反旗を翻せ! 過激に変化する50年目の頭脳警察【末永賢監督インタビュー】

2020.07.14

社会

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写真:芹澤裕介(末永賢監督)、©2020 ZK PROJECT(劇中)

政治的で過激な歌詞で知られ、1970年代の学生運動に参加する若者から圧倒的な支持を得たロックバンド「頭脳警察」。“左翼のアイドル”に祭り上げられる一方で、日本語ロックの体現者として音楽シーンに大きな足跡を残した彼らは、2019年に結成50周年を迎えた。7月18日公開のドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50未来への鼓動』を製作した末永賢監督に、今の頭脳警察が現代に突きつけるメッセージを聞く。

 映画監督

末永 賢 すえなが けん

1965年生まれ、神奈川県逗子市出身。中央大学卒。バブル絶頂期に大学を卒業するも映画界に迷い込み鈴木清順、小沼勝らの助監督を経て監督活動を開始。監督作に『日本犯罪秘録・チ37号事件』『大阪ニセ夜間金庫事件』『長官狙撃』『河内山宗俊』など。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』の撮影中に書かれた「ヤルタ・クリミア探訪記PANTAと仲間たち」では共同著者に名を連ねる。日活大部屋俳優の実録『人生とんぼ返り』が2020年秋に公開予定。

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頭脳警察

1969年12月、PANTA(写真左)とTOSHI(右)で結成。ファーストアルバム『頭脳警察1』(1972年3月)は過激な歌詞が原因で発売中止、続く『頭脳警察セカンド』(1972年5月)は9曲収録のうち3曲が放送禁止、さらに1カ月で回収・発売禁止。伝説的ステージと6枚のアルバムを残して1975 年に解散。1990年に再結成するも翌年で活動休止。2007年、再々結成し、70歳になった今でも現在もバンド、ソロ共に活発な活動を続けており、2019年に結成50周年を迎えた。

頭脳警察50周年を追ったドキュメンタリー映画

学生運動の嵐が吹き荒れていた1969年12月、いずれ“左翼のアイドル”となるロックバンドが産声を上げた。その名も「頭脳警察」。反戦・反体制運動が激化するなか、“革命三部作”と呼ばれる「世界革命戦争宣言」「銃をとれ」「赤軍兵士の詩」などの楽曲を筆頭に、政治や体制を批判する過激な歌詞と自由なメロディーによって人気を博す。グループ・サウンズ全盛期の当時にあっては特異な存在だった。

1960年代に盛んだった反戦・反体制の社会運動は、1970年代に入ってもベトナム戦争の反戦運動や安保闘争、あさま山荘事件などが続き、前衛的な日本語ロックを展開する頭脳警察も成田闘争の地・三里塚でのイベントに参加するなど、体制に逆らい続けた。しかし、頭脳警察は熱狂的な支持を得るなか、1975年に突如解散する。それ以降、幾度かの再結成と活動休止を繰り返しながらも、その歩みは止めていなかった――。

そんな頭脳警察が、2019年に結成50周年を迎えた。映画製作会社ドッグシュガーは、頭脳警察オフィシャルの全面協力を得て、“永遠の叛逆児”である頭脳警察の今を追いかけるドキュメンタリー映画の製作を開始。末永賢監督が、頭脳警察の50年目をカメラで追い、過去の映像を紐解き、『zk/頭脳警察50未来への鼓動』を完成させた。

「『頭脳警察』の名前はもちろん聞いたことがありました。けれども、私はロックキッズではなかったので、今回の映画でPANTAさんとTOSHIさんを撮るまで詳しくは知りませんでした。過激なバンドというイメージがあり“怖い人たち”と勝手な印象さえ抱いていました。しかし、撮影を通じて頭脳警察の2人と接して、こんなに面白いバンドは他にいないと思いました。世の中にはいろんなバンドがありますが、ほかのバンドとはトガり方が違います」(末永監督、以下同)

