【衆院選結果】与党勝利も大物敗北目立つ 維新躍進で国会運営は潤滑に

写真:ロイター/アフロ

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【衆院選結果】与党勝利も大物敗北目立つ 維新躍進で国会運営は潤滑に

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衆院選が10月31日に投開票され、自公連立与党が293議席を獲得して勝利した。与党は公示前より議席は減らしたものの、「絶対安定多数」といわれる261議席を確保。自民党単独でも過半数を維持した。発足直後の岸田政権にとっては追い風となるが、甘利明幹事長が小選挙区で敗北し、役員交代確実となるなど不安要素もある。また、高くなると見られた投票率は55.93%程度で、過去3番目の低さだった。

自民の大物敗北・落選相次ぐ 大阪では1勝もできず

報道各社の開票速報によると、自民党は公示前より15減の261議席。注目された単独過半数(233議席)を大きく上回った。安倍政権下で圧勝した前回2017年からの議席減は“織り込み済み”で、どこまで減らすかが注目だったが、予想以上の健闘といえそうだ。前回に比べて小選挙区で29議席減らしたが、比例代表で6議席上積みした。

自民党 獲得議席前回比較

  • 公示前議席:276
  • 選挙区:218 → 189
  • 比例代表:66 → 72
  • 獲得議席:261

ただ、自民党が圧勝した過去3回に比べると勢いには欠ける。神奈川13区から立候補した甘利明幹事長が小選挙区立憲民主党の新人に敗北。比例代表で復活当選とはなったが、現役幹事長が小選挙区で敗れるのは史上初めてとなった。東京8区の石原伸晃元幹事長は小選挙区で立憲民主の新人に3万票以上の差で敗北。比例復活すらかなわなかった。石原氏は1996年の小選挙区制度導入以降8回連続で同選挙区から当選しており、初めての落選。派閥会長の落選も異例だ。平井卓也前デジタル相など閣僚経験者の小選挙区での落選も相次いだ。

大阪では全19選挙区のうち、公明党の候補がいる4選挙を除く15選挙区に候補を立てたが、日本維新の会の候補に全敗。1955年の自民党結党以来、初めて大阪の選挙区で一人も当選することができなかった。

連立を組む公明党は3増の29議席。小選挙区に擁立した9人全員が当選し、比例代表でも21から2議席上積みした。投票率が低調となるなか、強固な支持基盤を背景に安定した戦いを進めた。

自民党が単独過半数を割り込むと連立を組む公明党の影響力が強まり、国会運営等に一定の影響が出ると見られていたが、与党内のパワーバランスは当面、変わらないこととなる。

立民は比例伸び悩み議席減、維新が大きく躍進

一方の野党は立憲民主党が109議席で、公示前より13減らした。報道各社の事前調査では「140議席前後」との予測もあったが、大きく割り込んだ格好だ。選挙区では共産党などとの選挙協力も奏功して競り勝ったところもあるが、比例代表が伸び悩んだ。

前回衆院選では旧民主党系の野党が分散したため単純比較は難しいが、前回衆院選では立憲民主と希望の党の2党で比例の獲得議席数が69だったが、今回の立憲民主は39議席。枝野幸男代表は目標に掲げた政権交代について「足腰を強くしないとたどり着くことはできないと痛感した」と硬い表情で語った。

立憲民主では大物の苦戦も目立った。枝野代表自身も自民党候補と接戦となり、当選確実が報じられたのは深夜。小沢一郎氏や中村喜四郎氏といった当選回数が10回を超え、強固な地盤を持つ大物議員が小選挙区で敗北。地名の高い辻元清美副代表は比例復活もかなわず落選した。

勢いが目立ったのが日本維新の会だ。大阪で候補を擁立した15選挙区ですべて勝利。兵庫6区でも自民党候補に競り勝った。日本維新の会が大阪以外の小選挙区で勝利したのは初めて。比例代表では25議席を獲得。地盤の関西以外でも支持を広げ、南関東ブロックで3議席、北関東と東京、東海、九州で2議席、東北と北陸信越、中国、四国でも1議席獲得した。

総獲得議席数は公示前より30増の41議席。公明や共産を抜いて第3党に躍り出た。衆院において単独で法案を提出できる21議席を確保したため、今後、存在感を増す可能性がある。

日本維新の会 獲得議席前回比較

  • 公示前議席:11
  • 選挙区:3 → 16
  • 比例代表:8 → 25
  • 獲得議席:41

国民民主党は3増の11議席。玉木雄一郎代表や前原誠司元外相ら小選挙区に立候補した6人全員が当選。比例代表でも5議席を獲得した。

共産党は2減の10議席。小選挙区では沖縄1区で前職が議席を守ったが、比例代表では2減の9議席にとどまった。今回の衆院選では立憲民主などとの候補者調整により多くの選挙区で候補を取り下げたが、共産党にはメリットが無かったのが明白。今後の国政選挙における野党共闘の枠組みに影響を与える可能性がある。

れいわ新撰組は山本太郎代表が立候補した比例東京ブロックなどで3議席を獲得。社民党は沖縄2区で議席を獲得したが、比例代表はゼロだった。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」は議席を獲得できなかった。

自民党としてはギリギリの結果だが、国会運営は潤滑に

岸田文雄首相にとっては就任間もないタイミングで臨んだ初めての国政選挙をなんとか乗り切った格好だが、痛いのは甘利幹事長の小選挙区敗北だ。甘利氏は「進退は(岸田)総裁にお預けする」と語ったが、党内で責任論が噴出しかねないため交代が濃厚。安倍晋三元首相や河野太郎前副総理に近い甘利氏が党の中枢から去ることで、政府・与党内のバランスが崩れかねない。後任を誰にするかも悩ましい。

ただ、国会運営という意味では今回の選挙結果は政権にとってかなりの追い風。与党で絶対安定多数を確保した上、対決姿勢の立憲民主が議席を減らし、「是々非々」をモットーとする保守系の維新が議席を大幅に増やしたからだ。

維新の躍進は憲法改正議論にも影響を与えそう。与党や維新、国民民主など憲法改正に前向きな勢力が国会は次に必要な総定数の3分の2(310議席)を超えたからだ。岸田首相は9月の総裁選で自民党の改憲案について「総裁任期中の実現を目指す」と意欲を示したが、具体的な内容については党内や公明党に異論が根強い。議論は進展する可能性があるが、実現の見通しについては不透明だ。

NHKによると、投票率は55.93%前後になる見込み。過去最低となった2014年の52.66%、2017年の53.68%に続いて、過去3番目に低かった。