景気が回復しなければ踏み切れない消費税増税 3度目の延期の可能性も
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景気が回復しなければ踏み切れない消費税増税 3度目の延期の可能性も

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2度にわたって延期され、10月にいよいよ実施が迫った10%への消費税増税が、ここにきてストップするかもしれない。理由は景気が回復しないことと、政治要因だ。7月に参院選を控えるなか、実施の判断が7月の日銀短観まで引っ張られる可能性も出てきている。

公式には実施濃厚も、常にくすぶる延期論

先行きの政治日程を考慮したとき、にわかにきな臭さを増しているのが10月に予定されている消費増税の延期である。“きな臭さ”とは消費増税というつとめて経済的なイベントが政治要因でねじ曲がられるという意味である。

伏線は1月、年初の株価急落時からみられた。「アメリカの金融政策や米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱協議の行方次第で、今後も株価急落など金融市場が混乱する可能性がある。その時期は参議院選挙を控え、消費税率引き上げの最終判断と重なる可能性がある。今後の景気動向次第では、消費税率引き上げを先送りする理由になる可能性があろう」(永田町関係者)というものだった。

その後、この見方は一時後退した感があったが、4月19日、安倍首相に近いとされる自民党の萩生田光一幹事長代理がインターネット番組で「6月の日銀短観をよく見ないといけない。(消費増税を)止めるとなるとなれば、信を問うことになる」と発言し、表に浮上した。

いわゆる“観測気球”であろうが、萩生田氏は「(10%への消費増税は)決まっているから、なりふりかまわずゴールテープを切るという姿勢はよくない。どんな小さな数字の変化も政府は謙虚に受け止めるべきだ」と語っている。

公式には安倍政権は今年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる姿勢を崩していない。与党内からも「消費税はリーマンショック級の出来事が起こらないかぎり引き上げていく」と繰り返し語られている。

しかし、その掛け声とは裏腹に、政権内部では参議院選挙での大敗を回避するための秘策として消費増税の延期と衆参同日選挙がセットで練られているようだ。

各指標が示す景況感の「悪化」

鍵は萩生田氏が語った“小さな数字”にある。「米中(貿易摩擦)の余波も見ないといけないし、GDP速報値もトレンドとして少し下がると思う。(経済指標が)出たときに、外的要因なのか国内経済の足踏みなのか、あらゆる角度で検証すべきだ」(萩生田氏)というわけだ。

延期時期は入念に計算されよう。政治日程と主要な経済指標の公表時期を勘案すれば、まず4月1日の日銀の短観で、大企業、製造業の景況感は、米中貿易摩擦の影響を色濃く反映し、景況感が悪化した。次いで、5月13日に公表された3月の景気動向指数の基調判断も6年2カ月ぶりに「悪化」に引き下げられた。

同指数の算出に使用される7指数のうち5指数が低下する悪化ぶりで、半導体やフラットパネルなど投資財出荷指数が落ち込んだほか、自動車など耐久消費財出荷指数や鉱工業生産指数も足を引っ張った。いずれも米中貿易摩擦の激化による貿易の低迷が影響している。ちなみに景気動向指数が「悪化」となったのは、リーマン危機前後の2008年6月~2009年4月と欧州債務危機時の2012年10月~13年1月の2回ある。

そして、極め付きは5月20日に公表される今年1~3月のGDP速報値で、大幅なマイナスになると予想されている。マイナス経済は、企業の先行きの景況感をさらに悪化させ、消費の減少にも影響しかねない。ここが消費増税延期の山になりそうだ。仮に押して7月1日に公表される日銀短観を待っても「増税延期の法案はすぐに通せる」と政権内では踏んでいる。

消費増税延期&衆参同日選&金融緩和がセット?

加えて、こうした消費増税の延期と日銀の追加緩和がセットで講じられる可能性も浮上している。援軍は日銀の政策委員会のリフレ派の審議委員のほか、その理論を支えるリフレ派の経済学者のグループだ。彼らの主張は、消費増税は景気を悪化させるだけであり、止めるべき。やるべきはさらなる金融緩和であり、その余地は十分にあるというものだ。

大型連休に河口湖で静養した安倍晋三首相のもとをリフレ派の頭目のひとり、本田悦朗元駐スイス大使が訪ねた。本田氏は安倍首相にデフレから脱却するまで消費増税は行うべきではないと進言したとされる。すべては参院選での大敗回避であり、そのためには衆参同日選も辞さないということか。政治に経済が隷属するきな臭い展開が予想される。