「子どもへの訴求」という視点
今回の第46回東京モーターショー2019(TMS)では子ども向けの職業体験型テーマパークとして名高い「キッザニア」が初参加したのも注目だろう。青海エリアで「Out of KidZania in TMS2019」と旗揚げ、会期中だけの期間限定モノだ。
10社が計11種類の「お仕事体験」を提供、ラインアップは以下の通り。
- KDDI:「遠隔操作による災害復旧の仕事」(次世代のモバイル高速通信・5Gを使ったショベルカーの遠隔操作作業)
- ジェイテクト:「クルマに欠かせない部品を組み立てる仕事」
- SUBARU:「クルマをメンテナンスする仕事」
- ダイハツ工業:「クルマを組み立てる仕事」
- トヨタ自動車:「月面探査車プログラミングをするエンジニアの仕事」/「クルマを組み立てるメカニックの仕事」
- 日産自動車:「コンセプトカーデザイナーの仕事」
- 日野自動車:「トラックをプロデュースする仕事」
- 本田技研工業:「レーシングドライバーの仕事」
- マツダ:「金型磨き職人の仕事」
- 三菱自動車工業:「新しいクルマをデザインする仕事」
例えば、SUBARUの“仕事場”をのぞいて見ると(写真)、作業服に着替えた子どもがタイヤ・ホイール交換に挑戦。専用工具を使ってナット締めや空気圧点検などワクワク。おそらく初めての経験だろう。
幼少期からクルマに慣れ親しませる、という戦略は将来の市場確保という点から考えれば極めて重要だろう。換言するならばTMSはこれまで「子どもへの訴求」という視点が希薄だった。あくまでも10代後半以上=自動車運転免許所有者がターゲット、しかも1990年代までは「男性」が主軸で、当時のTMSはコンパニオンらがセクシーさを競う場でもあった。だが今やTMSでコンパニオンに遭遇するのはごく稀。
集客強化で独自性を失いかねないジレンマ
もちろん、“キッザニア招致”は昨今のクルマ離れを少しでも食い止めようとする自動車業界の「あの手この手」の一つでもある。ファミリー層に訴え、TMSの入場者ジリ貧に歯止めをかける、という狙いだ。
事実、バブル崩壊直後の1991年に約202万人を記録した入場者数はその後漸減、2009年には100万人の大台を割り込み、前回(2017年。開催期間は10日間)は約77万人(1日平均約7.7万人)に留まった。
今回、主催者である日本自動車工業会は開催期間12日間で「100万人回復」を目標に掲げ、そのブースターの一つとしてキッザニアに大きな期待をかけているわけだが、一方で、「これまでの『自動車見本市』というスタンスから『クルマのテーマパーク』へと大きくハンドルを切ったのはいいが、逆にコンセプトが散漫となり独自性が失われる危険性もある。『東京ゲームショウ』『CEATEC』『ニコニコ超会議』など他の展示会・イベントとコンテンツが一部被っているのでは』との指摘も少なくない」(事情通)との声も。
ちなみに、「東京ゲームショウ2019」(今年9月12日~15日、計4日間)の入場者数は約26万人(1日平均約6.5万人)、同様に「CEATEC2019」(今年10月15日~18日、計4日間)は約14.4万人(同3.6万人)、「ニコニコ超会議2019」(今年4月27・28日、計2日間)は約16.8万人(同8.4万人)。
圧倒的な知名度と集客力を誇り“キング・オフ・展示会”の名をほしいままにして来た東京モーターショーは無事、11月4日に閉幕、いざ蓋を開けてみれば心配されていた入場者数は130万人を突破、大成功に終わった。だが、今後も100万人超を維持するような魅力的な“モビリティ・コンテンツ”を果たして出し続けられるのだろうか。世界的に見本市離れが加速するなか気になるところだ。
※11/6、入場者数更新