スルガ銀行は11月14日、2018年4~9月期連結決算を発表、最終損益が従来の黒字予想から一転、985億円の赤字に転落した。4月に破綻した「スマートデイズ」など、9月末時点で2034億円の残高があるシェアハウス向け融資で約900億円の貸倒引当金を積み増したのが主因で、シェアハウス向け引当金の総額は1362億円に膨らんだ。
自己資本比率8%以上の維持を前提にした引当率
土地や建物などの担保で保全していない金額のほぼすべてを損失処理した計算で、自己資本比率は8.65%と、国内銀行に求められる最低比率4%の2倍強を確保している。
この決算いついて、あるアナリストは「自己資本比率が8%以上を維持することを前提に引当率を逆算した決算であろう」と指摘する。なぜならシェアハウス向け融資の無担保部分については引当金を積んだものの、それ以外の1兆6000億円にのぼる投資不動産向け融資についての引当は約140億円で、ほぼ手付かずのままのためだ。
「投資不動産向け融資の延滞率は0.5%程度で影響は限定的」(有国三知男社長)とされるが、金融庁は行政処分で投資不動産についても債務者のADR(裁判外紛争解決手続き)に応じるよう求めており、債権の劣化は避けられない。仮にこの部分について引当金の積みましを余儀なくされ、赤字幅が1000億円を超えれば、自己資本比率は4%を割り込む。
投資不動産融資が主体のビジネスモデルはほぼ崩壊?
並行してスルガ銀行は再編を模索せざるを得ないが、有国社長は資本業務提携について「現時点で具体的な話はない」とした上で、「リテール(個人向け金融)の強みを伸ばせる相手と協業していきたい」と含みを持たせた。
だが、再建は容易なことではない。スルガ銀行の収益の約9割は個人取引で占められ、かつ大半が地元静岡県外の首都圏の顧客。その収益の柱が投資不動産融資だったためだ。
金融庁がスルガ銀行に課した行政処分 は、10月12日から来年4月12日までの半年間、新規の投資不動産融資ならびに自らの居住に当てる部分が建物全体の50%を下回る新規の住宅ローンを停止する内容で、この間、すべての役職員が融資業務や法令遵守に関して銀行員として備えるべき知見を身につけ、健全な企業文化を醸成するための研修が義務付けられる。
「業務停止命令によりスルガ銀行のビジネスモデルはほぼ崩壊したに等しい」(地銀幹部)との厳しい意見も聞かれる。
こうした資本上の問題以上に、いまスルガ銀行で懸念されているのは預金流出だ。スルガ銀の預金残高は、4~9月に約6700億円も減少した。「月1000億円を超す流出は危機的」(同)であるが、10月に入り預金流出はさらに加速しているとみられる。
このためスルガ銀行はお宝の住宅ローン債権を信託銀行に信託し、その信託受益権を担保に日本銀行から資金調達することを準備している。まさに、断末魔の状態にある。資金繰りの窮すればサドンデスとなりかねない。
スルガ銀問題はこれからが本番。来年3月末の通期決算に向けて大きな動きが予想される。