なぜ新生銀行が支援? スルガ銀行の再編は始まりにすぎない

2019.05.20

経済

0コメント
新生銀行

写真/TK Kurikawa / Shutterstock.com

投資用不動産向け融資に関するスルガ銀行の不正融資額は、約1兆7000億円にも上った。融資全体の6割を占めるその額にも驚くが、注目された再編相手には新生銀行と大手家電量販店ノジマが決定。ただ、2社とは業務提携というかたちをとり、資本提携については見送られた。大手銀行で唯一公的資金を抱える新生銀行が選ばれたことは、これがまだ序章にすぎないことを示している。

まずは業務提携で信用回復

スルガ銀行は5月15日、投資用不動産向け融資にかかわる不正行為の調査結果を発表した。同時に新生銀行の支援を受け、失った信用の回復に努めると強調した。

不正行為は投資用不動産向け融資の総額約1兆8000億円のうち、疑いのあるものも含めると1兆700億円と、全体の6割超を占めた。ただし、すでに当該融資の焦げつきに備えた貸倒引当金を積んでおり、すぐさま不良債権処理といった財務負担に結びつくわけではないという。また、ここにきてスルガ銀行株の5%弱を保有する大株主に浮上していた大手家電量販店のノジマとは、フィンテック分野で業務提携することが決まった。

投資用不動産向け融資で、これほどの不正が行われていたことに改めて驚かされるが、今回の発表の焦点はむしろ新生銀行が支援企業になったことと、その内容にある。

なぜ新生銀行に決まったのか

スルガ銀行支援には、新生銀行ほか、りそなホールディングス(HD)、SBIホールディングス、そしてノジマなどの名前が浮上していた。当初、最有力視されていたのは安定感のあるりそなHDであり、金融庁もその線で動いていたようだ。

しかし、スルガ銀行の不良債権がどこまで膨らむか不透明であったことに加え、創業家である岡野家がスルガ銀行株(約13%)を保有する大株主であることや、岡野ファミリー企業向け融資の取り扱いが未知数ななか、ガバナンス上、安易な支援はできないと判断し、早い段階で降りたようだ。

一方、新生銀行やSBIホールディングスは支援に前向きだった。とくに新生銀行については、「工藤英之社長がアナリストとの面談で、スルガ銀行を受けたいと語ったとの情報が年末に流れた」(金融庁関係者)。

大手銀行で唯一2000億円を超す公的資金を抱え、返済の目途すら立っていない同行だが、「消費者金融や不動産融資が中核の新生銀行は個人向け投資不動産向け融資のスルガ銀と親和性がある」(銀行アナリスト)というのが理由だった。SBIについては、ネット系金融機関ということで金融庁は消極的であったといわれる。

新生銀行は国が大株主。まだ次の再編がある

スルガ銀行と新生銀行は、住宅ローンや無担保ローンなどの個人分野に加え、事業承継や資産流動化といったほぼ手掛けてこなかった法人向け業務でも連携する。ただし、資本提携については「資本提携を含めたさまざまな将来の選択肢を排除するものではない」(新生銀行)と含みを持たせたが、今回の発表では踏み込んでいない。

こうした一連の流れを踏まえると、今回の提携劇は多額の不正融資額の公表と支援策をセットで発表するために当座の信用補完を急いだ結果、公的資金が残り、国が株主としてガバナンスをきかせ得る新生銀行が選ばれたという、当局主導によるとりあえずの着地と見ていい。

つまり新生銀行の支援は始まりにすぎず、第2、第2の再編が想定される。それがいつになるのかは、スルガ銀行の信用回復や岡野家との株式や資産の売却時期をにらむ展開となろう。