再編が不可欠も難航するスルガ銀行の受け皿探し
経済

再編が不可欠も難航するスルガ銀行の受け皿探し

0コメント

昨年10月、シェアハウスへの投資に関する不正融資でずさんな経営があらわになったスルガ銀行に、金融庁は2019年4月12日までの間、新規の投資用不動産融資や一部の住宅ローンを停止する行政処分を下した。来月から一部業務停止命令が解除されるが、いまだ再建への道筋は立っていない。問題は何か。

元最優良地銀、スルガ銀行はつぶせない

シェアハウスをめぐる不正融資で経営危機に瀕しているスルガ銀行の再編が難航している。同行が2019年の早い時期に開くとしていた臨時株主総会も開催が見送られる見通しだ。臨時株主総会では、現取締役で訴訟対象となった八木健氏を退任させるなど、経営陣の刷新を図る予定であったが、経営再建に向けた具体策が示せない現状では、株主の理解を得られないと判断したためだ。

また、3月12日にはスルガ銀行が岡野光喜元会長を含む旧経営陣らに計32億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回の口頭弁論が開かれ、旧経営陣らは請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

この臨時株主総会見送りを受け、市場では、「スルガ銀行は法的整理される可能性がある」との見方が広がった。透明性の高い法的整理で負の遺産を一掃し、株主代表訴訟のリスクを払拭しなければ再編もうまくいかないのではないかと見られたためだ。

だが、現実問題としてスルガ銀行を経営破綻させることは許されない。預金量が3兆円を超す地銀が破綻すれば、金融システム危機に波及しかねないことに加え、4月の地方統一選、夏の参議院選を控え、政治的にも地銀破綻は許容できないためだ。予防的な措置として再編は避けて通れないと見られている。

有力案は大手銀行の持株会社傘下

スルガ銀行が2月14日に発表した2018年4~12月期の連結決算は、961億6500万円の最終赤字となり、実質与信費用も1281億円と9月末に比ベ85億円増加した。1兆7000億円もの残高を持つ投資用不動産向け融資や、スルガ銀行の創業家である岡野ファミリー企業向け融資で引当金の積み増しなど与信費用が増えたとされており、先行きの不透明感は拭えない。

さらに、危機的と言わざるをえないのが預金の流出である。昨年4~9月に6700億円を超す預金が流出したが、10~12月も1872億円の預金流出となった。減少ペースは落ちているが、金融庁が水面下で主要な地銀に協力預金するよう働きかけているにもかかわらず、預金の流出が続く異常事態だ。

急速に悪化する財務状況を受け、スルガ銀行も昨年秋以降、水面下で再編に動いている。同じ地元の静岡銀行や、横浜銀行・東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ、大手銀行のりそなホールディングス、SBIホールディングスなどが候補に挙がっている。

スルガ銀行の再編相手は予断を許さないが、再編のスキームは、大手銀行の持株会社傘下にスルガ銀行が入る案が有力視されている。モデルとなるのは都銀が不良債権処理に苦慮した90年代後半に大蔵省銀行局(当時)の大物官僚・杉井孝氏(現在・弁護士)が密かに暖めていたスキームである。

杉井案では、東西に複数の地銀を糾合するプラットフォーム(持株会社)が創られる構想だった。その中核銀行は、関東があさひ銀行、関西が大和銀行だった。その後、両行が合併して誕生したのが、現在のりそなホールディングス(HD)だ。

そして、そのりそなHDが主導して生まれたのが関西みらいフィナンシャルグループ(FG)であり、関西みらいFGには近畿大阪銀行、関西アーバン銀行、みなと銀行の関西の有力地銀3行が糾合している。

同様に、りそなHDが主導する形で、経営難に直面する関東の地銀を糾合するプラットフォーム(持株会社)を設立し、その中核としてスルガ銀行が入る案が俎上にのぼろう。

受け皿探し難航の要因は創業家、岡野ファミリーの負の遺産

スルガ銀行の再編では、岡野家やファミリー企業が保有するスルガ銀行の株式の買い取りとTOB(株式公開買付け)が条件になると見られている。受け皿探しが難航しているのも、この岡野家の負の遺産(岡野家のファミリー企業が保有するスルガ銀行株やファミリー企業向け融資)の整理が遅れているためであろう。いずれにしても地域経済を支え得る相応の規模の銀行との再編が不可欠といっていい。

スルガ銀行の一部業務停止命令が解除されるのは4月12日であり、同行は4月から新たな中期経営計画をスタートさせる予定である。金融庁はこの中で資本の充実策を含む再建策を盛り込むよう求めており、資本協力を含む提携銀行を決める必要がある。提携銀行が見つからなければ最悪の場合、公的管理や法的整理も視野にいる。難航する再編だが、残された時間は少ない。