平将明の『言いたい放題』

防災は新たな局面へ 巨大化する自然災害に対する政府の取組

2019.12.11

政治

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台風19号、長野県 写真:ロイター/アフロ

2019年は数十年に一度といわれる災害が頻繁に起きました。福岡・佐賀・長崎を襲った九州北部豪雨(8月)、関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な暴風や豪雨災害となった台風15号(9月)および台風19号(10月)は、各地に甚大な被害をもたらしました。予測できない自然災害の脅威に対して、国はどのような対策を行っているのでしょうか。「初動が遅い」という声もありますが、一般的にはあまり知られていない災害対策チームがあるようです。内閣府副大臣で防災を担う平将明衆議院議員に詳しく聞きました。

従来の災害支援システムをカバーする各省庁の災害対策チーム

2011年の東日本大震災をはじめ、2016年の熊本地震、昨年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震などを経て、政府では防災に対していろいろな機能や仕組みを持つようになりました。防災担当としては、これからの防災対策はこれまでとは違うアプローチで取り組みたいと考えています。

そのひとつが被災地への積極的な派遣です。今回の台風15号では初動対応が遅れていたのではないかと批判されましたが、実際には台風が来た次の日には自衛隊国土交通省の連絡員が現地へ入っているほか、内閣府経済産業省の連絡員や専門的な知識を有する者が順次被災地へ入りました。そういう人たちが現地からいろいろな情報を上げて、その情報を基に各省庁の災害対策チームが動くという仕組みが出来ています。

被災地への積極的な派遣を行うための組織のひとつが国土交通省の「Technical Emergency Control FORCE(緊急災害対策派遣隊)」、通称TEC-FORCE(テックフォース)です。いわゆる土木などの専門家がいち早く現地に入って、例えば決壊した河川の応急対応や早期復旧などに対して技術的なサポートするチームです。台風19号のときは、10月10日~24日までの15日間で延べ8810人が被災地に入りました。

厚生労働省には「Disaster Medical Assistance Team(災害派遣医療チーム)」、通称DMAT(ディーマット)というチームがあります。医師、看護師、業務調整員で構成されており、災害急性期(48時間以内)に活動できる機動性を持っています。例えば孤立した病院を見つけ出して支援する、といったことが行われています。

情報の地図化で被災状況を“見える化”する内閣府のISUT

私が副大臣を務めている内閣府にも災害対策チームがあり、「Information Support Team(災害時情報集約支援チーム)」、通称ISUT(アイサット)といいます。

ISUTの役割は「Shared Information Platform for Disaster Management(基盤的防災情報流通ネットワーク)」、通称SIP4Dを活用し、被災地での情報の収集、整理、地図化を行い、各機関の状況把握を支援することです。

例えば、豪雨被害があって、停電などの被害状況を地図化すると、どこに雨量が多くて、どこが停電しているかというのがわかります。ほかにも崖崩れの場所やどの道路が使えるか使えないかという情報を重ねると、どこの避難所を優先的に救うべきか、その避難所に物資を届けるためにはどのルート行けばいいかなどがわかります。

実際に台風15号のときはISUTが千葉県に入り、県庁の巨大なディスプレイを使って地図を表示し、各機関をサポートしました。

迅速な支援・救助に駆けつける自衛隊

これまでの災害支援の仕組みは、市町村などの自治体が「こういう被害があります」と都道府県に支援要請を上げて、都道府県はそれをさらに政府に上げてようやく各省庁が動き出すというものでした。しかし、被害が大きい市町村ほど行政が機能していない可能性が高いので、待っているだけでは一番に助けに行くべきところの情報が伝わってこず後手になることもあり得ます。

市町村、都道府県、国という連絡ルートのベクトルは変わりませんが、現在は各省庁の災害対策チームが市町村からの連絡を待つことなく、さまざまな手を打つようになっています。

消防、警察、自衛隊などでいうと、台風19号のときは最初の24時間のうちに、消防は6万6000人、警察は1万3000人、自衛隊は3万1000人が出動しました。ヘリコプターは一日あたり約100機、排水ポンプ車は200台がフル稼働、海上では“護衛艦かが”がヘリコプターの拠点として使われました。ほかにも海沿いに艦船を着けて、給水支援や入浴支援も行いました。

自衛隊は原則、都道府県知事らの災害派遣要請を受けた防衛大臣が命令して派遣されますが、現在は、大規模災害においては都道府県からの要請を待たずに動けるようになっています。

台風19号の神奈川県山北町の給水支援要請の例では、町から県の災害対策本部に要請が出ていたなか、先行して自衛隊の給水車が現地で待機していましたが、県企業庁が準備を整えていた給水車があったため、活動には至らなかったということがありました。このように空振りになることがありますが、政府はそれを待たずに空振りを恐れずに先手を打って準備をしております。

“局面”が変わった

アメリカには、「Federal Emergency Management Agency(連邦危機管理庁)」、通称「FEMA(フィーマ)」というのがあります。ある一定の規模を超えたり、被害が広がった非常時になったりすると、州知事から大統領宣言発令が要請され、大統領が大規模災害宣言か緊急事態宣言を発令します。そうなると地方自治体からの要請を待つまでもなくFEMAを中心とした連邦政府判断に切り替わり、それに伴う予算も大統領直轄になります。同組織は、そうした発災時等の対応の訓練も充実しています。

災害の規模が一定を超えたらFEMAのように命令のベクトルが転換し、連邦政府(国家)主導で迅速に非常時対応が行えるようにするというのも、“巨大災害時代”のこれからは必要かもしれません。

ベクトルを変えるのはものすごい大転換です。しかし、毎年のように起こる記録的な猛暑や豪雨、そして今回の台風など、自然災害の威力や被害が拡大しているのを鑑みれば、“局面”が変わったとみるべきです。

民間でも以前は台風が来ていても電車は動いていたし、コンビニも開いていましたが、最近は、鉄道会社による計画運休も認知されはじめ、それに伴ってスーパーやコンビニも早めに閉店するところが増えました。自然災害に対する国民の危機意識も変わったと思います。いろいろな状況が変わったということは、国もより対応を強化しなければいけないですし、今こそ、官・民問わずあらゆる知恵を動員すべきだと考えています。