いま企業に必要なのは「健康経営®」 DeNAの、行動を促す“人生伴走型保険”

2019.10.29

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DeNAの、行動を促す“人生伴走型保険” 相園高志/三宅邦明

写真/芹澤裕介 「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

2019年6月にメットライフ生命より発売された、DeNAとの共同開発による健康増進型保険「あなたと会社の健康計画」(企業・団体向け)には、歩数実績で配当金額が変動する団体保険の領域では業界初(メットライフ生命調べ、2019年4月26日時点)の仕組みが導入されている。IT企業であるDeNAは、共同開発の過程において自身が持つデータの分析とその活用による「行動変容」のノウハウを多分に用いたという。キーマンの2人に開発の背景と、DeNAが取り組むヘルスケア事業のビジョンを聞いた。

株式会社DeNA CMO 兼 DeSCヘルスケア株式会社 代表取締役社長 

三宅邦明 みやけ くにあき

厚生労働省健康局健康フロンティア戦略推進室、結核感染症課、医政局研究開発振興課、内閣官房新型インフルエンザ等対策室などを経て2019年4月にDeNA入社。Chief Medical Officer(CMO)及び子会社のDeSCヘルスケア株式会社の代表取締役としてヘルスケア事業に取り組んでいる。

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DeSCヘルスケア株式会社 事業開発部サービス第一グループ グループリーダー

相園高志 あいぞの たかし

人材系ベンチャー企業勤務、ウェブ制作会社の起業などを経て2013年にDeNA入社。2017年よりヘルスケア事業部へ異動し、保険商品や付帯サービスの企画提案、生命保険会社との渉外などを行う。現在はDeNAの子会社のDeSCヘルスケア株式会社所属。

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行動を促す「エンゲージメントサイエンス」を保険に活用

IT技術やインターネットを活用した事業を中心に展開するDeNA。ゲームやアプリなどを開発・リリースするエンターテインメント企業という印象が強いが、約5年前からヘルスケア事業にも進出。2015年3月には子会社のDeSCヘルスケアを設立し、保険領域にも踏み出した。DeSCヘルスケアの相園さんは、ヘルスケア事業についてこう語る。

「私たちのミッションは、病気になってから治す“シックケア”から病気を予防する“ヘルスケア”への移行です。日々の生活の中で楽しみながら健康になることを目指し、『健康寿命』を延伸したいと思っています。

健康寿命

WHO(世界保健機関)が提唱する指標で、平均寿命から寝たきりなどの介護状態の期間を差し引いたもの。

“楽しみながら”というのがポイントで、それはわれわれがゲーム事業やスポーツ事業などで培った『エンゲージメントサイエンス』を活用することで出せる特色だと考えています。

健康増進型保険『あなたと会社の健康計画』はいわば、私たちのミッションやビジョンの出口戦略のひとつという位置づけです」

DeNAの、行動を促す“人生伴走型保険” 相園高志/三宅邦明
お話を聞いたDeSCヘルスケア三宅邦明社長(右)と、DeSCヘルスケア相園高志さん(左)

「エンゲージメントサイエンス」とは、データ分析力とサービス運用力に基づいて、利用者がサービスを楽しく使い続けられるためのノウハウを意味する。DeNAはアプリやサービスを開発・リリースするだけで終わらず、長く飽きずに利用してもらうための調整や仕組み作りを通じて、このノウハウを培ってきた。

さらにこれまでDeNAが行ってきたサービスを通じて、健康に関する総合データも蓄積されており、そこから健康行動や健康状態の変化に関するエビデンスも獲得していることも強みだという。

アプリのインセンティブやイベントを通して利用率を維持・改善

健康に関する総合データ蓄積の一助となり、今回の健康増進型保険「あなたと会社の健康計画」にも密接にかかわっているサービスが健康レコメンデーションメディア「kencom(ケンコム)」だ。

「『kencom』は健康保険組合の加入者向けに提供している健康増進支援型アプリです。現在、約80健康保険組合、約300万人にサービス提供しています。健診結果や歩数などのライフログといった健康データの記録はもちろん、健康データに基づいた健康情報の記事をレコメンド、ログインするたびにポイントが付いて、貯まればギフト券などがもらえるポイントインセンティブなどのサービスを行っています」(相園さん)

