再エネだけじゃない!日本で開発中の次世代エネルギー3選

2020.01.27

社会

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燃える氷、メタンハイドレート

写真:Alamy/アフロ

世界各国のリーダーや識者が一堂に会するダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)が閉幕。会期中、その話題は「気候変動」に集中した 。

環境問題への取り組みとして世界のトレンドは「脱炭素」に向かっているが、無資源ゆえに石炭火力を抜け出せず、再生可能エネルギーにも踏み切れない日本は、世界的にも周回遅れのイメージだ。

しかし実は、日本でも“地球にやさしい”と国家安全保障とを両立させた次世代エネルギー開発を地道に続けている。今回はその中でも有望な3アイテムを紹介しよう。

1.「CO2」の活用で石炭を地球にやさしいエネルギーに

地球温暖化の元凶であるCO2(二酸化炭素)。そのCO2を逆手に取る研究が進められている。

2019年3月に東芝はCO2を燃料に素早く転換できる装置を開発し、2020年代後半の実用化を目指すと発表した。金の微粒子を伴った高分子触媒電極と電気を使ってCO2と水(H2O)を化学変化させ、可燃ガスのCO(一酸化炭素)を生成するというものだ。

同社は同技術を長年模索し続けて来たが、今回新型の触媒電極を開発したことでCO変換速度は従来と比べて450倍にアップ、もちろん世界最高水準のテクノロジーである。

将来的にはCO2を大量に排出する石炭火力発電所などにこの装置を併設し、太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電で得られた電力や余剰電力などを活用して稼働、生成したCOは火力発電の燃料や化学製品の原材料として再利用する。

同技術が実用化すれば、“CO2垂れ流しの権化”と指弾される石炭火力が汚名返上できるだろう。無資源国・日本にとって石炭は低コストで調達も容易、天候に左右されないベースロード(土台となる)電源であり、国家安全保障上極めて重要なのである。

2.「アンモニア」がカーボンフリー燃料の筆頭に?

“臭い匂い”でおなじみのアンモニア(NH3)が燃料として、さらには水素ガス(H2)を効率的に活用する「エネルギー・キャリア」として注目されている。

クリーン・エネルギーとして水素ガスの活用が進むが、最大のネックは取り扱いの難しさ。ガスは加圧や冷却により液化して容量を格段に圧縮し輸送・貯蔵するのが一般的だが、水素ガスは-253℃まで冷やさないと液化せず、これに必要な電力やこれに耐える貯蔵タンクのコストもバカにならない。また水素ガスは引火・爆発しやすく、取り扱いにも細心の注意を要する。

そこで、水素ガスを、引火・爆発の危険性がはるかに低いアンモニに変換して活用するという発想が誕生した。アンモニアは通常無色の気体で可燃性ガスでもある。ただし化学組成を見れば分かるように炭素(C)を含まず、燃やしてもCO2は出ない。さらに-33℃以下の冷却、もしくは8.5気圧以上の加圧で容易に液化できハードルは非常に低い。

「エネルギー・キャリア」はまさにこの特性を活用したもので、水の電気分解で生成した水素ガスをアンモニアに転換(N=窒素は大気中にふんだんに存在)し、これを液化して安心・安全に消費先に輸送し貯蔵する。水素ガスを使用する時はアンモニアを電気分解すればいいわけで、各工程で使用する電力はすべて再生可能エネルギー発電の電力または余剰電力で賄うのがミソだ。

日本はこの種の技術でも世界の先端を走り、2015年に産業技術総合研究所(AIST)と東北大学が共同でアンモニアだけを燃料にした出力50kW級のマイクロガスタービンによる発電に世界で初めて成功した。アンモニアは燃焼速度が遅く炎が不安定なのが難点なのだが、これを制御することに成功したのだ。

続いて2018年4月にはIHIが天然ガスにアンモニアを20%混ぜた燃料で出力2MW(2000kW)級のガスタービンを世界で初めて稼働、既存の液化天然ガス火力発電への応用に道筋をつけた。

さらに同年5月にはアンモニアだけを燃料とした1kW級の燃料電池の稼働にも成功、こちらも世界初の快挙だ。特に後者の場合、燃料電池の燃料として必要な水素ガスをアンモニアから抽出する改質器などが不要であることを意味し、コスト、効率両面で大いに有効である。

3.「メタンハイドレート」日本沖合に眠る“燃える氷

“燃える氷”メタンハイドレート
“燃える氷”メタンハイドレート

日本列島の周辺海域の海底に大量に眠るメタンハイドレート(MH)。「高水圧・低温」の深海底のさらに地下という特殊環境の中、メタン分子(CH4)の周囲に水分子(H2O)が取り囲みシャーベット状となった物質で“燃える氷”とも呼ばれる。

特に太平洋の南海トラフ海域に大量に存在するようで、近年の調査では同海域東部に原始資源量で約1.1兆㎥存在すると推計。これは、液体天然ガス換算すると約8.4億tにも当たり、2017年の日本の液体天然ガス輸入量約8400万tの10倍に当たる。

日本は経済産業省主導で産官学協同チーム「MH21研究コンソーシアム」を結成し、2001年度~2018年度に3フェーズに分け地質調査や試掘を実施、2017年4~7月には渥美半島沖~志摩半島沖のガス生産試験で24日間の連続産出(計約22万6000㎥)を記録した。

2023年度からは第4フェーズに移行し、商業化を見越したより大規模な試掘に挑むようで、仮に画期的かつ低コストの採掘・生産技術が確立され、かつ採算ベースに乗るほどのメタンガスが産出されれば、無資源国日本にとってはエネルギー安保の観点からも計り知れない恩恵を受けることになる。

ただし現状ではあまりにも高コストで、一説には「100万BTU当たり200ドルを下らない」とも言われている(BTU=英国熱量単位。1BTUは約0.25カロリー)。ちなみにシェールガス革命に沸くアメリカの天然ガス価格は同基準で約3ドル、比較的高コストの日本の液体天然ガス調達価格は約10ドルで、はやり桁外れに高い。

ただし日本のメタンハイドレート技術は世界トップクラスで、「いざとなれば日本は自前でメタンハイドレートを採掘するぞ」との姿勢を対外的にアピールすることは、エネルギー安保や液体天然ガス輸入の際の価格交渉の際の「値切り」カードとして有効だ。

また、2050年代には世界の化石燃料がピークを迎えるともいわれており、この時にメタンハイドレートの生産技術を確立・保持する国家は有利、とも見られている。

地熱や木質バイオマスなどの再エネも有効

このほかにも、再生可能エネルギーではあるものの、「地熱発電」や「木質バイオマス発電」は有効だろう。

地熱発電は、世界屈指の火山国・日本を考えれば明らかで、近年のFIT(固定価格買い取り制度)を追い風に小規模な「バイナリー発電」(比較的沸点の低い液体を媒体に使ってタービンを回すため、比較的低温度の蒸気・温水でも発電が可能)が増えている。

木質バイオマス発電の場合、国土の7割近くが森林という日本の事情を考えれば、木材、とりわけ間伐材や未利用材を燃料にした小規模な火力発電を建設し、「地産地消」の電力に徹すれば、森林保全や林業の活性化や、CO2削減(木材は大気中のCO2を吸収して育つので、プラス・マイナス・ゼロとなる)に利する可能性が高い。

とはいうものの、両者とも大きな課題を抱えているのも事実。地熱発電は景観の保全や既存温泉地への悪影響、木質バイオマス発電は木材コストなどが課題となっており、理想論だけではうまくいかないのが実情だ。