末永賢監督

とらえきれない存在。変化し続けるPANTAとTOSHI

「君達にベトナムの仲間を好き勝手に殺す権利があるなら、我々にも君達を好き勝手に殺す権利がある」(頭脳警察1「イントロダクション〜世界革命戦争宣言」より)

PANTAが「世界革命戦争宣言」を叫ぶように読み上げたことをきっかけに“左翼のアイドル”として祭り上げられ、いつの間にか反体制の象徴となった頭脳警察だが、実はその50年の歴史の中には“反体制”以外の顔もたくさんある。

今回のドキュメンタリー映画には、歌手の加藤登紀子、ミュージシャンの大槻ケンヂ、脚本家の宮藤官九郎、漫画家浦沢直樹といった、あらゆる分野、世代の表現者も頭脳警察を語る。彼らの証言とともに頭脳警察の現在と過去を追うことで、日本におけるカウンターカルチャーの歴史が浮き彫りになっていく。

「ドキュメンタリー映画とは、リアルな姿を映しとっていくことで、物事や人物の本質に迫るものです。しかし、頭脳警察の2人は、常に変わっていく存在で、とらえきれない人たちでした。劇映画でもドキュメンタリー映画でも、監督が思っているような展開になったときは面白くないんです。観客が次のシーンを予想できるようではつまらないですよね。

思い描いていたものとは違うけど、想像しなかった画が撮れたときのほうが、スタッフも面白いし、観客にとっても面白いものができます。今回の映画では、常にそういう驚きの連続でした。撮っても撮っても追いつけない。そこが頭脳警察の何よりの魅力でした」

とらえきれないのはなぜか。50年の歴史の中で解散・休止と再活動を繰り返してきただけでなく、PANTAとTOSHIの2人がそれぞれ自分の表現を求めてソロ活動を続けてきたことも関係しているかもしれない。

「撮影を通して、2人のように70歳を越えれば、変わり続けること自体が過激なことだと実感しました。偉大なキャリアがあって、あとは悠々自適に暮らせるのに、また新しいことにチャレンジする。周囲を黙らせる圧倒的な歴史があるのに、偉ぶることなく若い人たちと一緒に食事をしながら作品を作る。

スタッフに対してもファンに対しても、非常にフランクで丁寧に接します。自分のイメージをあえて壊しているのかな?とさえ思いました」

末永賢監督

若手を抜擢した“頭脳警察50周年バンド”のカッコよさ

2019年、頭脳警察は、ギター・澤竜次(黒猫チェルシー)、ベース・宮田岳(黒猫チェルシー)、ドラム・樋口素之助、キーボード・おおくぼけい(アーバンギャルド)という若きミュージシャンと“頭脳警察50周年バンド”を結成。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』では、過去の貴重なライブ映像をはじめ、新たな血を入れ再始動した頭脳警察がNEWアルバム「乱破」を作り上げていく過程や、2019年4月7日に新宿花園神社特設テントで行われた頭脳警察50周年公演をリハーサルから追っている。

2列目左からギター・澤竜次(黒猫チェルシー)、ドラム・樋口素之助、ベース・宮田岳(黒猫チェルシー)、キーボード・おおくぼけい(アーバンギャルド)
新宿花園神社 水族館劇場天幕(テント)野外劇場にて行われた頭脳警察50周年バンドによる1stライブ

「今作で最も印象に残っているシーンは、PANTA&TOSHIと若手ミュージシャンとの場面。新しい頭脳警察には1990年生まれの若者を迎えています。ロック界のレジェンドがそんな若手を相手にすることも驚きですが、若いメンバーも物怖じすることなく、自分たちが持っている才能をいかんなく発揮していきます。それは、PANTAさんとTOSHIさんが“寛容”という言葉では言い表せない態度で接したからです。むしろ対等に勝負している感じがしました」

