経済

メガバンクとメガ地銀の狭間で揺れるりそな銀行

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2003年、りそな銀行に2兆円弱の公的資金が注入された。実質国有化である。足利銀行は破綻処理をして、りそなは公的資金注入ということで、その是非が議論されていたが、国への還元益があったので、ひとまず金融庁は胸をなで下ろしているであろう。しかし、公的資金返還後の収益モデルがよく見えない。今後を占ってみた。

公的資金完済のめどはついたけれども

「来年には公的資金を完済できるだろう」りそな銀行の関係者はこう指摘する。りそな銀行の持ち株会社であるりそなホールディングス(HD)は7月30日、公的資金(優先株)の9,800万株(元本ベース1,960億円)を約2,350億円で買い入れ消却した。差額となる389億円が国の利益となった格好だ。この返済でピーク時に3兆1,280億円あったりそなHDの公的資金は残り1,280億円となり、国の議決権も消滅した。経営の自由度は格段に高まる。収益力からみて来年に一挙に返済に動いてもおかしくないというわけだ。

しかし、りそなHDの悩みは尽きない。公的資金を返済した後のビジネスモデルが描き切れていないためだ。りそなHDは国有化にいたる過程で海外撤退している。しかし、主要な取引先である中小企業の海外進出が活発化するなか、そのサポートを強化するためには、海外の支店や現地法人が不可欠。公的資金を返済した後、いの一番に着手すべきは海外支店・現地法人というのが共通認識となっている。

だが、海外に支店や現地法人を設立した場合、ほかのメガバンクと同様、国際的に展開する銀行に課される厳しい自己資本比率規制の対象になり、いまだ資本の余力が乏しいりそなHDにとっては難題となる。むしろ、国内銀行としてとどまり、国内の中小企業や個人を深堀していく方が得策との判断もありうる。

収益拡大の為に海外進出はしたいのだが…

その試金石とみられる海外の拠点展開にりそなHDが本腰を入れ始めた。10月に公的資金の注入を受けた2003年以降で、初めてベトナムのホーチミンに駐在員事務所を設置する。また、6月にはカンボジアのパブリックバンクと業務提携しており、2014年度内にはミャンマーの銀行とも業務提携する方針で、準備を進めている。

すでにりそなHDは、上海など4ヵ所に駐在員事務所を持ち、海外13行と業務提携を結んでいるが、さらに拠点拡充や提携先拡大を加速することで、中小企業の海外展開のサポート力を高めていく戦略を描く。現在、りそなは海外進出している中小企業約12,000社と取引があるが、この基盤を底上げしたい考えだ。

りそなは公的資金を受けるまで、ピーク時には海外に114ヵ所もの拠点を持ち、海外融資残高は約7兆円を誇った。しかし、海外撤退とともに広範な取引基盤は流出を余儀なくされた。その回復こそがりそな復活の象徴となる。

金融庁もりそなの海外展開を後押しする。中小企業金融の充実のためには、公的資金が残る銀行であっても海外拠点を設置することを容認する姿勢に転じた。しかし、それはあくまで駐在員事務所や海外銀行との提携に限られている。支店設置となれば自己資本規制上、グローバルな銀行規制に格上げしなければならず、資本増強が不可欠となるためだ。資本政策が改めて問われることになる。

国の次は物言う株主が大株主に

その資本政策で見逃せない動きがあった。りそなHDの公的資金の返済を助けた謎の投資家が、米国の著名投資家デイビッド・アインホーン氏が率いる物言う株主「グリーンライト・キャピタル」であることが明らかになったのだ。

りそなHDは2月3日に、東京証券取引所の立会時間取引の一種である「ToSTNeT-2」(終値取引)を使い、公的資金で注入された普通株式約3億2,000万株を買い戻す予定であったが、実際にりそなHDが買い戻した株式数は約6,672万株にとどまり、残りの約2億5,328万株を第三者の投資家が購入した。この投資家にグリーンライト・キャピタルが入っていた。グリーンライト・キャピタルはりそな株を1株547円で大量購入しており、「(公的資金の早期返済が見込まれ)同業他社に比べ割安」と判断した。

アインホーン氏はリーマン破綻を見越した空売りで巨万の富を得たことで有名。アクティビスト(物言う株主)としても名を馳せ、2013年には、米アップルに対し潤沢な手元資金を株主還元するよう要求し話題をさらったばかり。りそなHDとは「通常の投資家向け広報(IR)活動で過去に接触したきり」(りそなHD)で、いまのところ何らの要求を突きつけるという動きはないが、気は抜けない。

世界的なカネ余りを背景に、ヘッジファンドに大量の資金が流入しており、物言う株主として投資先企業に経営改革を求めるヘッジファンドも増えている。米ヘッジファンド・リサーチの調査によると今年3月末のヘッジファンドの資産残高は2兆7,016億ドル(約280兆円)に達する。その投資先として日本株が格好のターゲットになりつつある。「米国株が割高となるなか、ヘッジファンドがこぞって日本株に目を向けている」(市場関係者)というもので、ダニエル・ローブ氏が率いる米サード・ポイントはソニーの株主として映画や娯楽分野の分離を求めたのに続き、IHI株にも触手を伸ばしている。

りそなHDの大株主として浮上した物言う株主グリーンライト・キャピタルが、りそなの企業価値を高めるために、海外支店・現地法人の設置を要望してきたとき、りそなHDの経営陣はどう対応するのか……。 りそなHDは、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友といったグローバルに展開するメガバンク的生き方を指向するのか、地銀を糾合したような国内のメガ地銀にとどまるかの”究極の選択”が待ち構えている。