国会議員としての資質にも疑問符が付く。

菅原氏は早稲田大学卒業後、大手商社を経て練馬区議会議員に当選。都議を経て2000年に衆院選に初挑戦するが、民主党の現職に敗れて落選した。再び挑戦した2003年の衆院選で初当選するが、自民党に逆風の吹いた2009年の衆院選では小選挙区で落選。比例復活するという憂き目を見た。選挙区の厳しさから、次第に買収体質が染みついていった可能性がある。

菅原氏の辞任により、ポスト安倍の有力候補である菅義偉官房長官にも批判の目が向いている。菅原氏は菅官房長官の側近中の側近で、今回の入閣も菅氏の後押しがあったからだ。菅原氏は過去にも政治とカネの問題や愛人騒動などを報じられており、「身体検査が甘かった」と批判の声が出ている。

菅氏は今回の騒動で当初は「過去のこと」と静観していたが、秘書の香典問題が明らかになると庇いきれないと判断。更迭に踏み切ったとみられている。ちなみに菅原氏の後任に就いた梶山弘志氏は、菅氏が“政治の師”と仰ぐ梶山静六元官房長官の長男である。

妻の公選法違反の疑いで河井克行法相が即辞任

ただ、菅氏にとってはさらに頭の痛い問題が浮上した。これまた菅氏の側近として知られる河井克行法相の妻で、今夏の参院選で初当選した河井案里氏の「公職選挙法違反」が31日発売の週刊誌で報じられたのだ。

報道によると、参院選で雇ったウグイス嬢に、法定の上限である1日1万5000円を超える、1日3万円の日当を支払っていたというのだ。領収書を1万5000円ずつ2枚に分け、1枚を「車上運動員報酬」として、もう1枚を選挙前の「人件費」として渡していたという。これが事実なら公選法の禁じる「運動員買収」にあたり、渡した方も受け取った方も罪に問われる可能性がある。買収が認められれば、仮に候補者本人が知らなかったとしても「連座制」が適用となり、当選が無効となる可能性もある。

週刊誌は河井法相の秘書が地元有権者にジャガイモを配っていた疑惑も指摘。河井法相は報道を受けて10月31日午前、安倍首相に辞表を提出。“菅側近大臣”が立て続けに辞任に追い込まれた。なお、辞表は即日受理され、後任には森まさこ元少子化担当相の起用が決まっている。

河井氏もかつて秘書への暴行疑惑などが報じられながら、菅氏が大臣にねじ込んだ経緯がある。与党内では菅氏への批判が高まるのは必至で、ポスト安倍レースに影響を与える可能性がある。