永田町をにぎわす「自公国」連立構想 自民が隠し切れない2つの狙い

国民民主党の玉木雄一郎代表 写真:つのだよしお/アフロ

政治

永田町をにぎわす「自公国」連立構想 自民が隠し切れない2つの狙い

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自民、公明の連立与党に国民民主党が加わる「自公国」連立構想が永田町で取り沙汰されている。選挙区調整などハードルは高いが、それでも話題が絶えないのは自民党側に2つの“狙い”があるからだ。所属国会議員が370人を超える大政党、自民党が所属議員21人の国民民主を取り込みたい、その理由とは。

「自公国」連立構想を匂わせる“与党寄りの党首”

「飲み会や宴会で『一緒にやろう』といった話は数多くあった」。国民民主党の玉木雄一郎代表は9月26日の記者会見で、公式な打診は無いと前置きした上で、安倍政権の頃から自民党側からの接触が多数あったことを認めた。

9月2日の代表選で再選した玉木氏は、かねて「与党寄り」と評されてきた。2022年の通常国会では、2022年度予算案に賛成。国会対応で歩調を合わせていた立憲民主党日本維新の会から批判を招いた。主要野党が当初予算案に賛成するのは、1994年の日本社会党、新党さきがけ以来28年ぶり。社会党と新党さきがけはその後、自民党と連立政権を組んだのは歴史の通りである。

その玉木氏が前原誠司元外相との一騎打ちを制し、代表続投となったことで連立政権入りは一気に現実味を帯びた。9月中旬に内閣改造を控えていたこともあり、代表選の直後には一部メディアが「自民、国民民主党に連立協議の打診検討」と報道。具体的な閣僚ポストの配分も取り沙汰された。

9月13日に行われた内閣改造で、実際に国民民主の現職議員が閣僚に就くことはなかったが、国民民主の元参院議員で、党の副代表も務めた矢田雅子氏が首相補佐官に就任。自公国連立構想はなおも永田町でくすぶり続けることとなった。

自民の狙いは“連合”

自公で安定勢力を保持している自民党が、所属議員約21人(衆院10人、参院11人)、政党支持率も1~3%程度にとどまる国民民主を取り込みたい狙いは何か。1つ目は国民民主の支持団体である“連合”だ。

連合は「日本労働組合総連合会」の略称で、1989年に結成された日本最大の労働組合組織。連合の2023年9月付資料によると、繊維や医薬品業界などの組合員が所属する「UAゼンセン」(187万人)や自動車業界の「自動車総連」(79万人)、公務員で組織する「自治労」(73万人)など47の産業別組織で成り立っており、所属組合員数は合計699万人という。

かつては民主党の支持母体だったが、民主党分裂を経て、現在は立憲民主党国民民主党を支援。両党に組織内候補(※)を送り出しているが、自治労や情報労連は立憲民主、UAゼンセンや自動車総連は国民民主、といったように産業別で支持政党が分かれている。

※特定の組合や団体が組織票を投じる候補者

自民党は2012年の政権復帰以降、選挙では連戦連勝だが、野党の“敵失”によるところが大きく、各議員の後援会組織などは年々弱まっていると指摘される。その自民党にとって、組織力が強く、選挙経験も豊富な連合の組合員は魅力的だろう。ちなみに連合の所属組合員数約700万人は、2022年の参院選で公明党が獲得した比例での得票618万票を上回る。自民党内の自公国連立推進派は、連合と野党との結びつきが弱まっている隙に、連合に接近して組合員票の一部を取り込みたいと考えているのだろう。

味方といえども油断できない公明党へのけん制

自民党が国民民主の取り込みを狙うもう一つの理由は、連立を組む公明党へのけん制だ。

自民と公明が連立を始めて組んだのは1999年の小渕政権。当初は小沢一郎氏率いる自由党も含めた自自公連立だったが、自由党が保守党、保守新党と改称し、2003年に自民党に吸収されて以降は民主党が政権を担った2009年~2012年の約3年間を除き、常に2党で国政与党を担ってきた。

自民党議員にとっては、強力な組織票を持つ公明党との協力は魅力的な一方、憲法改正や安保法制などの議論で慎重姿勢を貫く公明党への不満は根強い。衆院小選挙区の「10増10減」をめぐっても、東京など一部の選挙区公明党が擁立を強く主張し、自民党との亀裂が深まった。そこで比較的保守色が強い国民民主を取り込むことで、公明党の発言権を小さくしたいというのが自公国連立推進派の狙いだろう。

自民党内で「反公明」の急先鋒と言われるのが、麻生太郎副総裁だ。「今の公明党の一番動かなかった“がん”だった、山口(代表)、石井(幹事長)、北側(副代表)等々の一番上の人たち。その裏にいる創価学会」。麻生氏は9月24日、福岡市内での講演で、2022年12月に閣議決定した安全保障関連3文書の改訂をめぐって、公明党幹部と支持団体である創価学会を痛烈に批判した。個人名を名指しして批判するのは極めて異例だ。

麻生氏は茂木敏充幹事長とともに、9月の内閣改造で公明党をけん制すべく国民民主を政権に取り込もうと画策していたが、公明党の強い反発により頓挫。その恨みから今回の発言が飛び出したとみられている。

ただ、連立構想の最大のハードルは選挙区調整だ。国民民主は衆議院だけでも10人の現職に加え、次期衆院選に向けて14人の後任予定者を発表済み。各選挙区には与党候補もいてこれまでも戦ってきたわけで、国民民主も譲りがたいが、与党にも譲る余地が小さい。今秋にも解散・総選挙の可能性があるなかで、候補者の調整がすんなり進むとは考えにくい。

次期衆院選が終わり、永田町が落ち着いたころにまた自公国構想はクローズアップされそうだ。