振り込め詐欺やマネーロンダリング、暴力団融資問題などで銀行の自主規制はきつくなった。しかし、それで利用者の利便性が損なわれるのなら本末転倒。新たに法人登記をしても、銀行口座ができなければ法人としての取引は現実には難しい。起業しても手続きなど大変でさまざまな矛盾を感じたことはないだろうか。私の身に現実に起こった話で問題提起してみたい。皆さんもコメントして社会に提言していきましょう。
冷たいメガバンクの対応
銀行法とは「銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする法律」。日本大百科全書(小学館刊)に書いてある。銀行はれっきとした公共のインフラ機関である。だからこそ、不良債権を抱え潰れそうになっても公的資金で支えられているのだ。
2013年8月6日、私は「株式会社損得舎」を登記した。5月31日に会社を辞めたのに随分と時間がかかったのは、友人である風水の先生のアドバイスと、さまざまな人間関係の障壁があったからだ。まあ、人生にはいろいろある。産みの苦しみがあったからこそ、喜び勇んで、登記簿その他必要な書類をもってメガバンクの恵比寿支店に飛び込んだ。友人の厚意ですでに仕事をもらい、その請求書を出したかったという事情もあったからだ。
必要な書類を窓口に提出すると、「ホームページなどありますか? 今まで出した請求書はありますか?」と言われた。「は? 登記簿見れば登記したばかりなのはわかるでしょ? 登記と同時にホームページ作りますか?普通。請求書を出したいから、銀行口座を作ってほしいとお願いに来てるのに」心の中で愚痴った。そして「それって、本末転倒じゃないですか? 銀行口座を作ってから請求書を出すもんじゃないんですか?」とムッとして思わず口から出てしまった。「活動の実態がないと作ることができません」と機械的に窓口女性。「これから実態を作っていくんじゃないですか?」(私の心の声)。そして窓口女性は最後に「審査に1ヵ月くらいかかります」と言い放った。びっくりだ。1ヵ月もかかって何を調べるのだろうか? 損得舎という名前が反社会的勢力に見えますか? ペンのやくざと言われたことは何度かあるが……。
ちなみに以前、関東にあまり支店がないこの銀行(合併前)の営業マンが家に来た時、中学生だった私は、母に言われて口座を開設した。それ以来ずっとその銀行口座を使っているし、今回の資本金振り込みはこの口座を使っている。関係ないけどキャッシュカードは合併前の旧行のカードだ。調べればすぐにわかるだろうに。ひいきにしていたのにこの扱いにはかなりがっかりした。みずほの暴力団融資にみられるように、確かにマネーロンダリング、振り込め詐欺などの問題はあろう。しかし、”善良な”利用者の都合など考えもせず、審査に1ヵ月もかかるとは。このスピードの時代に、メガバンクは悠長でうらやましい限りだ。
とにかく”書類”がないと口座はできない
失意のもと、地元の信用金庫に駆け込んだ。話はよく聞いてくれた。翌日、担当の人から電話があり、事務所を訪ねたいということだった。日を改め、お越し頂いた。担当者様は開口一番「この登記簿の住所、間違っていませんか?」と言う。よく見ると、確かに一文字抜けているではないか(汗)。これも友人の厚意で間借りをさせてもらっている本社登記場所の住所が違っていた。急いで司法書士先生に、法務省に出向いて登記簿の変更届を出してもらった。一文字加えるのに印紙代が2万円と時間が一週間かかった(泣)。その後、担当者が「賃貸借契約書がないと口座は作れないのです」と丁寧に教えてくれた。私は「は? このように電話を引いて実態があっても?」と続けた。担当者様は「”書類(賃貸借契約書)”がないと駄目なんです。”書類”がないレンタルオフィスでは口座を作るのはもっと難しいのです」と”書類”を強調した。ビルのオーナーと友人の会社と私の三者間で賃貸借契約書を結ばなければならないとのこと。では、逆に書類さえ揃っていたら、実態がなくてもいいのか?と屁理屈をこねてみる。
私はここでいつものように記者魂に火がついた。「それはお宅の内規ですか? それとも当局(金融庁)の指導ですか?」と詰め寄り、「現場の人に言っても仕方がないけど、経産省をはじめ政府では新規事業の育成に力を入れている。これではその方針に逆行ではないか」と半ば八つ当たりだ。担当者様は「これは決まりでして……」と困り果てる。「口座を作って頂けるというのは有難いのですが……」と何とも歯切れが悪い。「だったら、作ってくれたらいいじゃないか」(私の心の声)。
うーん。金融庁が厳しすぎるのか。「では、事務所が借りられないようなお金のない人は会社を作れないじゃないですか。(資本金が)1円起業(正確には登記の印紙代が30万円弱かかるが)などと謳っているのに」と散々愚痴った後、「仕方がない。3者間の契約書は作りましょう。いくらここでごねてもらちがあかないから」と私は引き下がった。ちなみにビルのオーナーも友人の会社も本社は地方にあり、郵便のやり取りで印鑑をつかなければならない。さらに1ヵ月を要した。とほほ。
しかし、社会の矛盾を是正しなければこの職業をやっている意味がない(私怨のような気もするが)と感じた私は、旧知の国会議員、野田聖子自民党総務会長に電話した。「今から愚痴りに行きます。それから陳情に行きます」と。