預けた資金の最大25倍もの規模の取引ができ、レバレッジ(テコの原理)によってハイリターンを追求できるのが魅力のFX(外国為替証拠金取引)。つまり、少額の投資でも大きな利益を期待できるわけですが、それだけリスクも高くなるのがネックに。極力リスクを抑えながら、FXの少額取引で堅実に増やしていくという作戦は考えられないものでしょうか? 様々な角度から、その可能性を探ってみましょう。
最大25倍のレバレッジは魅力だがグッと我慢
FXは、外貨預金などと同じように、為替相場の変動が利益をもたらす金融取引です。しかも、外貨預金よりもはるかにスプレッド(為替手数料)が安い上、冒頭でも触れたように預けた資金(証拠金と呼ばれる担保)の最大25倍もの規模の取引が可能。少額の元手でもハイリターンを追求できるわけです。
スプレッド
例えば、「円→米ドル=111円」に対して「米ドル→円=109円」であるなど、同じ日の同じタイミングであっても、常に外貨の販売価格と買取価格には差があることは、海外旅行で外貨両替を経験した人なら知っているだろう。実は、この差は為替手数料で、スプレッドと呼ばれている。外貨預金では「円→米ドル→円」で1米ドルあたり2円のスプレッドが主流だが、FXではゼロコンマ以下の設定が当たり前。
最大25倍は大きすぎると考えた金融庁は、その倍率を10倍まで引き下げることを検討してきましたが、今年は実施を見送ることになりました。
これからもハイリターンを狙えるわけですが、相場の急変で一気に大きな損失を抱えるリスクを負うことも確かです。収益性だけでなくリスク面にも目を向ければ、レバレッジはせいぜい3倍程度にとどめておくのが賢明だといえるでしょう。
レバレッジ
レバレッジとは、人力で動かすにはとても無理な重さのものを動かせる“テコの原理”を意味する言葉。預けたお金の何十倍もの取引が可能なFXも「レバレッジ(テコの原理)を利かせられる」と表現する。レバレッジの倍率は、預けた資金の何倍に相当する取引が可能なのかを示す数値。
攻め時、休み時…初心者こそ戦略を立てることが大事
レバレッジを控えめにした上で、もうひとつ心掛けておきたいのは、「どのような局面で取引を行うか」という戦略を確立させておくことです。なかなか成果を上げられないという人は、得てして行き当たりばったりで戦略が不明確。
経験が浅い人でも比較的実践しやすいのは、トレンド(相場の方向性)が明確になっている局面だけに狙いを絞って、その流れに逆らわない「トレンドフォロー(順張り)」の取引に徹することです。
「トレンドフォロー」とは、トレンドが続くことを前提として仕掛けるトレードです。例えば米ドルに対して円安傾向が強まったと感じられる場面で、さらに円安が進むことを期待して「米ドル/円」の通貨ペアに買い注文を入れます。思惑通りに円安が進めば利益が発生しますし、逆に円高に転じた場合は潔くロスカットすれば、損失を小幅にとどめられます。
ロスカット
読みとは反対方向に相場が動いた場合に、再び流れが変わるのを期待して粘ったりせず、速やかに取引を決済して損失を小幅にとどめること。戦略なしのトレードでロスカットを繰り返すとジリ貧になりがちだが、狙いを絞っている場合は、読み通りに動いた局面で大きな利益を手にして挽回することが可能に。
それから、様々な通貨ペアがあって目移りしそうですが、最初のうちはニュースで頻繁に報道されて相場の推移がわかりやすい「米ドル/円」に的を絞るのが無難でしょう。こうして戦略を固めたら、さっそくトレードにチャレンジしてみたいところですが、まずは観察を続けて為替相場の特性を把握することが大事です。
FXは、日本時間の日中は比較的穏やかに推移することが多いのに対し、欧州や米国で取引が始まる夕方から夜間になると、にわかに動きが派手になりがちです。荒っぽい動きで方向感が定まらない局面では手を出さず、トレンドが明確になった局面に狙いを定めましょう。
昔から投資の世界には、「休むも相場」という格言が存在していますから。
重要指標の発表と要人の発言を注視! 便利なツールも活用せよ
また、為替が大きく動く可能性のあるイベントにも注目しておきましょう。米国の雇用統計やFOMC(連邦公開市場委員会)、日本銀行の金融政策決定会合などがその代表例です。
雇用統計
米国における雇用の情勢を調査した経済指標で、同国の労働省が毎月第1金曜日に発表している。失業率や非農業部門の雇用者数、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数などの業種別雇用者数、週平均労働時間、平均時給など、詳細に渡るデータの推移がわかる。それらの中でも特に金融市場が注目しているのは、失業率と非農業部門雇用者数の変化。それらが市場における事前予想よりも高いか低いか(多いか少ないか)が為替相場にもインパクトを与えがちだ。雇用統計の推移は、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策にも少なからず関係してくる。
FOMC(連邦公開市場委員会)
FRB(連邦準備制度理事会)による金融政策について協議する会合で、景気や金融市場の動向を踏まえて追加利上げの是非などを議論したうえで方針を決定する。米国で利上げに動けば、日米間の金利差が拡大する(ゼロ金利の日本円よりも金利が高くなっている米ドルのほうが魅力的になる)ことから、米ドル高・円安が進みがち。なお、日本におけるFOMCに該当するのが日本銀行の金融政策決定会合。
日程が定まっているイベントに加えて、突発的な要人の発言にも要注意。特に足元では、北朝鮮問題という地政学リスクが低下する一方で、米中の貿易戦争をめぐるトランプ大統領の一挙手一投足に為替市場が注目しているようです。
そういった発言などをきっかけに流れが一転することも少なくありませんし、せっかくトレンドに乗ったトレードに成功しても、利益確定のタイミングに迷ってしまうかもしれません。粘りすぎて反転に巻き込まれるのは困りますが、かといって急ぎすぎると小幅な利益にとどまりがちです。
とにかく、FXにおいて少額資金で堅実に利益を積み上げていくには、[1]トレンドが明確な局面だけに的を絞り、[2]読みが外れたら速やかなロスカットで損失を小さく抑えながら、[3]トレンドに上手く乗れたらできるだけ粘って大きな利益を狙うという3つのキホンに徹するのが有効でしょう。
例えロスカットするケースのほうが多くなって勝率が3割程度にとどまったとしても、「損小利大」を心掛ければトータルではプラスとなる可能性は高いものです。