延期?ネット投票?記号式? withコロナ時代の選挙のあり方

2020.05.22

政治

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日本の選挙でおなじみの開票の様子 写真:ロイター/アフロ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出された4月以降、全国各地の選挙で投票率が史上最低を記録している。4月26日に行われた衆院静岡4区補選は34.10%で、前回2017年衆院選の53.72%を大きく下回った。withコロナ時代は接触を避けるべきとはいえ、選挙は国民、住民の意思を示す限られた機会。今後、こうした状況下でもより多くの声を反映させるためにはどうすればいいか、考える機会とすべきだ。

コロナ禍で国政選挙の投票率が著しく低下

新型コロナウイルスの感染が広がり始めた1月以降、全国各地で行われた地方選挙では低投票率が目立つ。50%を超えた選挙は少数で、中には30%を割り込んだ例も珍しくない。唯一の国政選挙である衆院静岡4区補選でも、3分の2近くの住民は投票に行かなかった計算だ。

補選の結果は自民党新人の深沢陽一氏が野党統一候補らを破って初当選したが、静岡4区の有権者数約32万3000人のうち、深沢氏の得票数は6万6000票ほど。絶対得票率は約20%にとどまり、当選の正当性に疑問符がついてもおかしくない。

選挙を通じて、政府の新型コロナウイルス対策をめぐる論戦が深まったとも言い難い。各陣営は感染拡大を懸念して屋内での集会や党幹部、閣僚らを集めた街頭演説会などを自粛。主にインターネットなどで政策を発信したが、多くの有権者に届いた様子はない。内閣支持率が低下するなかで与党候補が圧勝したということは、無党派層の多くは投票を棄権し、固定的な与党支持層の投票によって結果が決まったということだ。

感染拡大の収束が見通せないなか、選挙の延期を求める声も出ている。公明党は緊急事態宣言の対象地域で行われる選挙の延期を主張し、自民党に法案の成立を呼び掛けたが、自民党側が「不要不急には当たらない」と否定的で、実現には至っていない。

確かに感染拡大は避けるべきだが、民主主義の根幹である選挙をいつまでも先延ばしにすべきではない。ただし、感染拡大を避けながらも、より多くの有権者の声を拾うべく工夫することはできる。新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、今後、どのような天変地異がこの国を襲うとも限らない。この機会に、新たな時代の投票方法のあり方を検討すべきだ。

せっかく作ったマイナンバー制度を活用すべき

究極的な対策は「インターネット投票」だろう。誰でも一定期間内にスマホやパソコンから投票できるとなれば、わざわざ投票所に足を運ぶ必要がなく、感染拡大の危険はなくなる。インフラさえ整えれば投開票に割く人件費も大幅に削れるし、働き方が多様化するなか、日中になかなか投票に出向けない人でも投票することができる。海外在住や旅行中の人でも手軽に投票することができ、一石二鳥どころか、三鳥にも四鳥にもなり得る。

海外でもネット投票の例は少ないが、有名なのが北ヨーロッパのエストニアだ。IT先進国であるエストニアでは2005年から地方選、2007年から国政選挙でネット投票が採用された。投票の仕組みはまず、選挙の2週間前にメールが届く。そこに記載されたリンクをクリックすると投票サイトに移動。そこで投票用のソフトをダウンロードし、カードリーダーでIDカードを認証して、いざ投票、というわけだ。スマホで投票することも可能。初めてでも15分ほどで投票までたどり着くという。

日本ではマイナンバー制度の普及遅れがネックとなりそうだが、今回のコロナウイルス騒動はマイナンバーの必要性が見直される良い機会ともなった。納税などの行政手続きにとどまらず、ネット投票への発展も見据えてマイナンバー制度を育てていくべきだ。

ネット投票というと高齢者が対応できないとの批判が付きまとうが、エストニアでは外出が難しい高齢者の投票率が上がったという報告もある。なりすましなどの不正を不安視する声もあるが、現状だってポストから投票券が抜き取られ、不正に投票された例は後を絶たない。“マイナス”ばかりに目を向けるのではなく、まずはメリットを精査した上で、制度設計の際にマイナスをいかにつぶしていくか考えていくべきだろう。

電子投票も十分コスト削減&リスク低減に

ネット投票の実現には時間がかかるが、それまでの間にもできることはある。通常、選挙の際は投票用紙に候補者の氏名を書き込むが、一部自治体では候補者の上に丸を付ける「記号式」を採用している。これだけでも投票にかかる時間は大幅に削減できる。

ネット投票とまではいかないまでも、投票所でタブレットなどを使って投票する「電子投票」ならハードルは高くない。電子投票でも有権者は投票所に出向く必要はあるが、事務コストは格段に小さくなる。なんといっても集計は一瞬なので、選挙で見慣れた光景である体育館で票をえり分ける作業も必要なくなる。ウイルスの感染機会も減るということだ。

新型コロナウイルス騒動は図らずも友人、家族との過ごし方や働き方、買い物の仕方などあらゆる行動を見直すきっかけとなった。民主主義の根幹である選挙についてもこの機会に抜本的に見直す機会とすべきではないだろうか。