最終ゴールに「2060年で1億人」と「2050年代に実質GDP成長率1.5~2.0%」の2枚看板を掲げた点が少々気になる。目標が複数ではどうしてもその過程が複雑怪奇・非効率となり、結局「二兎追う者は一兎をも得ず」になりかねない。
総花すぎる「まち・ひと・しごと創生本部」の戦略
創生本部が作成した地方創生戦略の表(※)を見れば一目瞭然で、百花繚乱の印象が拭えない。「人口増加」「景気回復」は国家の根本的命題なので、関連する省庁もほぼ全部となるのはわかる。だが、ともすれば省利省略を際立たせた予算分捕りのための”草刈り場”に陥りかねない。
事実、観光振興などは先の「クールジャパン」から続けられているはず。また「地方大学の活性化」の文言もあるが、少子化無視で大学数の増殖に血道を上げた文科省による”経営難の学校の延命策”ではとの指摘も。加えて、「子育て」「地域振興」という旗印のもと、「○○会議」「××センター」なる機関・組織を続々と新設するようだが、これが事実上、各省庁の外郭団体=天下り先となる懸念も捨て切れない。 施設運営のための役人ばかりが増え、予算の大半が肝心の「子育て」「地域振興」の現場に届かないという、どこぞのNPO法人か災害募金の二の舞になる可能性もある。
いつか来た道の”バラマキ予算”…は避けたい
また、安倍政権の本懐はどうやら「産めよ増やせよ」のようだが、地方創生で人口増に転じたという好例など、お手本とすべき欧米先進国でもほとんど見かけない。人口減少に歯止めをかけた実例として注目されるフランスの場合、”母親”に対する徹底した社会保障の充実が功を奏したからで、しかもTFRが危機的数値に陥ることを見越し、早い段階から手を打ってきた結晶だ。もちろん積極的な移民受け入れ策もこれを援護射撃している。
地方創生が、いつか来た道の”バラマキ予算”にならなければいいのだが……。
「2020年問題」東京五輪という国家イベント後の反動
2015~2020年の経済効果30~50兆円、と楽観視される東京五輪だが、お祭り騒ぎ後の”リバウンド”を警戒する向きもある。公共投資の冷え込みは先の長野五輪でも経験済みで、地元建設・土木業者が多数潰れた。右肩上がりだった外国人観光客の波もストップ。内需だって急速に萎む。
1964年の東京五輪は高度経済成長をさらに加速させるブースターとなり、人口増加も後押しした。だが今回は状況がまるで違う。新規のインフラ整備は飽和状態で、逆に既存インフラの修繕費ばかりがかさむ。加えて人口も現在より200万人以上も減る。また、50歳代に達するバブル・団塊ジュニア世代の高賃金と”ポスト不足”、巨額の退職金支払いが企業を苦しめる。
果たして海外投資家は日本に大金を注ぎ込もうと思うだろうか。日本国債の格付けは下がり日本企業の株式も暴落、という筋書きもあり得そうだ。