変わる日本の年末商戦 イベントを仕掛け続けられるかが肝心

2019.12.06

社会

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日本では12月のボーナスやクリスマスが近づくと年末商戦が始まり歳末に向けて盛り上がっていくのが通例だったが、2019年に入り「ブラックフライデー」という言葉が本格的に巷を闊歩しだしたことで、時期が11月末に繰り上がった印象がある。2016年くらいから始まってはいたようだが、今年目立ったのはたぶん、アマゾンジャパンあたりが参戦したからだろう。人口減の日本において小売業が売上を確保するための苦肉の策ともとれるが、海外からの“輸入品”を取り入れたことで年末商戦に変化が起きているようだ。

イベントごととしては成功?

そもそも「ブラックフライデー」はアメリカの感謝祭翌日の金曜日を指す。クリスマス商戦を勢いづけるために始まったともいわれており、まさにマーケティングサイドが主導してが仕掛けたイベントだ(筆者は、カナダに住んでいたことがあるが、クリスマス翌日のボクシングデー[こちらも大幅な割引セールがある]のほうがブラックフライデーより気合が入った)。

マーケティング、またはアイデアという意味では中国におけるアリババの「独身の日」のセールスもここ数年日本では大きな話題となっている。

日本で「○○商戦」などの言葉が定着しているのは「バレンタイン」、「クリスマス」、「年末年始」、「ボーナス」(夏・冬)あたりだろう。そのほかにも、いろいろ小売業は仕掛けているようだが、「ブラックフライデー」もその一環だといえる。

国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!」(ONE COMPATH)が10月に行った調査によると、ブラックフライデーの認知度は75.1%もあった。全体としてポジティブな受け取り方をしているが、一部はネーミングにネガティブなイメージを持っている意見も。

諸説あるが、アメリカにおいてはセールスで黒字が増えることから「ブラック」としているようだが、日本人にとって「ブラック/黒」は、40代以上の人なら「ブラックマンデー」、最近では「ブラック企業」、「黒歴史」など、あまり良いイメージがない。暗いイメージに結び付ける人がいたのも頷ける。

また、ブラックフライデーは宗教絡みのイベントだ。感謝祭はクリスマスと同じでキリスト教のイベントであるから日本とは関係が薄い。クリスマスならまだ「キリストが生まれた日」とわかりやすいが、感謝祭となると何に感謝するのかを知っている日本人がどれだけいるのだろうか。

感謝祭の夜、筆者は日本在住のアメリカ人、カナダ人、オーストラリア人、日本人らと食事をしたが、アメリカ、カナダ人は七面鳥を見て歓声を上げ、グレイビーソースとクランベリーソースを見て懐かしんだ。一方、感謝祭の文化のないオーストラリア人と日本人はもの珍しがりながらもおいしそうに食べており、ある種のコントラストが面白くもあった。

ブラックフライデーは小売業のほかにも日本在住外国人をターゲットにしたレストランを視野に入れると、1つ売上を伸ばすツールになるかもしれない。

定着の鍵は“身近”と“投資”

今年のブラックフライデー期間中は仕事で大阪に滞在していたのだが、あまり効果がなかったのか道頓堀の戎橋(えびすばし)横にあるH&Mでは「Black Friday」の文字が12月2日になっても窓に張られていたのが、少し悲しくもあった。

しかし、日本らしく他文化を取り入れ、日本風にアレンジするという意味ではブラックフライデーは上手だったと思う。11月23日の勤労感謝の日を絡めて1週間程度、年末商戦の期間を延ばすことに成功したからだ。

日本はこれから人口減になっていく社会なので、小売業としては売上を増やすために、イベントを仕掛けるか単価を上げるしかない。しかし、実質給与があまり上昇しないなかでは単価が上がりにくい。そうすると、イベントを仕掛けて需要を喚起するしかないのが実情だ。

ブラックフライデーはそうした窮余の策ともいえるが、うまくハマれば大きな商戦になるのは間違いない。というのは、賃金が上がらないことで普段の生活は節約するものの、好きなものへの“投資”は惜しまないからだ。海外からの“輸入イベント”に日本らしさを加えて定着させ、投資させるには、どうしたらいいのだろうか? 鍵は“身近”または“自分に直結”だと思う。

キリスト文化であるバレンタインがここまでうまくいったのは「恋愛」がベースにあったからだ。恋愛ごとに関心のない人間はいない。“女性側が告白”するという日本独自のスタイルを生み出したことも大きい。

ハロウィンはここまで発展したアニメなどのサブカルチャーと、それに付随する“コスプレ”との親和性が高かった。しかも、子どもも楽しめるイベントであるため子どもへの投資を惜しまない親も抵抗がなかった。仕掛けるのが30年早かったら渋谷で大騒ぎするほどのイベントになることはなかっただろう。

マーケティングサイドには仕掛け続ける粘り強さが必要

これだけインターネットが普及し、SNSが発達した今、情報の洪水になっており、発信したばかりの情報も1時間後には情報の波に飲まれてあっという間に古い情報になっていることが少なくない。顧客に忘れられないためには、マーケティングサイドからどんどん仕掛けていく必要があるのは間違いない。

筆者が会社を構える香港では、クリスマスから正月、旧正月まで「セール」→「大セール」→「最終セール」→「最終大幅割引セール」などと言葉を変えて少しずつ割引率を大きくして断続的にセールを仕掛けていく。「継続は力なり」で、ブラックフライデーにしろ、日本らしい新しいアイデアが生まれたとしても、それを粘り強くやり続けていく、または何かを仕掛け続けていくしかない。