平将明の『言いたい放題』

未来の防災対策はIT・イノベーション・宇宙がカギになる

2019.12.12

政治

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年々、被害の度合いを強める自然災害。防災対策もアップデートが迫られていますが、時代や環境の変化に合わせた、これまでにない防災対策にはどのような案があるのでしょうか。内閣府副大臣として防災を担務しながらIT政策、宇宙政策、科学技術・イノベーション政策にも精通している平将明議員ならではのアイデアを聞きました。

治水だけで防災対策はしきれない

今年上陸した台風15号(9月)と19号(10月)をはじめ、自然災害の威力、被害の大きさというのは年々、拡大しています。地球温暖化問題とも照らし合わせれば、地球環境や自然災害というのは新たな局面に入ったと考えられます。

台風19号の大雨で千曲川(長野)が決壊 写真:The New York Times/Redux/アフロ

それに伴って、防災対策も従来のままではカバーしきれない点もあります。そのために、厚生労働省は災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」、国土交通省は土木の専門家を擁する緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE(テックフォース)」、内閣府は災害時情報集約支援チーム「ISUT(アイサット)」等が迅速に各地に派遣されるなど、初動における防災対策を進めています。

平時においては治水政策(河川改修・流域対策等)も進めていまして、今回では首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)、通称「地下神殿」と呼ばれる地下放水路がフル稼働しました。周辺の河川の水を引っ張って貯めて江戸川へ放流するのですが、それでも江戸川は持ちこたえました。荒川も調節池や堤防等で大規模な氾濫をなんとか防ぎました。

日本は断面図で見ると、幅が狭くて大きな高低差がある地形です。雨が降ると一気に水が流れ落ちるので、治水は地下放水路や調節池などで水をどうやって分散するかということが重要です。今回の台風被害では多くの河川が氾濫し、治水の重要性も知らしめたと思います。

こういった地下放水路や調節池をもっと造ることができればいいのですが、予算もかかるし、時間もかかります。例えば首都圏外郭放水路でいうと、着工は1993年で全区間の完成は2006年、総工費は約2300億円です。

今回の台風被害で治水に対する意識は変わっていくのではないかと感じていますが、だからといって今すぐそういった工事を首都圏だけでなく、日本全国できるかというと難しい。治水も進めながら、さまざまな視点から総合的に手を打つ必要があると考えています。

災害情報を利用者に最適化するAIチャットボット

内閣府には重要政策に関する会議のひとつに総合科学技術・イノベーション会議というのがあり、その中で生まれた国家プロジェクトに「Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program(戦略的イノベーション創造プログラム)」、通称SIPというのがあります。SIPには「防災」もテーマに含まれており、ISUTが活用している「Shared Information Platform for Disaster Management(基盤的防災情報流通ネットワーク)」、通称SIP4Dも成果のひとつです。

さらに言うとSIPに参画する研究開発機関が中心となって設立したAI防災協議会というのもあり、これは防災科学技術研究所やLINE社などが参加していて、産官学が一体となってAIやSNSなどを活用した防災対策に取り組んでいます。

例えばLINE社が開発したものではAIチャットボットがあります。災害時に被害状況についてAIと会話をすることで必要な情報を教えてくれる仕組みで、台風15号の際は、千葉県がLINEを使ったAIチャットボットを導入し、そこから情報を手に入れることができました。

LINEを使ったAIチャットボット「千葉県災害2019」

さらに、LINE社も支援機関になっている「Riskmap Japan(リスクマップ・ジャパン)」は、SNSを介してやりとりされる被害情報を地図に反映することができ、自治体はそれを基に優先順位を付けて災害対応することが可能になります。将来的にはスマホで災害情報を手に入れるだけでなく、みんなが情報をアップして体系化される世界が目前に来ています。そうなると、次は面から点へ、一人ひとりに最適な情報を流すことも可能になるでしょう。

大規模・広域避難を解決するアイデアとしてのシェアエコ

ほかにも内閣府では重要政策に関する会議として中央防災会議を行っています。そこでは「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難検討ワーキンググループ」があり、災害時に数百万人が避難するケースを想定して検討を重ねています。

●警戒レベル

レベル1:心構えを高める(発表・発令は気象庁)
レベル2:避難行動の確認(気象庁)
レベル3:高齢者をはじめ避難に時間を要する人は避難(市町村)
レベル4:全員、安全な場所へ避難(市町村)
レベル5:すでに災害が発生している状況。命を守るための最善の行動を(市町村)

仮に荒川が氾濫すると最大で約270万人に被害が及ぶといわれています。しかし実際には、「じゃあどこに避難すればいいの?」という問題があります。

これはまだアイデアの域を出ていませんが、避難場所や避難所については公共の施設だけでは何百万人も収容できないので、私はシェアリングエコノミーを活用することを考えるべきだと思います。今はAirbnbなどの民泊も普及しつつあるし、その中にはイベント民泊のような期間限定の宿泊形態もあります。それと同様に避難指示等が想定される場合にその区域から域外に避難するような「防災民泊」というのを検討してもよいのではないでしょうか。

さらに避難指示が出ても半日前や1日前だと、電車は計画運休しているはずですから簡単には動けないでしょう。少なくとも避難指示のタイミングを48時間前とか72時間前とか、もっと手前に持っていかないといけない。そうすると今度は空振りの可能性が高くなるわけですが、そのリスクを自治体の首長が背負えるかというと難しいでしょう。

同様に、現段階では個人のアイデアですが、例えば、避難指示については、荒川のようなリスクが高く被害が非常に広範囲に及ぶものは例外的に自治体ではなく国が直接出すという転換も考えらえると思います。もちろんこれは現実にやるとなったら大きな変革になりますから、いろいろなコンセンサス(合意)を得ないといけないでしょう。

また、防災に活用できる技術やアイデアについては、内閣府にある宇宙開発戦略推進事務局にもあれば提案してほしいと伝えています。その中で考えられるのは、準天頂衛星システム「みちびき」の利用です。「みちびき」の衛星測位システムは日本版GPSというべきもので、高精度で誤差は数センチ程度です。このシステムを使えば、例えば地すべりの状況をモニタリングして、避難に役立てたり、正確な被害状況を把握したりすることが期待されます。

マイナンバーカードをスマホに取り込み、罹災証明も発行

防災に活用できるものとして、最も現実的なのはマイナンバーです。マイナンバーカードに紐づけられた情報をスマホ専用アプリ「マイナポータルAP」(対応デバイスはこちら) で取り込めるようになったので、今後、被災した際は被災状況をスマホのカメラで撮って、マイナンバーの情報と共に役所へ送信することで罹災証明書がもらえるようになることも期待されます。将来的には、さらに罹災証明書を必要な部署や民間の保険会社に送ることで支援金や補助金、保険金などがスマホのウォレットやネットバンクに振り込まれるといったことも可能になるかもしれません。

スマホやネットというのは日常だけでなく非常時においてもますます欠かせないものになっていきます。実際に、今回の台風ではスマホを使いこなしている人がいち早く避難所にやってきたというケースが各自治体で起きました。現状のままでは情報を取れない高齢者が出遅れるということになりかねないので、さらなる周知が必要でしょう。

今後は超大型台風がさらに頻繁に来ることも予想されていますので、今までとは次元の違う防災体制をつくる必要があります。堤防の強化など治水についても財政や合理性を見ながらやらなければなりませんが、こういったITテクノロジーや宇宙開発技術などもフル活用しなければ対応できません。

とはいえ、地球的な気候変動が、異常気象が起きる最大の要因となっていると思います。防災対策も考えながら、総力戦で地球温暖化と向き合わなければいけないと考えています。