漂うコンビニ市場飽和感 ローソン新業態「ローソンストア」は是か非か!?

2014.5.12

経済

0コメント

過去最高益を上げて絶好調に見えるローソンだが、既存店は苦戦している。三菱商事出身で中興の祖・新浪氏からバトンを受けた、元ファーストリテイリング社長の玉塚氏の手腕に掛かっている。新業態「ローソンマート」で更なる成長を図る。

新規業態開発の背景

国内に既に50,000店ともいわれ、市場の飽和が指摘されるコンビニだが、一方で、出店競争は年を追うごとに過熱している。人口集積の高い一等立地はもちろんの事、現在では加速する小家族化に対応した住宅立地も新しいマーケットとして注目されている。さらには、既存の他チェーン店舗にも触手を伸ばし、看板の掛け替えを画策する動きも近年、顕著となっている。

新しい動きとして注目されるのが業界3位のファミリーマート。ドラッグストアやスーパー、カラオケなど異業種とのコラボ店。一等立地にある異業種の既存店の一角にコンビニを出店させることで売上の相乗効果を期待する。

あの手この手のあれやこれやの出店競争が繰り広げられるなか、コンビニ2位のローソンが2月20日に新業態「ローソンマート」を横浜にオープンさせた。この「ローソンマート」を一言で表現すると、一般的なコンビニ「ローソン」と同社傘下の生鮮コンビニ「ストア100」のハイブリッド。公共料金の支払いやATMの設置、さらには出来立て惣菜など、ニーズは高いが「ストア100」では導入されていなかったサービスを組み込むことで、幅広い客数を取り込みたい意向だ。

前述の通り、小家族化が進む国内消費市場では、少量小分けの生鮮品へのニーズが高まっている。コンビニチェーンで、この要請に応えられるノウハウを唯一持っているのが「ストア100」を擁するローソンである。

そういう意味では、「ローソンマート」は時代背景にマッチした新業態としての評価はできるだろう。しかし、これらの動きを見るにつけ、その一方で、ローソンの置かれている厳しい状況を読み取ることもできる。

コンビニ業界2位として2014年2月期の連結決算では過去最高益を記録するなど業績は好調と言える同社であるが、一方で、基幹となる「ローソン」の同既存店売上高は、対前年比99.8%と苦戦するなど、少子高齢化が避けられないという国内の市場環境を考慮しても、次代の成長エンジンは必須。この役割の一角を担うのが「ローソンマート」というわけだ。

この「ローソンマート」の基本フォーマットは言うまでもなく「ストア100」だ。50坪以上の店舗面積を有する既存店のコンバージョンが主力となるのだが、これは同時にレギュラー業態以上に苦戦している「ストア100」立て直しの起死回生の切り札とも言っていい。

苦戦していた「ストア100」

「ストア100」は、前述の通り、小家族化や買い物弱者の受け皿として、高い存在感を示してきたのは周知の通り。しかし、ここ数年、同店の成功を見た大手スーパーが新規参入を加速、イオンの「まいばすけっと」やマルエツの「マツエツ プチ」など、大手がバイイングパワーをいかんなく発揮した価格訴求と品揃えを擁し、「ストア100」の牙城に殴り込みをかけている。

確かにコンビニのなかでは、生鮮管理に一日の長があった「ストア100」ではあるが、そもそもここを生業としてきたスーパーに対抗するには無理がある。唯一、先行者としてのアドバンテージは約1,200にも達する店舗網くらいのものだ。価格競争力はもちろん生鮮品等の品質管理の能力に高いノウハウを持った大手の参戦は、「ストア100」の競争力の低下を招くことになった。

それを証拠に「ストア100」の対前年比の既存店売上高は、約95%と「ローソン」以上に厳しい。競合の参入も大きな要因ではあるが、一方では、商品の大部分が100円ということも売上の底上げにはマイナス要因。最近では100円以上の価格帯の商品も並列し、売上回復に注力している様子もうかがえるが、顧客は低価格を意識して来店するのが大部分。なかなか100円以上の商品に手が伸びないという現実もある。

その失地回復の切り札が「ローソンマート」という訳だ。同店は、現在まで東名阪に11店舗を展開しているが、コンバージョン前に比べ売上高は約102%で推移しており、今のところ業態転換の効果は概ね期待通りといった具合だ。

「『ローソンマート』は、その性質上、住宅立地で強みを発揮しています。買い物弱者と言われる高齢者のなかには、商品の購入以上に、ATMや公共料金の支払いにも利用できることに利便性が高いという意見が多いです」(業界関係者)

そういう点から見ると、今のところ同社の「ストア100」の再生と言う意味では、狙いは的中していると見てもよく、今後は業態転換が加速されることは確実だ。1つ弱点を言えば、この業態を実現するには、最低でも50坪以上の売場坪数が必要となる。そんな前提からすれば、業態転換したくとも出来ない小規模店舗も少なくない。次のステージでは業態転換できなかった「ストア100」の打開策が求められることになる。ローソンの次の一手に注目したい。