衆院補選・統一地方選、広島サミット、日銀総裁人事【2023年政治トピックス】

写真:つのだよし/アフロ

政治

衆院補選・統一地方選、広島サミット、日銀総裁人事【2023年政治トピックス】

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新年度予算案や重要法案を審議する通常国会が1月23日に召集され、国内政治の動きが本格化。2023年は4月に衆議院の3補選と統一地方選が行われるほか、5月には岸田文雄首相の地元、広島で国内7年ぶりとなるG7主要国首脳会議(サミット)が開かれる。内閣支持率が低迷するなか、首相が“人事権”や“解散権”を駆使して反転攻勢を図るかにも注目が集まる。

国会は防衛費増、原子炉規制等が焦点に

通常国会は1月23日に召集され、6月21日までの150日間にわたって論戦が繰り広げられる。政府は一般会計の総額が過去最大の114兆円超となる2023年度予算案のほか、感染症対策の司令塔組織「内閣感染症危機管理統括庁」の設置法案や防衛費増額に向け財源を確保するため「防衛力強化資金」を設置するための法案、原子力発電所の60年超の運転を可能にする原子炉等規制法改正案など60の法案を提出する。

防衛力強化や原発の活用をめぐっては立憲民主党をはじめとする野党が対決姿勢を強めるとみられ、2022年に引き続き旧統一教会問題や「政治とカネ」の問題をめぐっても政府・与党を追及する構えだ。

日銀人事、金融緩和を継続するか、修正を図るか

4月8日に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁の後任人事の行方も焦点となる。黒田氏は大規模金融緩和により安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」を支えたが、欧米との金利差が拡大して急激な円安を招いたとの批判も。日銀の正副総裁(総裁と副総裁)は衆参両院の了承を得なければならない「国会同意人事」の一つだが、与党は衆参両院ともに安定勢力を確保しており野党に配慮する必要はない。それよりも与党内で金融緩和を継続するのか、修正を図るのかで意見が割れており、円滑に人事案をまとめられるかが注目だ。政府は2月上旬にも人事案を提示する見通し。

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2022.12.6

4月の衆院補選と統一地方選で岸田政権が問われる

4月には3つの衆院補選と4年に一度の統一地方選が行われる。衆院補選は政治資金規正法違反の罪で略式起訴された薗浦健太郎氏の辞職に伴う千葉5区と、国民民主党の岸本周平氏が知事選に立候補したことに伴う和歌山1区、安倍元首相の死去に伴う山口4区の3つ。いずれも現職が強い地盤を保ってきた選挙区だが、現職不在に加えて衆院選の小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法の影響もあり、各党は候補者調整に追われている。

自民党は「全勝」を目指しているが、3区とも現時点で候補者は確定していない。現職の辞職のタイミング次第では衆院山口2区や参院大分選挙区の補選が同時に実施される可能性があるが、選挙結果次第では政権の求心力のさらなる低下もありうる。

与野党は統一地方選にも注力する。今年の統一地方選では北海道や神奈川、大阪など17道府県で知事選が行われるほか、東京と沖縄を除く45府県の議会選挙、政令指定都市では8つの市長選、17の市議選が行われる。地方議員の数が国政に直接影響するわけではないが、地方議員は国政選挙の「実働部隊」の側面を持つ。地方選の結果は国政選挙につながるだけに、与野党ともに準備に余念がない。

政権支持率を広島サミットで挽回したい岸田首相

2023年の政治日程で特に岸田首相の思い入れが強いのが広島サミットだ。サミットの国内開催は2016年の伊勢志摩サミット以来、7年ぶり7回目。広島は首相の出身地であり、被爆地でもあることから、首相は1月13日のアメリカ・バイデン大統領との会談で「核兵器の惨禍を2度と起こさないとG7首脳と発信したい」と意気込んだ。サミットに合わせて各国首脳と原爆資料館を視察する方向でも調整が進められている。

ロシアによるウクライナ侵攻で国際平和に注目が集まる時期でもあることから、首相はサミット開催を政権浮揚につなげる狙い。というのも岸田内閣は2022年7月の安倍元首相銃撃事件と参院選勝利を境に、支持率の低迷が続いているからだ。NHKの世論調査で2022年7月に59%だった支持率は2023年1月調査で33%まで下落。不支持率は21%から45%まで上昇している。支持率低迷の主要因は旧統一教会問題や閣僚らの政治とカネの問題だが、ずるずると批判され続けており反転攻勢のきっかけをつかめていない。広島サミットは政権浮揚につなげられる数少ないチャンスだ。

年内に解散・総選挙はあるのか?

一方の野党はサミットをきっかけとした解散・総選挙に警戒する。野党第一党の立憲民主党岡田克也幹事長は「今年の夏から来年のはじめぐらいの間に行われる可能性が高いのではないか。5月のG7広島サミットが終わればいつでもありうる」と指摘。100議席未満にとどまっている衆院勢力の大幅な積み増しに意気込む。

ただ、1月のNHK調査で政党支持率は自民党の38.9%に対し、立憲民主は5.7%。2022年参院選で勢いをみせた日本維新の会も3.4%にとどまっており、到底与党に対抗できる状態ではない。立憲民主と同じく旧民主党の流れをくむ国民民主党に至っては「与党入りを狙っている」とのうわさが根強い。支持政党なしとの回答は自民党の支持に並ぶ36.7%にのぼるが、それは現在の野党が無党派層の支持を取り込めていないことを意味する。

立民と維新は今年の通常国会で「共闘」することを決めたが、次期衆院選が次第に現実味を増すなか、選挙でも共闘したり、選挙区のすみわけを図ったりできるかが注目となる。

自民党内では「ポスト岸田の本命不在」と言われるが、ポスト岸田として名前の挙がる茂木敏充自民党幹事長、河野太郎デジタル担当相、高市早苗経済安全保障担当相らがどれだけ存在感を示せるかにも注目したい。また、急に岸田首相に批判の声をあげ、注目度が高まっている菅義偉前首相がこれからどういう動きを見せていくか。菅氏に近い二階俊博前幹事長の動きを含めて永田町内で視線が集まりそうだ。