「乱破者」の楽曲製作シーン。PANTAのイメージに豊かなアイデアで返すおおくぼ

普通のバンドなら、50周年の記念イベントは昔を懐かしむような展開になりがち。しかし頭脳警察は懐メロ的なツアーをするのではなく、若い世代と組んで、新しいことにチャレンジする。「頭脳警察はやっぱり一味違う」と末永監督も唸る。

「若手ミュージシャンも言いたいことを言って、やりたいことをやっていました。昔の西部劇みたいに、若者と年輩者が互いの力を認め合って、世代を超えた友情というか、そんな関係が出来上がっていました。お互いに認め合っているからこそ、生まれる関係だと思います。最高にカッコいい関係だと思いませんか? 映画人としてシビれました」

上の世代に「ふざけるな!」と言っていい

『zk/頭脳警察50未来への鼓動』の撮影を通して、末永監督は「言いたいことは言おう! 言っていいんだぜ!」という頭脳警察から現在の若者へのメッセージを感じ取ったと語る。

「『悪目立ち』という言葉があるように、就職氷河期以降に社会人になった人は失敗を恐れることが多く、目立たないように生きている人が多い印象を個人的に持っています。一方で会社や社会は、人材を育成せず学生にまで即戦力を求めます。しかし、社会は大人だけでなく若者も含めて構成されるもの。上の世代の都合で形成されている今の社会に反旗を翻してもいいと思います。

親世代が戦争を経験している1960・70年代の学生は、歴史に対する責任を上の世代に求め、上の世代が決めたことに『ふざけるな!』と言った。頭脳警察を見ていると、そう言ってもいいんだと勇気をもらえる思いです」

末永賢監督

音楽で政治は語られるべきか

頭脳警察の思想は決して左翼的ではなく、社会運動に熱狂する大衆に応えていった結果、いつの間にか変節し“左翼のアイドル”になっていった面がある。結成から6年で解散に至ったのは、その大衆の支持が、やりたい音楽に対して次第に足かせとなっていったことも理由のひとつだったという。

頭脳警察が放つメッセージは確かに過激だが、しかしそれは時代が生んだもの。政治が時代の潮流であり、頭脳警察は純粋にそれに応えたにすぎない。では、現在の音楽シーンはどうか。

「初期の頭脳警察のころと違い、現在の日本のアーチストは政治的な発言をしません。スポンサーが物事を動かしているのが如実になりすぎているのではないでしょうか。資本主義社会だから当然だといえばそれまでですが、社会全体で、見えないものへの配慮が過度だと感じています。

誰も明快な答えを持っていないのに社会的な影響を忖度して、気を使い合った結果、くだらないものが生み出されています。頭脳警察とは、前時代のへの反発が生み出した異分子。ほかの人がやらないことをやるのは怖いものですが、勇気を持って動けば、続いてくれる人が現れると、彼らは行動を持って示してくれました。

映画の中でPANTAさんとTOSHIさんは、爆薬と起爆剤の関係だというシーンがあります。2人は時に入れ替わって、互いに支え合い、時に煽り合いながら、常に変化し続け前進してきたんだと思います」

どんな時代になっても常に“過激”に変化し続けてきた頭脳警察。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』に映される70歳のPANTAとTOSHIの姿から、この閉塞された社会で自由に行動する勇気を感じて取ってほしいものだ。

『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

劇場公開:2020年7月18日(土)より新宿K’s cinemaにて公開
出演:頭脳警察
監督・編集:末永賢
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦  配給:太秦

»公式サイト

[2020年/DCP/モノクロ・カラー/スタンダード・ビスタ/5.1ch/100分]
©2020 ZK PROJECT

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1970年代に“左翼のアイドル”として支持を得たロックバンド「頭脳警察」の50周年の活動を追うドキュメンタリー。頭脳警察と同じ時代を歩んできた者、その背中を追ってきた者、あらゆる世代の表現者の証言とともに、変わらぬ熱量を保ち続けるPANTA、TOSHIAらの現在と過去を追うことで、日本におけるカウンターカルチャーとサブカルチャーの歴史を浮き彫りにする。