安倍首相、在職期間歴代1位に ポスト安倍は安倍? 菅氏に逆風で本命不在

2019.11.20

政治

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写真:つのだよしお/アフロ

安倍晋三首相の通算在職日数が11月20日で2887日となり、桂太郎氏を抜いて単独トップとなった。最初の就任時はわずか1年で退任に追い込まれたが、民主党政権を経て再登板後は抜群の安定感を保っている。しかし、任期が残り2年を切った現在もポスト安倍は本命不在の状態。“安倍後”の政治に不安の声も聞かれる。

【歴代首相の通算在職日数(2019年11月20日現在)】

1位 安倍晋三 2887日
2位 桂太郎 2886日
3位 佐藤栄作 2798日
4位 伊藤博文 2720日
5位 吉田茂 2720日

「桜を見る会」批判でも揺らがない7年目の安倍政権

安倍氏が最初に首相に就任したのは2006年9月。この時は「消えた年金問題」に加えて閣僚の政治資金問題による辞職が相次ぎ、自身の体調不良も加わって1年で退任した。

しかし、福田康夫、麻生太郎両首相や民主党政権を経て、2012年12月に再び首相の座に就いてからは“安倍一強”とも称されるほどの安定感をみせている。本来、2期6年だった自民党総裁任期も3期9年に延長。ここにきて閣僚が相次ぎ辞任に追い込まれ、「桜を見る会」の問題が批判にさらされていても揺らぎは見えない。

FNNが16、17両日に行った最新の世論調査によると、内閣支持率は45.1%(不支持率は37.7%)。閣僚の辞任や桜を見る会騒動の影響で10月の調査から6ポイント下落したとはいえ、政権発足から7年がたっても50%近い支持率を維持しているというのは驚異的だ。野党は「ここが攻め時」とばかりに攻め立てているが、一般的に危険水域とされる30%割れには程遠い。

安倍政権、安定運営のヒミツ

高支持率の背景にあるのは景気の安定と徹底した官邸主導による政権基盤の安定性がある。一般的に内閣支持率と日経平均株価は連動性が高いといわれているが、安倍首相が2012年に再登板した際の株価は1万230円。アベノミクスなどへの期待から株価は上昇し、現在は2倍以上の2万3000円台で推移しているので、株価上昇によるメリットがある有権者は自然と安倍政権を支持することとなる。

徹底した官邸主導も政権基盤安定の秘訣だ。派閥が強かった時代は首相といえども自由に政権運営できるわけではなく、いちいち党にお伺いを立てながら政策を進める必要があった。しかし、安倍政権では権限を官邸に集中させ、菅義偉官房長官を中心に何でも官邸で決めてしまう体制を築いた。

安倍政権下で生まれた「政高党低」という言葉は、政府が強くて、政党、つまり自民党が弱いという意味。当初は自民党内にも政府の方針に異議を唱える議員がいたが、人事権や公認権などで押さえ込んだ結果、いつしか官邸にたてつく議員はいなくなった。

人事にも秘訣がある。首相は政権ナンバー2の副総理に、首相経験者である麻生太郎氏を起用。これにより首相の出身母体であり、最大派閥である細田派と、第2派閥である麻生派を押さえた。さらには第4派閥である岸田派の岸田文雄会長を重要閣僚や党の中枢で起用し、自らの後継も匂わすことで押さえ込んでいる。

とどめは2016年から自民党幹事長に起用した二階俊博氏。政策的に安倍首相とまったく共通点はないが、老獪でこわもての二階氏を自民党の実質トップに就けることで、党をうまくコントロールすることに成功した。しかも、二階氏が率いる二階派は岸田派に並んで第4派閥。主要派閥をこれだけ味方につければ怖いものはないというわけだ。

しかも、よりによって野党が弱い。かつての最大野党で、一時は政権を奪われた民主党は政権陥落後に分裂。立憲民主党や国民民主党、無所属などに分かれ、存在感は低下するばかりだ。しかも、野党各党はかつての社会党のように与党の足をひっぱるばかりで、何をしたいのかよくわからない。支持率はいずれも一桁にとどまり、自民党を脅かす存在にはなっていない。

誰がやっても失敗する?ポスト安倍が不在に

安倍首相は安定政権の下でアベノミクスによる景気回復や安保法制の整備、憲法改正の土壌整備を成し遂げ、米トランプ大統領が誕生したり、沖縄で米軍基地反対運動が盛り上がったりするなかでも良好な日米同盟関係を維持してきた。一方で、2度の消費増税を経ても財政健全化はほとんど進んでおらず、膨れる一方の社会保障給付の抑制策や少子化対策、東京一極集中の是正など手つかずともいえる政策分野も数多い。長期政権ではどうしても政策の偏りが生まれてしまうため、ポスト安倍の課題は重たい。

ところが、安倍首相の人気が残り2年を切ってもポスト安倍の有力候補が出てこない。ポスト安倍というと最近では石破茂元幹事長や岸田政調会長、河野太郎防衛相、菅官房長官らの名前が挙がる。このうち、石破氏は知名度が高く党員にも人気があるが、党内での評判が芳しくない。身内の離反も相次いでおり、最近では20人の推薦人を集めるのも難しいとの声が出る。岸田氏や河野氏にも一定の評価の声はあるが、決め手に欠く。

最近で最もポスト安倍に近づいたといわれていたのが菅氏。菅氏であれば安倍政権の流れも引き継げるため、政権の安定が続くという見方もあったが、ここにきて逆風が吹いた。スキャンダルで辞任に追い込まれた菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相はいずれも菅氏の側近。両氏とも閣僚就任を不安視する声があったものの、菅氏が無理やりねじ込んだともいわれている。さらに、世間で批判にさらされている桜を見る会の担当は菅氏が率いる内閣官房。菅氏の責任を問う声は党内で少なくない。

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となると、国民人気の高い小泉進次郎氏に目が向くが、小泉氏も入閣以降、評価がガタ落ち。“将来の首相候補”ではあるものの、ポスト安倍となると時期尚早の観はぬぐえない。結局のところ、本命不在のままである。

自民党内では二階幹事長などから「首相任期の再延長」論が出ている。安定政権は政策推進力が強かったり、外交力が強かったりするメリットがある反面、森友学園問題のような「忖度」政治や、桜を見る会のような政権の私物化の問題、さらには政策の偏りができてしまうなどのデメリットもある。「ポスト安倍は安倍」、というのが安倍政権の最大のリスクかもしれない。