ブレグジットで世界に広まる自国主義。国際秩序はどうなる?

2020.01.31

政治

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英のEU離脱 欧州会議

写真:ロイター/アフロ

イギリスが31日23時(日本時間2月1日8時)に欧州連合(EU)から離脱する。EUの加盟国が離脱するのは、前進組織を含めた60年余の歴史で初めてだ。アメリカのトランプ政権に続くかのようにイギリスのジョンソン政権が「自国の利益優先主義」に突き進む中、国際秩序がどう変化していくのか、各国にどのような影響を与えるのか、日本を含む世界中から注目が集まる。

ブレグジット移行期間の混乱は必至

欧州議会は29日にベルギーの首都ブリュッセルで本会議を開き、離脱協定を賛成多数で可決した。イギリスはすでに離脱に向けた手続きを済ませており、これでイギリスのEU離脱への環境が整った。前身である欧州石炭鉄鋼共同体が1952年に発足して以来、EUの加盟国は初めて減り、27か国となる。

離脱により欧州議会にイギリスから選出されている議員73人が失職するが、ただちにイギリスの経済や市民生活に影響が出ることはない。離脱協定では今年12月31日までを移行期間としており、その間はEU時代の制度が継続されるためだ。イギリスの国民にもEU法が適用され、人の移動も自由、関税ゼロも維持される。

だが、イギリスの輸出入の約半分を占めるEUとの自由貿易協定(FTA)など、移行期間中にまとめなければならない課題は山積している。ジョンソン政権はEU時代のようにEU加盟国との貿易で関税ゼロの恩恵は受けつつ、産業界が求める規制緩和を進めたい考えだが、それではEU側が「いいとこどりだ」と反発するのは必至。自国の利益とEU側の要求とのすり合わせという難しい交渉を迫られる。

日本がEUと結んでいる経済連携協定(EPA)も移行期間の終了とともにイギリスに対しては効果を失う。イギリスには約1000社の日系企業があり、EPAの効果が切れれば日本経済への影響も小さくない。

さらに、イギリスは日本を含めた約20か国・地域と通商交渉しなければならず、年内にすべてをまとめることができるのか疑問視する声がある。離脱協定ではイギリスとEUが合意すれば移行期間を最長で2022年末まで延長できることとしているが、ジョンソン首相は延長を否定。ジョンソン首相は「我々は今年の終わりまでにブレグジットを仕上げられる」と強気だが、年内に決着できなければ大きな混乱が生じる可能性がある。

約3年半…長かったブレグジットまでの道のり

イギリスがEU離脱を決めたのは2016年にさかのぼる。移民流入や通商交渉への不満の高まりからキャメロン政権下で国民投票を実施したところ、投票者の51.9%が離脱を選択。EUからの離脱、いわゆる「ブレグジット」の方針が決まった。メディアの多くは残留との見方をしていただけに、世界中に衝撃を与えた。離脱に否定的だったキャメロン首相は失意の中、退陣した。

しかし、政権を引き継いだメイ首相がEUと国内との意見を調整することができず、総選挙では与党が過半数割れ。EUとの間でまとめた離脱協定案もたびたび議会で否決され、2019年7月、辞任に追い込まれた。混乱が続く中、“合意なき離脱”に追い込まれるとの見方も高まっていた。

後任となった離脱強硬派のジョンソン首相は局面を打開するため、法律を改正してまで総選挙を実施。「EU離脱」を争点に掲げ、明確な方針を打ち出せなかった労働党を退け、与党保守党を圧勝に導いた。議会の壁が取り払われたことでジョンソン政権は早急にEU離脱関連法をまとめ、2020年1月末での離脱が確定したのだ。国民投票から実に3年半の月日が流れていた。

欧州統合の背景にあるのは、第二次世界大戦への反省だ。欧州内の分断や衝突を避け、アメリカ・ロシアのはざまで低下しつつある欧州の影響力を高めるため、段階的に結びつきを強めていった。現在のEUの形になったのは1993年。その間に加盟国は増え続け、2013年のクロアチア加盟で28か国体制となった。EU内ではヒト・モノ・カネが自由に動き回り、大統領や議会を置くなど政治的な結束も強い。

だが、EUが発展するにつれ、イギリスなどでは不満を募らせていた。経済的、政治的な制度の縛りが強く、自国の利益と相反する場面が増えてきたからだ。通商交渉もEU単位で行われるため、イギリスとして守りたい産業を保護することができず、企業は厳しい規制を課せられ、EU内外からの移民が大量に流入。イギリス国民の雇用を奪っているとの不満も高まっていた。ジョンソン首相はそうした国内の不満の受け皿となり、世論を味方につけてEU離脱を実現させたのだ。

どうなる? 今後の国際秩序の動向に注視したい

今のところイギリスに追従する目立った動きはないが、イギリスが円滑な離脱を実現し、自由な制度の下で経済の発展を遂げれば、EUの結束にひびが入る可能性はある。また、アメリカや中国、ロシアに続いてイギリスも自国優先主義を掲げることで、今後の国際秩序に影響を及ぼす可能性もある。自国優先主義がはびこれば、軍事衝突や環境破壊の危険性も高まるだろう。日本としても今後の動きを注視していく必要性がある。