自動運転の普及にはまず、利用者のリテラシーを上げることが重要

2019.11.05

技術・科学

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10月に開催された「東京モーターショー2019(TMS)」には、自動運転技術が向上し、ついにレベル4でナンバーを獲得したクルマも登場。東京都はTMSの中で「自動運転試乗会」と「自動運転試乗会・シンポジウム」を開催。今後、自動運転はどのように進化していくのか取材した。

レベル4の実用化は遠くないが、レベル5はまだ先

世界で開催されているモーターショーの中で「東京モーターショー」の地盤沈下が叫ばれて久しいが、とはいえ自動車大国日本のお膝元でのショーなので日系のメーカーは気合が入る。そんななか、近年注目を浴びているのが自動運転技術だ。自動運転のレベルは、以下の5段階で表される。

  • レベル0:運転自動化なし=ドライバーがすべての運転操作を実行
  • レベル1:運転支援=システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う
  • レベル2:部分運転自動化=システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う
  • レベル3:条件付運転自動化=決められた条件下で、すべての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない
  • レベル4:高度運転自動化=決められた条件下で、すべての運転操作を自動化
  • レベル5:完全運転自動化=条件なく、すべての運転操作を自動化

ちなみに、日産の運転支援システム「プロパイロット2.0」はレベル2と3の間だ。

東京都が10月25日に江東区青海のイベントスペースで行った自動運転の試乗会は、小型バスタイプの車両で、アクセル、ハンドル、ブレーキペダルを必要としない完全自動運転のEVで、日本でナンバープレートを初めて搭載した車両だ。定員は8名となる。車両の設定用にプレイステーションのようなコントローラーと座席があるだけだ。

実際に乗りこんでみると、発進は非常にスムーズ。時速約9キロのスロー走行だったが、ハンドルもブレーキも操作を必要としない、間違いなく自動運転だ。ロータリーをぐるっと回るコーナーが来たが、そこでの動きも非常に滑らか。乗車時間は15分という短い時間ではあったが、会場近くを走る自動運手の電車、ゆりかもめの自動車版だった。

自動運転の技術よりも先に必要なこと

自動運転となると、そのコントロールはコンピューターが担うことになるが、それを開発したのがソフトバンクグループのSBドライブだ。佐治友基社長は「この車両はレベル4です。人手不足の地域で使われることなどを想定しています」と語る。技術的にレベル4は問題なく実用化できるレベルだそうで「止まるときも急に止まるのではなく、人間にように一度軽くブレーキをかけてから、さらにブレーキを強くかけるなど人間が運転する乗り味もできるだけ再現するようにしています」と。

また、佐治社長は、自動運転の技術だけではなく人間の自動運転に対するリテラシーを上げる必要があると考えているという。その意味について「例えば、自動運転と人間の運転が混在して走っているとします。もし自動運転車の前に急に人間が運転する車に割り込まれると自動運転車はストップします。こういう事が後ろで多く発生すると結局は渋滞してしまいます。自動運転車を利用するだけではなく、共存するときにどうするのかというのをもっと知ってもらう必要性があると感じています」

また、レベル5の完全自動運転については「正直、現時点ではハードルがかなり高いです」と語る。想定外のことが起こったときにどう動くのかなど、対策を施すべき事項がまだまだ多いと語っていた。

技術はあるのに社会実装されない日本

同日に、自動運転についてのシンポジウムも行われた。登壇者は国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏、東京都戦略政策情報推進本部戦略事業部先端事業推進担当課長の前林一則氏、モビリティージャーナリストの楠田悦子氏、小田急電鉄経営戦略部課長 次世代モビリティチーム統括リーダーの西村潤也氏、ZMPロボハイ事業部長の西村明浩氏の5人。

そのなかで楠田氏は、「外国と比べると日本は技術があってもそれが社会に“落ちない”というのがある。また、課題を解決できる人材が少ないというのも問題で、人材作りがおろそかになっている」と指摘した。清水氏は「行政が積極的にやるのも大事だが一度整理して、行政は何をするべきか? 市民は何をするべきか?……われわれは交通参加者だという認識を持つことがまず大事」と話した。

今後人口が減っていくことを考えると、自動運転技術は日本が抱える問題解決の一助になるのは間違いないが、それを利用する、生かすのは人間だ。今回の取材を通して感じたことは、便利な道具としての認識だけではなく、自動運転の車が身近になったとき、実際にどういった社会になるのかを考えるべきというトーンの話が多かったことだ。この意識付けは一般市民もちゃんと覚えておく必要があるだろう。