「中曽根元首相は地位に関係なく紳士な方でした」全生庵・平井住職

2019.12.05

社会

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中曽根康弘元首相(左)、平井玄恭6世全生庵住職 写真:全生庵

11月29日、中曽根康弘元首相(満101歳)が逝去されました。首相になる頃から坐禅に通われていたという禅寺・全生庵(谷中)の平井住職に、中曽根元首相とのエピソードを聞きました。

生前、中曽根元首相と最後にお会いしたのは2年前でした。先日訃報があってうかがった際も、そのときと同じお顔をされていたように思います。

中曽根元首相は現職時代、5年間、週1回は全生庵にいらしていました。当時私は中学3年生。今思うと、私自身初めて会った政治家が現職総理大臣だったのですよね。

総裁選の4~5日前、ある日、私が塾から帰ってきたら「中曽根さんが来ている」と。そこからすぐ総理になられて。中曽根元首相は坐禅を組みにいらっしゃるのですが、私も一緒に坐らされることもあるわけです。体も大きかったし1時間半、まったく動かない。岩のような姿が印象的でした。

先代が亡くなってからは、私が中曽根さんの相手をするようになりました。私はそのとき25歳です。相手は75歳。正直、嫌でしたね(笑)。中曽根元首相はいらっしゃると必ず、床の間の掛け軸に目をやり、その意味を問うてきます。それまでに何年も通われているのだから、「知ってるだろ!」とこっちは思う。仕方がないので事前に知らべておいてテープレコーダーのように話すのですが、本に書いてあることを話すだけなので自信はなく(笑)。

人は知っていることを言いたくなるものですが、中曽根さんは違った。「そうですか、そうですか」を聞いてくれる。どこか試されているような感覚がありました。

掛け軸なんて誰も見ていないでしょうに、あんなことをするのは中曽根元首相だけでした。人は地位や名誉や財産を持つと人を目下に見たり侮ってみたりしますが、そういうことに関係なく紳士な方でした。

ご自身が戦争の体験もあって、戦後の日本をつくってきたという自負心を強烈に持っていたと思います。あるとき歌舞伎にご招待したことがありましたが、知り合いが「中曽根さんが歩くと『君が代』が聞こえてくるね」と言っていたのを覚えています。国家に対する責任があった。

あちらでも政治家をなされるのだろうな。