復活のカギはフィンテック 地銀の新しいビジネスモデルを創出するためのコンテスト

2019.3.15

経済

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復活のカギはフィンテック 地銀の新しいビジネスモデルを創出するためのコンテスト

昨今、低金利や人口減の影響で地銀の経営はなかなかに厳しい。フィンテックを活用した金融サービスの企画・開発業務等を行っているT&Iイノベーションセンターは、3月5日、地方銀行の広域アライアンスである「TSUBASAアライアンス」におけるフィンテック領域を中心とした新規事業創出プログラム「TSUBASAアライアンス Finovation Challenge 2018-2019」を実施。昨年初めて行われた、革新的な金融サービスを提供する企業と地銀が連携することで新たなサービスの実現を目指す取り組みだ。第2回の最優秀賞は認知症予防に向けた総合サービスを提案したベスプラを選出した。

既存の銀行業務を変えうるアイデア募集

「TSUBASAアライアンス」は千葉銀行、第四銀行(新潟)、中国銀行(岡山)、伊予銀行(愛媛)、東邦銀行(福島)、北洋銀行(北海道)、北越銀行(新潟)の7行が参加している地銀の広域連携の枠組みだ。2回目を迎える今回は、武蔵野銀行(埼玉)と滋賀銀行が特別協賛として名を連ねている。

テーマは「銀行ビジネスのトランスフォーメーション」で、既存の技術や顧客にとらわれないまったく新しい価値の創造、新テクノロジーによる地域課題の解決と地域資源の活用、客向けのサービス向上、銀行内部の業務の効率化など銀行業務を変えるようなアイデアなどを募集。123件の応募があり、そこから6社が選ばれ、この日を迎えた。

最優秀賞に選ばれたベスプラ(代表取締役 遠山陽介、東京)は千葉銀行と、イノベーティブ賞を受賞したAIQ(代表取締役 高松 睦、東京)は中国銀行となど、それぞれが特定の銀行とタッグを組んで、各プランのブラッシュアップを行い、その成果を発表した。

開会に先立ち挨拶した千葉銀行の佐久間英利頭取は「多様なビジネスチャンスにつながることを期待している」と述べ、今後厳しい経営環境を迎える地銀が新しい力を必要としていることを訴えた。

有識者によるパネルディスカッションも開催。

フィンテックを駆使して認知症予防

ベスプラはすでに世界初の認知症予防総合サービスを提供し、6万人のユーザーがいる。日本において、2012年には462万人の認知症患者がいたが、2025年には730万人 に達するともいわれている。現在、治療費は年間でおよそ91万円、介護費は約156万円と経済的な負担も大きい。このプログラムでは、銀行のネットワークを活用して高齢者施設において認知機能検査サービスを提供することで、認知症の予防を図ろうというものだ。また、同社は「脳に良いアプリ」というのを開発しており、それをビジネスに活用していく。

認知症とフィンテックを組み合わせるというユニークさに加え、社会的な課題解決への取り組みという姿勢が評価された。事業化する上でマネタイズをする必要があるがどのようにしていくのか?という筆者の問いに、同社の遠山氏は、「予防では厳しいところがある。ただ、本人への検査やそこからの家族へのサービス提供などにマネタイズできるポイントがあると思っている」と語った。

イノベーティブ賞を受賞したAIQは、人工知能(AI)によるプロファイリング技術(AIがSNS上のさまざまなデータから個人の趣味嗜好を予測する技術)に強みがあり、同社は700万件のプロファイリングデータを保持している。

結婚・出産、住宅・クルマの購入などのライフイベントを予測。銀行口座との連携を図り、適切なタイミングでユーザーにとって必要な金融商品を紹介し、カスタムメイドの接客を実現させようというものだ。

ほかの企業のプレゼンでは、会話・対話が可能なコミュニケーションロボットを開発したものもあった。例えば、ロボットと銀行のAPIを連携させて、ロボットに残高情報を聞いたり、ロボットを介して銀行オペレーターと話すことが可能で、銀行の窓口に行かなくてもお金の相談が出来るというもの。また、オンライン完結型のファクタリングサービスの提供などが発表された。

T&Iイノベーションセンターの森本昌雄代表取締役会長も「有意義なものになった。これからがスタートで、銀行とさらに話を進めてもらいたい」と期待感を寄せた。

T&Iイノベーションセンターの森本昌雄代表取締役会長