東急主導で大きく変貌する渋谷 東京の重心は西側に移るかもしれない

2019.11.21

社会

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イメージ:渋谷駅街区共同ビル事業者

2019年11月1日、「渋谷スクランブルスクエア(第1期、東棟)」が開業、渋谷にまた新しい商業施設兼オフィスビルが誕生した。2012年の「渋谷ヒカリエ」を皮切りに渋谷駅周辺は東急主導で大規模な再開発が進んでいるが、スクランブルスクエアはその中核を成す。若者の街だった渋谷は今後、どのような街になっていくのだろうか。

東横線が地下に潜ったことで渋谷駅が変わり始めた

渋谷駅はJR、東急電鉄など4社9路線、1日300万人が利用するほか、都内最大のバスターミナルも有しており、こうした背景から商業施設の充実ぶりは日本屈指だ。忠犬ハチ公の像、その横にあるスクランブル交差点は今や世界中の人が訪れる観光スポットにまで発展している。

ただ、東急を中心に開発、発展してきたとはいえ、渋谷川と宇田川が形成した谷底にある渋谷駅はなかなか拡張がしづらかった。それに加え、地下鉄は別として、昔は線路を地下に持って行くというのは概念としてはあっても、地上に敷くというのが自然だった。時代が発達して線路は高架になったが、国道246号線との絡みもあって、人の流れが特に東西で分断されてきたというのも実情だ。

例えば、道玄坂はラブホテルがあるということは横においても、坂であっても街として発展できることを証明している。しかし、反対側の宮益坂が道玄坂ほど発展できなかったのは、導線の分断の証左であろう。

渋谷が変わり始めたきっかけは、2013年3月に東横線の駅を地下に移動させたことから始まる。これで東横線が副都心線と相互直通運転となったが、それは渋谷駅が単なる通過駅に埋没する可能性が発生し、魅力ある街づくりをしないと衰退すらしかねない状況に陥ったのだ。

地下に潜った分、地上にあった旧渋谷駅の部分がぽっかり大きく空いた。それを利用して一気に再開発の機運が高まった。2020年1月に銀座線の駅は東に130メートルずれ、山手線ホームから遠く離れていた埼京線・湘南新宿ラインのホームも同年春に350メートル北側に移設して、山手線ホームと横並びになる予定だ。

スクランブルスクエアの展望台は悪くないのだが…

再開発では、東急が中心となり「エンタテイメントシティSHIBUYA」をコンセプトとして、渋谷に行けば何か楽しいことがあると思わせつつ、青山、表参道、原宿、恵比寿、代官山など渋谷駅から半径2.5キロ圏内を「Greater SHIBUYA(広域渋谷圏)」として1つの経済圏、都市圏になろうという狙いがある。

具体的な再開発プロジェクトを見てみると、2012年4月の「渋谷ヒカリエ」をスタートに、2018年9月の「渋谷ストリーム」、2027年の「渋谷スクランブルスクエア第2期(中央棟、西棟)」まで9つの施設が誕生する。

  • 2012年4月26日開業 渋谷ヒカリエ
  • 2017年4月28日開業 渋谷キャスト
  • 2018年9月13日 渋谷ストリーム、渋谷ブリッジ
  • 2019年11月1日・2027年度開業 渋谷スクランブルスクエア
  • 2019年12月5日開業 渋谷フクラス
  • 2019年3月29日竣工 渋谷ソラスタ
  • 2023年度竣工 渋谷駅桜丘口地区
  • 2024年度竣工 渋谷二丁目17地区
渋谷スクランブルスクエアの外観

渋谷スクランブルスクエア第1期を少し紹介すると、延べ床面積は18万1000平方メートル、小売の商業施設は213店で、うち日本初上陸7店、渋谷エリア初出店49店だ。確かに個性的な店も数多いが、大きな驚きというほどではない。

ここの最大の売りは、なんといっても高さ230メートル、地上47階(地下は7階)の高さを生かし、14階、45階、46階、屋上に「SHIBUYA SKY」という展望空間を作ったことだ(入場料は窓口では大人2000円、ウェブでは1800円)。特に「SKY STAGE」と呼ばれる屋上にはハンモックがあって、横になって空を見上げることができるほか、ヘリポートにヘリが下りてこない限り、自由に歩ける非常に開放的な空間となっている。

屋上の角に設けられた「SKY EDGE」はスクランブル交差点側のところをガラス張りにして直下に見えるようにした。しかし、ガラス張りの先にも床の一部が少しだけせり出しており、それが邪魔してスクランブル交差点が少々見づらい。せり出した部分をガラスや透明なプラスチックにして東京タワーの展望台のようにしたりするなど、何かすればより見やすくなっただろう。設計ミスとは言わないが、残念な部分ではあった。

中央下に見えるスクランブル交差点は見づらい。

“ダンジョン”から回遊性の高い街に

いま現在、開発途中であり、工事の途中でもあるため、渋谷駅は“ダンジョン”と半分揶揄され(残り半分は、ダンジョンであること自体を喜んでいる人もいるようだ)、迷いやすい場所になっているが、地下通路から高架上の自由通路まで一体的に接続させようとする「アーバン・コア」という歩行者用の“垂直動線”を創出させる。

すべてが完成すると、深く地下化した鉄道各路線からの乗り換えが楽になる。そして、前述の9つの再開発に加え、渋谷駅東口(ヒカリエがある方)と西口(ハチ公がいる方)の広場を結ぶ自由通路が作られることにより、動線が改善されて行き来しやすくなるはずだ。回遊性が向上すれば自然と人が集まるほか、再開発により9つ“箱”が完成すれば企業が進出しやすくなる。

スクランブルスクエアの入口付近。鉄道の標識を見てもわかるように導線をすっきりさせようとしている

東京の重心が、新宿・渋谷がある西に移る可能性も?

渋谷は90年代後半にIT企業が集まる「ビットバレー」と呼ばれ、現在も当時を引き継いだ新しい潮流ができている。2000年以降、東京都内では2300を超えるIT企業が設立されたが渋谷区は588社と最大を誇る。一方で、ハイグレードのオフィスが絶対的に不足しており、ニーズが高まっていた。

そこで、渋谷スクランブルスクエア(東棟)の17階~45階には7万3000平方メートルのハイグレードオフィスを作った。実際には、これが東急最大の収入源となるはずで(家賃収入)、そこにはサイバーエージェント、ミクシィ、ウィーワーク、エヌエヌ生命保険などが入居している。9施設のオフィス総貸出面積では34万6000平方メートルもあり、かつさまざまな需要に対応したオフィスを用意している。

つまり、IT企業に加え、一流企業も進出となれば丸の内と並ぶ一大オフィス街になってもおかしくはないのだ(丸の内周辺は三菱地所などが再開発に力を入れている)。渋谷には東京有数の商業施設、歓楽施設があることから、これらが組み合わさると東京の重心が新宿・渋谷の西に移る可能性すら秘めている。

そしてもう一つ、施設の防災機能についても触れておきたい。今後、南海トラフ地震、台風など大きな天災が発生する可能性が高いこともあり渋谷スクランブルスクエアの商業・展望部門の堀内謙介総支配人は、「災害発生時は(スクランブルスクエアだけで)2800人の帰宅困難者の防災備蓄があります」と答えていた。渋谷ストリームでも3157平方メートル分の受け入れスペースを確保するなどすべての施設に一定規模の受け入れ場所を用意。何よりも、これが一番大きな価値ではないかと筆者は感じている。