キャッシュレス決済なら消費税増税前より安く購入可能 懸念は来年6月のポイント還元終了時の景気後退

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キャッシュレス決済なら消費税増税前より安く購入可能 懸念は来年6月のポイント還元終了時の景気後退

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ついにか、やっとか、10月1日から消費税が10%に引き上げられる。引き上げに伴う増収5兆円は、幼児教育無償化や社会保障の拡充に使われるため意義は大きい。ただ、軽減税率(1.1兆円)やポイント還元等の景気・負担軽減対策(2兆円)に大部分が使われるため、実質的な増収は十分とは言えない。また、軽減税率を導入したことによって複雑化した税制度は企業側に大きな負担を与えており、これで景気が低迷するようであれば景気対策の延期や追加も免れず、それこそ増税は意味の無いものになってしまう。

 

キャッシュレス化の潮流も手伝って、このままいけばすんなり10%に移行できそうだが、問題は景気対策が終了する来年6月以降だ。

補助金対象になるために資本を減らす企業も

10月1日から消費税が8%から10%に引き上げられる。特に今回の増税に合わせ、軽減税率の導入やキャッシュレス化を促すポイント還元など多様な対応が求められることから、小売業を中心に企業、顧客の双方とも増税当初の混乱は避けられないだろう。

その小売業を中心に象徴的な動きが見られた。資本金を減らす「減資」だ。

2019年10月~2020年6月までの9カ月間、中小店で買い物をしてキャッシュレス決済をした消費者にはポイントが還元される。電子マネー、デビットカード、クレジットカード、QRコードなどの決済事業者に政府が補助金を支給するもので、還元率は中小企業(※)の買い物で5%、コンビニやガソリンスタンドなどのフランチャイズに加盟する中小企業で2%だ。
※小売業の中小企業:資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人(中小企業庁)

一方、中小企業に当たらないコンビニ大手ではポイントは還元されないため、競争上、顧客の購入額から2%分を代金から差し引く方針が打ち出されている。自腹を切っての消耗戦であり、「経験のない価格・ポイント競争が起こりかねない」(大手流通)と懸念される。

それならば、ポイント還元されるよう資本金を5000万円以下に減資して法律上の中小企業になった方が得策と考えるのも無理はない。帝国データバンクの調査によると、今年1月~7月末までに減資した小売業は412件と、昨年の同じ時期の1.63倍に増加、過去10年で最も多いペースとなっている。

期間限定で増税前より安く買えるようになる

政府のポイント還元の狙いは、消費増税に伴う景気の悪化を回避することと、たった2割というわが国のキャッシュレス決済の推進だ。今回は、住宅や自動車の駆け込み需要を避けるための減税措置やプレミアム付商品券等、総額2兆円を超す経済対策が打たれる。

また、消費税率は10%の単一税率ではなく、食料品や新聞代などは8%の軽減税率が適用される。消費税が持つ逆進性(低所得者に相対的に重い税となること)対策と称されているが、富裕層にも適用されるため効果は疑問。さらに「何が食料品なのかをめぐる複雑極まりない対応策や複数税率仕様のレジへの交換など、混乱は避けられない」(野党議員)との批判も出ている。

しかし、このポイント還元と軽減税率により、消費者は一時的ながら確かに有利な買い物ができることは確かだ。例えば、中小小売店で10000円の商品をキャッシュレスで購入すると、税込み価格では11000円だが、5%のポイント還元分は550円となり、実質的な負担額は11000-550=10450円となり、増税前の10800円よりも安くなる。

さらに、これが食料品であれば軽減税率が適用されるため、税込みだと10800円で、ポイント還元は10800円×5%=540円で、支払い金額は10800-540=10260円となり、よりお得になる。「消費税が5%から8%に引き上げられた時は大幅な駆け込み需要が起こったが、今回の増税では予想したほどに駆け込み需要が起こっていないのは、こうしたポイント還元や軽減税率の効果もある」(エコノミスト)と言っていい。

怖いのはポイント還元終了後の落ち込み

だが、それでも増税に伴う消費の落ち込みは避けられないとの見方が有力だ。民間予測では10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算の平均値で2.5%減と、マイナス成長に陥る公算が高い。ちなみに前回増税時の2014年では、増税後の4~6月期に個人消費が大幅に落ち込み、実質成長率はマイナス7.2%まで低下した。

駆け込み需要がそれほど盛り上がらないなか、景気の落ち込みは前回よりも緩やかになろう。だが、問題はポイント還元が終了する来年6月末以降ということではなかろうか。その時、景気の先行きが思わしくなければ、ポイント還元が延長されるシナリオも十分にあり得ると考えられる。