【左】医師や栄養士、トレーナーによる健康増進に向けた情報をアプリ内で提供。/【右】健康に大きく寄与するといわれている歩数をアプリが自動で記録。加えて、体重・血圧などを総合的に記録できる。
※画面は健保向けの「kencom」のものです。生命保険会社向けの機能は一部異なる場合があります。
【左】アプリを使うたびに貯まるポイントでプレゼントが当たることも。/【右】5年後、10年後に糖尿病と心血管病を発症してしまう確率がどれくらいあるのかシミュレーションできる「ひさやま元気予報」。

レコメンドは、例えば血圧や血糖値が高い人にはそれに関する健康記事がアプリ上で表示され、自分の健診結果に対してより理解が深められる。ポイントインセンティブは毎日アプリを起動したくなる仕掛けでもあり、それぞれ象徴的なエンゲージメントサイエンスと言えるだろう。

「アプリをリリースするだけならば、通常は3カ月程度で利用率は5%ぐらいまで下がってしまいます。私たちは“リリースしてから”が勝負で、トライアンドエラーを重ねて、最適解を見つけています。『kencom』ではリリースから15カ月後も75%以上の利用率を維持しています」(相園さん)

DeNAの、行動を促す“人生伴走型保険” 相園高志

そのほかにも一定期間中の歩数を競う「みんなで歩活(あるかつ)」などのイベントを開催することで、楽しませながら利用者の平均歩数を上げているという。

「例えば、平均歩数が3000歩程度の人もイベント開催中は約2倍にまで増加し、終了後も歩数は開催前よりも高い水準を維持していることが多いんです。アプリを利用していただくことで意識が変わり、行動も変化するので、健康状態の改善につながります」(相園さん)

「健康経営」を目指すきっかけとしての団体保険

このようにDeNAのヘルスケアへの取り組みや健康増進支援型アプリ「kencom」などで得られたノウハウやエビデンスを活用し、メットライフ生命と共に共同開発したのが企業・団体向けの健康増進型保険「あなたと会社の健康計画」だ。

「あなたと会社の健康計画」」は「kencom」をベースにしたアプリ「kencom×ほけん」で従業員の歩数を計測し、その平均歩数実績によって企業・団体への配当金額が変動する、「歩数実績配当方式」の保険商品となる。つまり従業員の歩数が多い企業・団体ほど配当金額が上がる可能性がある仕組みだ。団体保険分野において、「歩く」といった健康増進の取り組みにより配当金額が変動する健康増進型保険は、業界初となる。

基礎となっているのが、前述したDeNAの健康に関する総合データやエビデンス。DeNAのCMOであり、DeSCヘルスケア 代表取締役社長を兼任する三宅邦明さんはこのような保険商品を企画した理由についてこう語る。

「データやエビデンスによって、これだけ歩くと、これだけ生活習慣が変わり、入院率や医療費も減るといった相関関係がわかるので、こういった保険商品を提案できます。『あなたと会社の健康計画』は実際にやると健康になるというエビデンスを使い、DeNAならではの楽しみながら健康になってもらうということを具現化しています。

また、企業経営において、昔は福利厚生が重視されていましたが、これからは従業員の健康管理も経営的な視点で考える『健康経営』を実践していかなければなりません。この保険を通じて健康改善に取り組んでもらうことは、『個人と企業が同じ方向を向く』という課題に対するひとつのソリューションになると思います。私たちはそこを支援していきたい」

DeNAの、行動を促す“人生伴走型保険” 三宅邦明

今回の「あなたと会社の健康計画」は企業・団体向けだが、9月27日(金)には個人向けとして朝日生命の加入者が利用できる「kencom×ほけん」の提供を開始。さらに2020年度以降に新たなヘルスケア型保険商品もリリース予定だという。

DeNAが目指すヘルスケアとは

DeNAが「あなたと会社の健康計画」に込めた狙いとは何だろうか。

「ひと言で言うと“行動を促す保険”です。弊社の提唱する“ヘルスケア”とは健康を維持するということだけでなく行動を変えるということまで含意しています。つまり、保険やアプリを通じて健康を意識し、行動に移し、最終的には生活習慣病の罹患率や健康リスクの低減を目指してほしいんです。

そういう意味では健康増進型保険は他社にもありますが、弊社では単なる健康増進を超えた意味を持つという思いも込めて“ヘルスケア型保険”と呼んでいます。

今後は弊社のエンゲージメントサイエンスをより活用して、さらなる“人生伴走型の保険”を作っていきたいというのが大きな願いです」(三宅さん)

“ヘルスケア”のさらなる普及を目指すDeNAの次なる一手にも要注目だ。

※「あなたと会社の健康計画」はメットライフ生命保険株式会社が引受保険会社となる、団体・企業向けの医療保険です。詳細はこちらを参照ください。

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