6月まで硬直か ジレンマに陥る北方領土問題

2019.1.24

政治

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6月まで硬直か ジレンマに陥る北方領土問題

写真/首相官邸HP

日ロ首脳会談、北方領土問題に進展なし

ロシアを訪問した安倍晋三首相は1月22日、プーチン大統領と会談し、北方領土問題などをめぐって協議した。「じっくりと時間をかけ胸筋を開いて話し合った」(安倍首相)というが、具体的な進展は無かったもよう。6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議までの合意に向けて交渉を続けるが、領土返還につながるかどうかは未知数だ。

両首脳の会談は約3時間。外務省によると通訳のみが同席した「1対1」の話し合いが50分、外相や外務省幹部を含めた少人数会合が1時間、夕食を兼ねた拡大会合が1時間10分だったという。

会談では2月に外相会談を行うことで合意したほか、首脳特別代表間の交渉も行い、交渉を加速させるよう両首脳が指示したという。また、6月のG20に合わせて再び首脳会談を行うことも確認した。

写真/首相官邸HP

首相が具体的にどんな提案をしたのか不明だが、朝日新聞は「1956年の日ソ共同宣言で日本に引き渡すと明記した歯舞群島と色丹島の事実上2島に絞って返還交渉を進める方針で臨んだ」と指摘。“2島決着論”を念頭に置いて交渉したとの見方を示した。

妥協できないジレンマで動けない安倍政権

4島の返還を目指してきた日本政府にとって、2島決着論はかなりの譲歩となるが、それですらロシア側が呑むかどうかはわからない。昨年11月の会談で、両首脳は日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意。日ソ共同宣言 には「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする」とあるが、ロシア側は「島の主権の問題は議論されない」(ラブロフ外相)とかたくなで、交渉は容易ではない。

日本側としては経済支援を“エサ”にロシア側の譲歩を引き出したいところだが、ロシアはロシアで経済協力を引き出しつつ、領土問題は曖昧なままで決着させる狙いは明白。ロシア国内で領土返還への反対運動 が広がるなか、安易な妥協は見込みづらいのが現実だ。

かといって、日本側も大幅な妥協はしづらい環境にある。次回の首脳会談は6月で、参院選の直前。安易な妥協で批判されれば、それは選挙結果にそのままつながる。選挙で大負けすれば安倍首相の地位すら危ういわけで、そんな危険は冒せない。

6月までは「2島決着論」を公言することもないだろう。当面は両国による、手探りの交渉が続くとみられる。

プーチン大統領も苦しい それでもカードはロシア側

一時期8割を超えていたプーチン大統領の支持率 は6割台に落ちた。ロシアの経済成長もままならない。長期政権下での不満が蓄積してきている今、安易に領土を返すとは思えない。

チェチェンやウクライナなど、軍事的行動でナショナリズムを喚起し、支持率回復につなげた過去もある。欧米との関係改善や経済協力も含めて、日本との関係は良好に保ちたいのだが、相当な見返りがなければ2島返還すら難しい。

さらなる経済的疲弊での支持率大幅下落などがあれば、プーチン氏も逆になりふり構わずに日本に助けを求めるかもしれないが、カードはロシア側にあるので引き延ばしを続けるだろう。